Esther Phillips - From A Whisper To A Scream (1972)
KUDUでの1作目でアトランティック時代にあったジャズやブルース色は大きく後退して一気にソウル、ファンク的なサウンドへと変貌しています。それはマーヴィンゲイ、アラントゥーサン、ギルスコットヘロンといった人物の曲を取り上げている点に顕著です。しかし演奏メンバーはアトランティック時代からの付き合いの者も多く案外大きく変化したという印象はありません。つまり変わらずよい作品ということです。本作のエピソードとしてアリサフランクリンとグラミー賞争いをしてアリサが受賞しますが、自分よりふさわしい人がいるとしてエスターにトロフィーを渡したというものがあります。似たようなスタイルのシンガーで歳上ながら充分な成功を収められなかったエスターと歳下ながら彼女を超える成功をしていたアリサ。2人の関係というか互いをどう意識しているかは一筋縄ではいかなかったのでと邪推したくなりますがエスターをリスペクトしていたことが伺えます。ちなみKUDUとは1作のみの契約でしたが本作の出来や居心地の良さから契約延長したそうです。
メンバー
エスターフィリップス:ボーカル
ゴードンエドワーズ:ベース
バーナードパーディ:ドラム
アイアート:パーカッション
コーネルデュプリー、エリックゲイル:ギター
リチャードティー:オルガン、エレピ
ジョンエッカート、ジョンガッチェル:トランペット、フリューゲルホルン
サムバーティス、ディックグリフィン:トロンボーン
ハンククロフォード:アルトサックス
フランクヴィカーリ:テナーサックス、アルトサックス
デイブリーブマン:バリトンサックス、フルート
ピーウィーエリス:アレンジ
ドンセベスキー:ストリングスアレンジ
ジャックウィルソン:リズムアレンジ
他
コルトレーン派の一人でマイルスやエルヴィンジョーンズと共演したデイブリーブマンの参加はちょっと異色です。デュプリー、ティー、ウィルソンは前作から引き続き参加。リズムセクションはスタッフ一派。
Home Is Where The Hatred IS
ギルスコットヘロンの曲で薬物中毒者を歌っています。ピーウィーのファンキーなホーンとドンセベスキーのミステリアスなストリングスが絡み合うジャズファンクとなっています。クリードテイラーの提案だったそうですが彼女は10代半ばで薬物中毒になりその後も依存と療養を繰り返したこともあり葛藤したそうです。
From a Whisper To Scream
アラントゥーサンのカバー。最初はソフトなストリングスとデイブリーブマンの息を交えた風のようなフルートから始まり糸を引くようなワウギターやジワジワとくすぶるグルーヴが効いていき最後はホーンセクションが入る。曲名通りの展開です
To Lay Down Beside You
ノスタルジックなジャズのアレンジですがリズムはファンキーでオルガンはソウルフルというこの時代らしい曲です、
That's All Right With Me
ストリングスとハープそしてコーラスのドリーミーなミディアム。そして最後はゴスペルっぽく盛り上がるニューソウル風の曲。ニューソウルはスタッフやその周辺人脈が作っていたわけですからスタッフのメンバーが多く参加している本作はニューソウルっぽくもなりましょう。
'til My Back Ain't Got No Bone
スタックスのアルベルとエディフロイドの曲。洗練されたエレピ、ディストーションをかけたギター、ゴスペル風のコーラスとこの時代らしさを詰め込んだグルーヴィなソウルです。ハンククロフォードのアルトソロも歌心溢れていていい感じです
Sweet Touch Of Love
これもアラントゥーサンの曲。ゴードンエドワーズのせっかちなベースラインにのってファンキーに飛ばします。サザンソウル風のパンチの効いたホーンセクションも最高です。
Baby I'm For Real
マーヴィンゲイのカバー。ゴージャスなストリングスをバックに温かみのある演奏です。とくにハンククロフォードのソロは特に温かいです
Your Love Is Doggone Good
ほとんどリズルセクションだけの曲でかなりスタッフな演奏です。リチャードティーのピアノ、エリックゲイルのギター、ゴードンエドワーズのベース。スタッフの世界です
Scarred Knees
ソウルフルなジャズバラード。リチャードティーの歌うようなタッチのピアノが印象的です
How Blue Can You Get
ここからはボーナストラック。ソウルジャズ的な演奏にのってブルージーなボーカルを披露しています。
Brother Brother
キャロルキングのカバー。ほんのりラテン調の軽やかなニューソウルな演奏でパーディも派手なブレイクを叩き込んでいます
Don't Run To Him
前の曲からうって変わってディープで重たいジャズ。ゲイルのブルージーなギターやティーの重厚なツインキーボードが印象的です
A Beautiful Frendship
Capricorn Womanに収録されていますが演奏は別物。ジワジワと温かみのあるグルーヴが印象的なバラードです
