11月の冬支度、月初の印象で決めていないか【月刊販促設計 2026年11月号 第2回】
このシリーズについて
「月刊販促設計」は、総務省統計局が毎月発表する家計調査データと気象庁の気象データを活用し、3か月先の販促計画を立案するための実践的な情報を提供するシリーズです。
こんにちは。ミタカ販促設計ラボ室長のサタケです。
第1回では2025年11月のデータを分析し、消費支出が実質2.9%増だった中身が「実需(気温連動)」と「準備消費(大型支出)」という性質の異なる2つの動きで構成されていたことを確認しました。特に被服+7.5%と家具・家事用品+10.6%(うち寝具類+64.0%)は、10月下旬から続く気温低下に反応した実需として読み取れる動きでした。
今回は「実需」の側に焦点を当て、気温と防寒需要の関係を掘り下げます。
11月号検証記事で確認した通り、シリーズの方針は「予測を当てる」ことから「判断の枠組を提供する」ことへ移しています。今回もその方針で、2026年11月の防寒商材・冬物衣料をどう扱うかの判断軸を提示します。
結論を先に言います。
11月は「暖冬か寒冬か」で全体を決めつけずに、地域差と月内変動を判断軸に据えることが有効です。前年(2025年11月)は月全体としては気温が平年並みでしたが、月の中で寒気の入る週と穏やかな週が交互に現れました。この「変動する11月」への対応枠組を持つことが今号の柱です。
2025年11月の気象を詳しく整理する
気温の地域差
2025年11月の月平均気温は、北・東・西日本で平年並みでした。沖縄・奄美は平年より高くなりました。「11月全体が暖かかった」でも「寒かった」でもない、平年並みの月として位置づけられます。
しかし平年並みの中身を旬別に見ると、動きがはっきり分かれます。
上旬:北日本を中心に大雨・大荒れ
上旬は日本の北を低気圧が通過することが多く、通過後には北日本を中心に冬型気圧配置となる時期がありました。11月1日には急速に発達した低気圧の影響で、北日本と東日本日本海側を中心に11月として記録的な大雨が降った所があり、北日本では大荒れの天気となりました。北日本太平洋側の旬降水量はかなり多く、北・東日本日本海側では多くなりました。
中旬:西高東低の冬型・北で寒気
中旬は数日の周期で低気圧が発達しながらサハリン付近を通過し、通過後には北日本を中心とした西高東低の冬型気圧配置となりました。冬型気圧配置が強まった11月18日には、青森県酸ケ湯で積雪差日合計が76cmとなり、1979年の統計開始以降11月として多い記録を更新しました。一方、東・西日本は移動性高気圧に覆われやすく、寒気の影響が小さい状態でした。
下旬:北で寒気残るも東西は穏やか
下旬は西日本を中心に移動性高気圧に覆われて晴れた所が多くなりました。旬間日照時間は北・東・西日本日本海側と西日本太平洋側でかなり多く、東日本日本海側では平年比145%で1961年の統計開始以降11月下旬として1位の多照でした。一方、日本の北では数日の周期で低気圧が通過し、北日本を中心に暖かい空気が流れ込んだ日があったため、旬平均気温は北日本でかなり高く、東・西日本で高い水準でした。
気象の構造をひとことで言えば
2025年11月は「北日本は寒気の影響を受ける週と穏やかな週が交互に現れ、東・西日本は移動性高気圧に覆われる日が多く、11月下旬にはむしろ晴天が続いた」という構造でした。地域差と月内変動が大きく、「11月は寒い」「11月は暖かい」という一括りの判断が実態と合わない月でした。
気象と消費の接続点
前年(2025年11月)の気象データと消費データを重ねると、いくつかの接続点が見えます。
被服+7.5%と気温低下の関係
被服は2か月連続の実質増加で、11月は+7.5%でした。10月下旬の急寒に続いて11月も上旬・中旬に寒気の影響があり、防寒物への実需が持続した可能性があります(推測です)。ただし全国平均の+7.5%という数字は、地域による強弱を平均化した結果です。北日本と東・西日本で気温の推移が異なった以上、地域によって被服の動きの強さも異なった可能性があります。
家具・家事用品+10.6%(寝具類+64.0%)と寒気の関係
寝具類の+64.0%という数字は、寒さの本格化に向けた寝具の買い替え・買い足しが起きた可能性を示唆しています。特に11月中旬の冬型気圧配置と北日本の記録的な積雪という気象条件は、防寒寝具への需要を後押しした可能性があります。ただしこの動きも地域差を含んだ全国平均の数字として読む必要があります。
光熱・水道▲1.2%と気温の関係
光熱・水道は3か月連続の実質減少でした。11月の気温が平年並みで、下旬には東・西日本で晴天が続き穏やかだったことが、光熱費の抑制につながった可能性があります。5月号検証記事で「反動の前提条件を確認する」と書きましたが、光熱費については前年(2024年11月)の高いベースも影響している可能性があります(推測です)。
天候で説明できる動きとできない動き
5月号検証記事で確認した「天候で説明できる動きとできない動きを切り分ける」という視点を当てはめると、被服・家具家事用品・光熱水道は気温との関連で読み解ける費目です。一方、自動車購入の+148.1%は天候では説明できない費目です。この切り分けができないと、11月の動きを一括りに「気温のせい」と判断してしまい、実際の因果を見落とします。
そのデータから2026年設計へのヒント
ここからは前年(2025年11月)のデータを参照材料として、2026年11月の防寒商材・冬物衣料の設計判断にどんなヒントが得られるかを整理します。前年と同じことが起きるという予測ではなく、判断の枠組として使える視点を示します。
ヒント① 「11月は寒い」「11月は暖かい」を全体で決めない
前年の11月は月全体としては気温平年並みでしたが、月内で寒気の入る週と穏やかな週が交互にありました。11月を月単位で「寒い年」「暖かい年」と決めつけて全期間の売場設計を固定すると、月内の変動に対応できません。2026年11月も月初に方針を固定するのではなく、週単位で気温の動向を確認しながら売場強度を調整する枠組を持つことが有効です。
ヒント② 地域差を前提に持つ
前年11月は北日本と東・西日本で気温の推移が異なりました。全国チェーンで全店統一の販促方針を組む場合、この地域差を吸収できる余地を残しておくことが有効です。北日本で防寒需要が動く時期と、東・西日本で動く時期には時間差が生じる可能性があります。地域別に判断できる余地を持った設計にしておくことが、前年データからの示唆です。
ヒント③ 「気温低下→実需」という因果は前年で確認できた
被服+7.5%と寝具類+64.0%は、気温低下という条件に反応した動きとして読み取れます。2026年11月に同じ気象条件が来るとは限りませんが、「気温が下がれば防寒物が動く」という因果メカニズムそのものは前年で確認できました。この判断軸を持っておけば、2026年11月に寒気が入った週に迷わず防寒売場を強化する動きが取れます。
ヒント④ 「11月下旬の晴天」を過小評価しない
前年11月下旬は東・西日本で晴天が続き、日照時間が11月下旬として1961年以降1位の多照でした。この時期は行楽・外出需要が動く条件が揃います。冬物への切り替えを進める一方で、11月末の穏やかな週末に対応する行楽・外出関連の売場も並行して持つ判断が有効な場合があります。防寒物への切り替えを急ぎすぎず、11月末までは「両面展開」の姿勢を持つことも選択肢です。
ヒント⑤ 光熱費の動きは前年ベース効果を確認する
前年11月の光熱・水道が3か月連続減少という動きでした。この動きが続けば2026年11月の比較ベースは低くなります。ただし光熱費は気温だけでなく、電力・ガス料金の改定という外部条件にも影響されます。前年ベース効果と外部条件の両方を確認しながら判断する必要がある費目です。
ヒント⑥ 11月の防寒商材は「実需の波」を掴む姿勢で設計する
前年データから読み取れる「実需の動きは気温低下という外部条件で起きる」という因果を踏まえると、2026年11月の防寒商材は「月初から一律に展開強度を上げる」より「気温が下がった週に強度を上げる」という設計が有効です。週次で気温を確認し、寒気の入る週に売場強度を高めて即応する判断軸を持つことが、前年データからの自然な示唆です。
業態別の判断軸
第1回でも触れた業態別の視点を、気温との関係で再整理します。
スーパーの場合
食料の中で気温に連動する項目(鍋物関連の食材、温かい飲料、冷凍食品など)と、気温に関係なく動く項目(日常の主食・調味料など)を分けて扱う判断軸が有効です。気温が下がった週に鍋物関連を前面に出し、穏やかな週は行楽・外出向けの食材を並行展開するという週次の切り替えが、11月の設計として機能すると考えられます。
ドラッグストアの場合
保健医療は6か月連続で実質増加している定着カテゴリーで、気温変動に関係なく安定しています。この安定性を軸に据えつつ、気温が急激に下がった週にはインフルエンザ関連・風邪薬・防寒小物などの緊急対応を強化する判断軸が有効です。
ホームセンター・家具家電系の場合
寝具類・冷暖房器具は気温低下に連動する費目です。寒気の入る週に売場強度を上げる即応体制を持っておくことが、前年の寝具類+64.0%という数字を踏まえた設計として機能します。ただし前年の高い実績はベース効果として2026年11月の比較を厳しくする点も踏まえた判断も必要です。
次回予告
第3回では「11月が終わったら、12月を何で設計するか」として、2025年9月→10月→11月という3か月の連続した流れを整理します。特に自動車購入の激しい振れ(+52%→▲25%→+148%)、被服の反転(▲7%→+6%→+7%)、保健医療の6か月連続増加という3種類の動きを対比させ、2026年11月・12月の設計へのヒントをまとめます。年末商戦(12月)に向けた仕込みの視点も加えます。最終回の最後で「2026年11月 販促設計カレンダー(PDF版)」を配布予定です。
プロフィール
室長について
佐竹 昭治|株式会社サタケプランニングオフィス 代表取締役
小売・サービス業の現場で、生活者視点を軸にした販促戦略を提案。マーケティングプランナーとしての経験(20年以上)×データ分析×AI活用による「ハイブリッド販促設計」で、「伝わる販促」「来店してもらえる仕掛け」づくりをサポート中。
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