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『にじ画廊』を訪ねて no.1

娘の個展『肖像はほどける』が、吉祥寺の『にじ画廊』で6日間、開催された。
3月12日(木)から3月17日(火)まで。
私が出向いたのは終わりがけの5日目と6日目の最終日だった。

東京駅から中央線に乗り換え、吉祥寺に着いたら午後4時を過ぎていた。
改札を出てキャリーケースを引きずりながら、辺りのショップを見渡す。
新幹線の車内で、私はずっと寝ていた。
寝起きの脳は、カフェインが欠乏している。
そのせいか、途中にあるコーヒーショップばかりが目についてしまう。
でも、荷物を引いて店に入るのも、飲み物の注文や支払いも、それを持ってまた歩くのも、その行為すべてが億劫に感じられた。
退院後、初めての遠出で、疲れたのだ、たぶん。
さして重くはないけれど、荷物を置いてからコーヒーを買いに行こう。
平日で画廊も静かだし、娘が買いに行ってくれるかもしれない、と都合よく考えていた。

『にじ画廊』はすぐにわかった。
建物の前のパネルスタンドに、娘のポスターが貼ってあった。
展示は2階で1階はショップだった。

予想通り、2階の画廊には娘しかいなかった。
コートを脱ぎ「早く、早く」と急かす彼女に、キャリーケースと一緒に預けた。
誰もいないのに、何をあわてているんだろう?
すぐにお客さんが来るからと、彼女は言う。
土日は各50名ほど、平日は1日20〜30名が平均の来場者らしい。
「そんなに来るの!」
「今は、たまたまお客さんが切れただけだよ」
私は画廊の中をぐるりと見渡した。
階段を上がったところから半分ほどのスペースに、この個展のために制作したオリジナル10作品が展示されている。
そのうちの4作品に赤丸シールが貼ってあった。
「4枚も売れたの!」
彼女は笑顔で頷き、購入してくれた人たちのことを話し始めた。
九州から見に来て、気に入った作品を購入してくれた方もいたそうだ。
初めての個展なので、目標は黒字、要は赤を出さないこと。
でも、すでに達成されている…。

娘の言った通り、すぐに誰かが階段を上がってきた。
1階がショップなので、その流れで立ち寄る人もいるのだろう。
私は奥のデスクにバッグをおいて、オリジナル作品を順に見ていった。

残り半分ほどのスペースは、映像作品(ストップモーション)に使った立体パーツや背景の原画が展示されている。
壁には、仕事で制作した映像がプロジェクターで映し出され、そばにヘッドフォンが置いてあった。
シンガー&ソングライター『ChouCho』さんのミュージックビデオがメインだった。
今回の展示は承諾を得ているそうで、本人も見に来てくれるという。

娘のいう通り、なかなかお客さんが途切れない。
1人帰ると、また1人、2人と階段を上がってくる。
彼女に目で合図して、私はコーヒーを買いに行った。
隣にカフェがあり、テイクアウトもできる。
彼女はお昼もまだらしいが、こんなに次々人が来ると、確かに食べる時間なんてない。
でも、見に来てくれるのは嬉しい限りだし、彼女にとってはランチよりも、足を運んでくれる人との時間が大切なのだと思う。
友人や仕事関係の人が来ると、その度に紹介してくれた。
でもその数は思いのほか多くて、私にはとても覚えられない…。

オープン時間は午後8時までで、明日の最終日は午後6時まで。
遅い時間に、娘の友人が来た。
彼女は、階段を上がって最初にある1枚の油彩に目を留めた。
娘と何か話しながら、他も見てまわり、また最初の1枚に戻る。
気に入っているのだろうか?
何度かその作品の前に立ち「これ、買おうかな」と、購入を決めた。

その後も終わる時間ぎりぎりまで人が来る。
最後に来たのは、娘の仕事仲間だった。
仕事終わりに駆けつけてくれたようだ。

ショップの人に声をかけられ、30分の時間オーバーであわててバックを掴みコートを着て外に出る。
何か食べないと、と道すがら店を物色しつつ無難なファミレスに入った。
時計は、もう午後9時に近づいていた。
空腹で疲れているはずなのに、娘はすこぶる元気だ。
来てくれた人たちのことを、楽しそうに話している。
これほど盛況で、オリジナルの半分が売れたんだ。
そりゃ元気だよね。

今回のオリジナル10作品の展示
ストップモーションの立体パーツと映像


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