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2026年5月の家計調査と天候から小売業が学べること【月刊販促設計 2026年5月号 検証編】

5月の消費支出は、実質でマイナス0.4%だった。

けれど中身を開くと、この下げのほとんどを作っていたのは自動車購入というたった一項目でした。寄与度でマイナス2.39ポイント。これがなければ、5月はむしろ活気のある月だったことになります。

こんにちは。ミタカ販促設計ラボ室長のサタケです。

3か月前、私は2026年5月の販促設計を全3回で書きました。今回はその予測と、実際に出てきた2026年5月の家計調査(2026年7月7日公表)を突き合わせます。当たったところと外したところを、両方そのまま書きます。

そして今回から、検証の材料に気象庁の「月の天候」を加えます。 これまでの検証は家計調査の数字だけを見ていました。しかし予測の側では気温を判断軸に据えている以上、その気温が実際どうだったかを確かめなければ、当たり外れの理由まで辿れません。数字と天候をセットで振り返ります。


このシリーズについて

家計調査や気象データをもとに3か月先の売場を設計する実践連載「月刊販促設計」。このシリーズは無料公開記事であり、使用データは誰でもアクセスできる公開情報のみです。数字を読む習慣を一緒に積み上げていければと思っています。

5月の消費と天候、ひと言でいうと

2026年5月の消費支出は1世帯あたり320,345円。名目プラス1.3%、物価変動を除いた実質ではマイナス0.4%で、6か月連続の実質減少でした。ただし前月比(季節調整値)は実質プラス3.7%と、4月からは明確に持ち直しています。

天候の側は、はっきりしていました。気象庁によれば、5月の気温は北・東・西日本でかなり高く、日本の月平均気温の基準値からの差はプラス1.37度。1898年の統計開始以降、5月として2位の高温です。

ひと言でまとめると、「記録的に暑い5月に、日常の買い物はしっかり動いた。それでも車という一点が全体の数字を沈めた月」です。

学び1:気温の判断軸は、実際に発動条件を満たしていた

第1回と第3回で、私はこう書きました。「5月第2週の平均気温が平年比プラス2度以上ならシナリオA(夏物の本格展開)」。

気象庁の記録では、5月中旬の旬平均気温の平年差は東日本でプラス2.3度、西日本でプラス2.1度。いずれも1946年の統計開始以降、5月中旬として1位の高温です。18日には東・西日本で猛暑日を観測した地点もありました。日照時間も、中旬の東日本太平洋側は平年比173%で、この時期として1位の多照です。

つまり、事前に決めておいた分岐点を、現実がはっきり超えていた。シナリオAを発動すべき月でした。

家計調査もそれを裏づけています。家具・家事用品は実質プラス23.0%(寄与度プラス0.96)で7か月連続の増加。うち冷暖房用器具はプラス60.8%、エアコン単体で寄与度プラス0.40。被服及び履物も3か月ぶりの実質増加(プラス4.0%)で、洋服はプラス11.1%でした。

予測を当てた、という話ではありません。判断の手順が機能した、という話です。5月15日の気温を見れば、誰でも機械的にシナリオAへ切り替えられた月でした。

学び2:「連休明けの内食回帰」は外した。前提の天候が違った

第2回で第1週の柱に据えたのは「日常回帰」でした。連休で外食した反動で、家に戻ってくるという読みです。

実際は逆でした。食料は4か月ぶりの実質増加(プラス2.4%、寄与度プラス0.71)で、その中心は外食のプラス8.9%(寄与度プラス0.49)。調理食品もプラス3.4%です。

天候を並べて、外した理由が分かりました。この予測は「2025年のゴールデンウイークは好天で外食が増えた」という前年の前提の上に立っていました。ところが2026年5月上旬は、前線を伴った低気圧がたびたび日本付近を通過し、天気は数日の周期で変わっています。東日本の旬降水量は平年より多い。前年のような「好天による外食シフト」がそもそも起きていなければ、その反動も起きません。

そして中旬以降は記録的な高温と多照でした。外食を押し上げたのは連休の反動ではなく、月の後半三分の二の陽気だったのではないかと考えています。

学ぶべきは商品選定ではなく、因果の立て方です。「反動が起きる」と決め打ちして売場を組むのではなく、「起きたらこう動く」という受け身の準備にとどめる。反動の前提条件、つまり前年の天候が今年も同じとは限らないからです。

学び3:また前年ベースに足をすくわれた

4月号の検証で「前年の急伸・急落は翌年のベースになる」と書きました。同じことを、5月にもやってしまいました。

交通・通信は実質マイナス15.8%、寄与度マイナス2.52。自動車購入はマイナス53.7%です。前年2025年5月は、自動車購入が消費支出をプラス2.97ポイント押し上げた月でした。高すぎるベースに対して、今年は落ちるべくして落ちています。

旅行も同じ構図です。第1回では「ゴールデンウイークの好天がレジャー需要を後押しした」と2025年の数字を紹介しました。しかし2026年5月の教養娯楽は7か月ぶりの実質減少(マイナス3.1%)で、国内パック旅行費が寄与度マイナス0.32でした。

ここが重要です。中旬は記録的な好天だったのに、旅行は落ちている。この減少は天候では説明できません。効いているのは前年の高いベースです。気象データを検証に加えたことで、「天候で説明できる動き」と「できない動き」を切り分けられるようになりました。この切り分けができないと、天候のせいにして反省が止まります。

学び4:母の日は動いた。ただし「贈与金」を見てはいけない

第2回で「5月唯一の確実な売上源」と書いた母の日について。ギフトは動いていました。

ただし確認には注意が要ります。家計調査には、買った品物で分ける品目分類と、何のために使ったかで分ける用途分類があります。2018年1月分から、他の世帯への贈答品やサービスは、品目分類では交際費に入れず、食料や被服といった各費目へ振り分けられています。品目分類の交際費に残っている「贈与金」は現金のやりとりで、カーネーションも菓子も入っていません。母の日を見るなら、用途分類の交際費を開く必要があります。

2026年5月の交際費(用途分類)は16,519円。名目プラス6.3%、実質プラス4.5%、消費支出への寄与度はプラス0.22でした。

中身は金額で見ると分かります。前年からの増加984円のうち、食料がプラス696円、贈与金がプラス380円。この二つでほぼ全部です。一方、教養娯楽はマイナス142円、他の物品サービスはマイナス88円と減っています。贈る中身は、食料と現金に寄っていました。

そして交際費の食料5,359円のうち、2,911円は外食です。人にごちそうした分が入っています。母の日の需要は、食品売場だけでなく外食にも流れている。

限界も書いておきます。交際費には母の日以外の贈答も冠婚葬祭も混ざっており、月次データから母の日だけを取り出すことはできません。言えるのは「5月のギフト支出は実質で増え、中身は食料と現金に寄っていた」までです。

今月の家計調査と天候が示すもの

記録的に暑い5月でしたが、電気代は実質マイナス7.7%(寄与度マイナス0.30)で、光熱・水道は3か月連続の減少でした。第1回で「暖房需要は終わり、本格的な冷房需要はまだ」と書いた端境期の読みは、猛暑日が出てもなお維持できたことになります。冷房の本格稼働は、やはり6月以降です。

収入も見ておきます。勤労者世帯の実収入は534,893円で実質プラス0.7%、可処分所得も実質プラス0.6%。手取りは細いながら増えていました。

5月の全体数字は、自動車と旅行という、多くの売場に関係のない項目で決まっていました。現場感覚で言えば、食料も家電も衣料も動いていた月です。増減率の見出しではなく寄与度の内訳を開き、自分の業態に関係する費目だけを前年と比べる。この作業を毎月やるかどうかで、判断の質が変わります。

今回いちばんの収穫は、当たり外れそのものではありません。気象データを並べたことで、「なぜ当たったか」「なぜ外したか」まで辿れるようになったことです。来月からも、この2つをセットで検証します。

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室長プロフィール
佐竹 昭治|株式会社サタケプランニングオフィス 代表取締役

小売・サービス業の現場で、生活者視点を軸にした販促戦略を提案。マーケティングプランナーとしての経験(20年以上)×データ分析×AI活用による「ハイブリッド販促設計」で、「伝わる販促」「来店してもらえる仕掛け」づくりをサポート中。

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【小売チェーン向け市場予測:外れても説明できる5層分析フレーム】


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サタケ|ミタカ販促設計ラボ 販促のヒント、伝わっていれば何よりです。 チップは今後の調査・記事制作の資金として大切に使わせていただきます。──室長・サタケ