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レゴ®シリアスプレイ®と新規事業開発の6年間の実践で得たもの

はじめに〜不確実性の只中で、なお手を動かし続けるという選択

新規事業開発ほど、「不確実性」という言葉が似合う仕事はないと感じています。
顧客も、価値も、市場も、正解も、ほとんどが霧の中にあります。
それでも私たちは、「確からしさ」を求め、前に進もうとします。

私はこれまでのキャリアの多くの時間を、新規事業開発・人材開発・組織開発という三つを、意図的に切り分けず、「三位一体の開発」として取り組んできました。
そして、様々な手法を取り入れつつも、6年前にレゴ®シリアスプレイ®(以下、LSP)という技法を習得したファシリテーターになり、使い続け、疑い続けつつも、手放さずにここまできました。

この間、スタートアップや中小企業の組織づくりから、中学生・高校生が社会課題を自分事として捉えるためのワークショップまで、幅広い現場に携わってきました。特に力を入れてきたのは、ビジネスにおけるチームビルディングや戦略立案を含めたイノベーションやDXです。大企業での実践や支援の中での活用も多くなりました。これを推進する中で、答えのない状況に耐える力(ネガティブ・ケイパビリティ)を養ったり、自分自身やお互いを深く理解し合ったりする場づくりとしても、LSPの可能性を強く実感しています。

この記事は、LSPのやり方を解説するものではありません。
また、「LSPは素晴らしい」という単純な賛美でもありません。
むしろ、不確実性に正面から向き合い続けた結果として、それでもなお 「これは必要な技法だ」と言わざるを得なくなった、その内省の記録です。

レゴシリアスプレイにご興味がある方にはもちろん、新規事業開発、人材開発、組織開発にご興味のある方に、参考にして頂けると信じています。



■新規事業開発は、なぜ“左脳的”に収斂され続けるのか

新規事業開発の現場には、数多くのフレームワークが存在します。
リーンスタートアップ、仮説思考、KPI、PMF、ポートフォリオ・マネジメント。これらは確かに有効で、私自身も繰り返し使ってきました。

しかし同時に、ずっと違和感も抱えてきました。

それは、新規事業開発が
「思考の整理」や「構造の最適化」には異常に熱心なのに、
それを担う人間の内面や、関係性の揺らぎには、ほとんど無防備なまま進められている

という点です。

・なぜ、このテーマに取り組むのか
・なぜ、今、それをやろうとしているのか
・なぜ、チームとして噛み合わなくなるのか
・なぜ、不安や恐れが意思決定を歪めるのか

これらはすべて、新規事業の成否に直結する問いであるにもかかわらず、
「定性的すぎる」「扱いにくい」「後回しにされがち」な領域として、脇に置かれてきました。

しかし現実には、
内面が整っていないまま進む新規事業は、ほぼ例外なく、どこかで破綻します。
それは戦略の失敗ではなく、「人間の取り扱いを誤った結果」だと、私は感じています。


■ファシリテーターという視座が、人生を好転させた

正直に言えば、
ファシリテーターというアイデンティティを獲得してから、
大げさでなく、人生は好転したと感じています。

それまでの私は、どこか「プレーヤー」として、
成果や評価、承認を求めて前に出続ける衝動を抱えていました。
決してそれが悪いわけではありませんが、
どこかで常に消耗していたのも事実です。

ファシリテーターという立場は、
「自分が何を成し遂げるか」ではなく、
「どんな場をつくるか」へと、視座を根底から変えてくれました。

仮に2〜3時間のワークショップであっても、
月単位〜年単位にわたるプロジェクトであったとしても、
そこには多くの人の期待や願い、そして不安が持ち込まれます。
それらを一時的に預かり、場として成立させる責任。
この重さを引き受けるようになってから、
仕事の質も、人生の手触りも、明らかに変わりました。


■なぜワークショップの場だけは、あんなにも豊かなのか

やがて、ひとつの問いが頭から離れなくなりました。

なぜワークショップの場では、
人はあれほど人間的で、創造的で、豊かな関係性を築けるのに、
日常の仕事の場では、それが極端に難しくなるのだろうか。

この問いを突き詰めていく中で、
私は「ファシリテーションを常駐させる」という考えに行き着き、
冗談半分、本気半分で「ファシリ・フルネス」という言葉まで作りました。

特別な場だけで起きる共創を、
日常の仕事の中にどう宿らせるか。
これは、今も私の根源的な関心です。


■LSPは、正解へと導く技法ではありません

LSPに初めて触れたとき、正直に言えば、私は半信半疑でした。
ブロックを使う。手を動かす。比喩で語る。
ビジネスの最前線にある不確実性を、本当に扱えるのか、と。

しかし、現場で使い続けるうちに、はっきりしてきたことがあります。

LSPは、
「正解へと導く技法」ではありません。
「問いから逃げ続けてきた自分や関係性を、否応なく可視化し、自然と問いに向かう続けられる装置」

なのです。

ブロック作品は、その作者の視座を表しますが、それが全体の正解を表現しているわけではありません。
それでも尚、その人がまだ言葉にできていない前提・恐れ・願い・矛盾を、静かに、しかし確実に立ち上げてくれることに、新規事業開発そのものも可能性があることを実感します。

新規事業開発という不確実性の塊の中では、
この「言語化されていないもの」は、しばしば最大のリスクであり、一方で可能性の源泉でもあることを実感してきましす。
LSPは、そのリスクや可能性を無視せずに、向き合える形に変換する機能を持っているのです。


■6年間、希望と違和感の両方を抱えながら

私はこの6年間、LSPを使いながら、何度も希望を見てきました。
・言葉にならなかった想いが、場に現れた瞬間
・対立していたメンバー同士が、初めて互いの世界を理解した瞬間
・「もう無理だ」と思っていたプロジェクトが、再び動き出した瞬間

同時に、違和感や、自己へのクリティカルな問いも、何度も浮かび上がりました。

・これは、本当に事業につながっているのか?
・単なる“良い場”で終わっていないか?
・自分は、この技法に逃げていないか?
・介入しすぎていないか? あるいは、恐れて引きすぎていないか?

LSPは、万能ではありません。
そして、他の技法と同様に、ファシリテーター自身の在り方が場に反映されてしまう、厄介な技法でもあります。

それでも私は、LSPを手放さなかった。
なぜなら、この技法が、
不確実性の中で「人が人として在り続ける」ための回路を、最後まで残してくれる。そんな確信があったからです。


■ツアーガイドでは終わらない。人生のガイドにはなれないとしても

ワークショップには、必ず「設計」があります。
しかし、人生にも、新規事業にも、予定調和的な進行など存在しません。

私は、
「決まったプログラムを、うまく回すファシリテーター」
であることには、ほとんど関心がありません。

むしろ関心があるのは、
不確実性の前で、自分自身も揺れながら、なお場に立ち続けることです。

LSPは、人生の答えをくれない。
しかし、人生に対して「足場」をかけることはできます。
そして、その足場は、いつか外される前提で存在しています。

その「儚さ」ごと引き受けながら、
それでも今、この瞬間の「意味」を、手で掴みにいく。
私は、その営みに、6年間、立ち会ってきました。


■人生としての新規事業開発

新規事業開発も、人生と同じです。
地図は描けても、実際にどんな地形が現れるかは、歩いてみなければわかりません。
にもかかわらず、私たちはしばしば、「正しいルート」や「最短距離」を示そうとしてしまいます。

LSPは、その誘惑から一歩距離を取らせてくれます。
答えを教えるのではなく、問いの前に立ち続けること。
前に進む速度を揃えるのではなく、それぞれが今どこに立っているのかを、丁寧に確かめること。

新規事業開発において、本当に必要なのは、完璧な設計図ではありません。
不確実性の中で、自分たちは今、何を感じ、何を恐れ、何を信じようとしているのか。
その“足元”を、チームとして共有できているかどうかです。

LSPが新規事業開発に効果的なのは、
戦略やアイデアを生み出す前に、
「人が人として立ち続けられる状態」をつくるからです。

魔法の杖にはなれなくても、
人生のガイドにはなれなくても、
それでも、不確実性の只中で、共に立ち止まり、共に問い直し、共に次の一歩を踏み出す。

LSPは、そのための、静かで、しかし確かな足場なのだと、私は6年間の実践を通して感じています。


■「不確実性」に立ち向かっているアナタへ

もしあなたが、
LSPに「手っ取り早く満足度を得る手法」を求めているのなら、
この記事は、あまり役に立たないかもしれません。

しかし、もし、
新規事業開発という不確実性、
人間という不確実性、
関係性という不確実性に、
それでも向き合い続けようとしているのなら

どこかで、「宮木は、同じ場所に立っているかもしれない」と
感じてもらえたなら、それで十分です。

私はこれからも、
LSPを「場」のために使い、
同時に、LSPに問い返され続けながら、
この技法を、深め続けていきたいと考えています。

不確実でない挑戦なんてあり得ません。
この意味はつまり、挑戦者を増やすためには、不確実性を減らすのではなく、「不確実性を楽しみに続ける」人を増やすしか方法がないことに帰結します。

私はそんな人を、敬意を持って「変態」と呼びます。

もしあなたが、新規事業開発、人材開発、組織開発などの不確実性に挑む挑戦であるならば、共に立ち向かう不確実性の中で、
互いに支え合い、成長し、前へ進んでいきましょう☆

最後までお読み頂きありがとうございました☆

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