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芳根京子と髙橋海人が描く15年の人生観。映画 #きみなけ 舞台挨拶と鑑賞レビュー

最初は「30」だった。次に「15」と表示される。時系列が何度も前後する作品。スクリーンに映し出された数字は、主人公たちの年齢を指していた。

高校1年生のとき、水村まなみと坂平陸はプールに落ちた衝撃から、翌朝目覚めると体が入れ替わっていた。いろいろ試すも元に戻らず、そのまま15年間のときを過ごす。年に一度、喫茶異邦人で会う約束をしながら。


「君の名は。」をはじめ、男女入れ替わりの物語はいくつもあるけれど、コメディでもなく、ミステリーやSFでもなく、それぞれの人生を15年間も生き続ける二人の《 人生観 》が描かれた稀有な作品だ。

第38回東京国際映画祭で映画を観て、坂下監督 × 原作者の舞台挨拶を聞き、君嶋彼方さんの原作小説を読んでから、公開初日の舞台挨拶付き上映で再び映画「君の顔では泣けない」を鑑賞してきました。


2021年から企画が始まり、2024年の夏にクラインクイン。映画の公開まで4年もの歳月をかけて作り上げた作品だ。映画「Arc アーク」の芳根京子さん、ドラマ「だが、情熱はある」の髙橋海人さんを観て、繊細な演技に長けたお二人を起用したいと思ったという坂下雄一郎監督。

恋愛の話にはしない。コメディにもしない。

原作小説の著者・君嶋彼方さんは「坂下監督とお話をしたとき、原作の意図を汲み取って真摯に作品と向き合ってくれる人だと感じて、監督に託そうと思いました。鍵を閉めるシーンの印象的なつながり、ラストシーンの差し込み方は映像だからできること。さすがでした」と語った。


体は坂平陸、中身は水村まなみ。そして水村まなみの体、中身は坂平陸だ。

高校時代を西川愛莉 × 武市尚士が演じ、30歳の現在までを芳根京子 × 髙橋海人が演じる。カッコイイ芳根京子とカワイイ髙橋海人が爆誕していた。

原作にあった10代の青春時代を大幅にカット。感情の機微や状況を語る台詞を減らし、台詞ひとつで感じ取らせて、観客に答えや疑問を投げかける。原作ファンが観ても納得がいく、素晴らしい構成だと思った。


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 高校時代の二人
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外見が坂下陸になった水村まなみ。もともと穏やかで優しく、わりと呑気な性格。ご両親の深い愛情を受けて育ったため、誰にでも優しく誰からも愛される人物だ。たまに不安と心細さで泣き言をいう、か弱い一面も持つ。

水村まなみになった坂下陸。たまに拗ねるが潔くてカッコイイ。まなみの家族の暮らしや優しさに衝撃を受け、自分の家族と比較する。先陣を切るようにまなみを勇気づけて、引っ張っていく役柄だ。

かわいい会話にかわいい笑顔。日記を交換しあって互いの状況を把握する。まずは間違えないように。家族や友達にバレないように。素直で健気な二人は陸になりきり、まなみになりきる。でも現実はそう簡単じゃなかった。

他人の友だちと遊び、他人の家族と住む心苦しさ。
他人が自分の友だちと遊び、自分の家族と暮らす羨ましさ。

「上手に出来なくて、ごめんね」

相手を気遣うあまりに申し訳ない気持ちが深く自分に突き刺さる。簡単には割り切れない痛くて優しい二人の葛藤がそこにあった。

©2025「君の顔では泣けない」製作委員会


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 大人になっていく二人
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他人の人生を生きること。そこに自分は存在していて、でも体は自分のものじゃない。だからいつ戻ってもいいように、相手の人生を上手に生きよう。

「もとに戻りたい」と願うまなみに「このままでもいいかな」と陸が言い出す。結婚、出産、子育て…… 陸はすでに結婚して旦那と子供がいたからだ。

そして、おぼろげに意思が揺らぎ出す。陸の父親が他界したのだ。

陸の家族からすれば、外見がまなみの陸は所詮、外部の人間、赤の他人だ。赤の他人が泣いてたら、おかしいだろ…!思い出を慈しみ悲しむことさえ許されない陸は苛立ちを隠せず「もとに戻りたい!」とやり場のない怒りをまなみにぶつける。いつも通りに穏やかな優しさでまなみが取り繕う。


他人の人生とはいえ、15年間を過ごして築いた今の人生を終わらせてまで、本当にもとに戻りたいのか。

「もとに戻りたい」と、「このままでもいいかな」二人は葛藤を繰り返す。


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 芳根京子と髙橋海人もまた
 リアルな葛藤と戦っていた

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かわいい。二人の会話がかわいすぎる。最初はそう思った。

他人の人生を生きること。家族や友達が入れ替わり、暮らしや環境、すべてが反転する。性別が変われば、身体的な変化もつきまとい、家庭内での役割も変わる。心が張り裂けそうな悲しみや痛みを背負い、孤独と戦いながらもたおやかでいて、相手を気遣う優しさが何だか温かい。

どうにもならない歯痒さを抱えながらも人生を振り返り、未来を見つめる二人。幸せでいてくらたらいいな、と思った。


公開初日の舞台挨拶。喫茶異邦人のシーンはまとめて撮影したため、この演技で合ってる? と前後する時系列に少し戸惑ったという芳根京子さん。だから自分が抱いた戸惑いは、陸とまなみの葛藤そのものだと感じたそうだ。

髙橋海人さんは「作品に挑んでいる期間は、ほんとに難しい役だと感じていて、大丈夫かな?と何度も思って。問題が解けなくて監督に引っ張ってもらった」と話していた。

映画の中で陸とまなみは、それぞれを演じている。

俳優が役柄に憑依して、主人公たちは互いの人格に憑依する。芳根京子と髙橋海人にとっては二重の演技、難しい役柄だ。仕草や表情、言葉尻や振る舞いまで自然に演じながら、ときに剥き出しの感情をあらわにするリアルな演技と会話が吸引力となり、作品への没入感が緩やかに訪れる。

本来、自分の人生は自分で決められるもの。

ふと自分の人生に照らし合わせて、考えてみたくなる心温まる作品だった。



メディアを入れずに実施した公開初日の舞台挨拶(1回目)では撮影の裏話、ラストシーンをどう捉えたか。など出演者から語られて、最後のプールに飛び込むシーンは撮影当日土砂降り。「水村で良かった!」と叫ぶ声が雷の音にかき消されて何度も撮影を中断したらしい。飛び込むシーンはワンテイク。だから「飛び込み方が少しダサかったなあ」と苦笑いする髙橋海人さん。

誰の目線で観るか。1回目で処理しきれず、2回目、3回目……と観るたびに感想が変わると出演者らが話す。一緒に登壇した林裕太さんは「ハイタッチするシーンが好きです。そこで自分の身体に触れる。(その行為を通して)友情を育み、互いに勇気を与えている気がした」と熱いメッセージを残した。

坂平陸の弟役、禄を演じた林裕太さんが映画の中で語る「雪だるまの思い出」は記憶に焼きつくほど、いい話だった。


そして原作者・君嶋彼方さんは、こう語る。

「もとに戻るのか、戻らないのか。僕はどちらでもいいと思ってるんです。どちらの結果になっても、あの二人なら関係性を築いていけるし、その結果を受け入れられると思ったからです」




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みやねえ @ 沖縄在住ライター・編集者 ご覧いただきありがとうございます。疲れたときに甘〜いオヤツ食べます♫

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