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【マンガ原作】 『 画竜と点睛! 』 [ あらすじ・補足 ]/ 第1話

[あらすじ](297字)
一筆 画竜は、時話高校に通う1年生男子。画竜はマンガを描くことが大好きで、友人たちとマンガ愛好会を立ち上げるが、生徒会から正式な部活として認めてもらえず、解散の危機にある。特に1年生ながら生徒会 庶務として活躍する美術部の女子 点睛 浮世から、「本気でマンガを描く気のない人たちのお遊び」とバカにされてしまう。画竜は、マンガ部を認めてもらうべく、魂を込めたマンガを描き上げ、浮世に読んでもらおうと夏休みの生徒会室を訪ねる。すると突然、学校に結界が張られ、別の次元からの侵略者“戯画超獣”が現れる。浮世は“常世絵師”として“絵獣”を描き戦う。巻き込まれた画竜は戦いの中で、自らの画力を爆発させるのだった。

[補足]
〈 キャラクター 〉
◯ 一筆 画竜(ひとふで がりょう)(16)
…マンガを描くことが大好きな男子高校生。とにかく、マンガ・絵を描くことが大好きで、無我夢中で突き進んでしまう熱血タイプ。また、仲間を助けるために努力を惜しまない熱いハートを持っている。入学後、友人たちとマンガ愛好会を立ち上げるが、生徒会・庶務の浮世によって解散させられたことで、浮世が読んでおもしろい!と思えるマンガを描いたら、マンガ部を発足させる、という約束の元、マンガ執筆に取り組むが、うまくいかない。実は、画竜には、マンガのキャラクターを自在に描く画力はあっても、マンガについての知識は皆無だったのだ。そんな中、画竜は浮世たち“常世絵師”と“戯画超獣”の戦いに巻き込まれていくことになる。(実は、両親にとある秘密があるのだが…それは、また別のお話である)

◯ 点睛 浮世(てんせい うきよ)(16)
…“常世絵師”見習い・修行中の女子高生。普段は、生徒会・庶務として活動し、美術部に所属する生徒だが、“戯画超獣”が現れた際には命懸けで戦う。学業優秀・スポーツ万能・誠実真摯な人柄で時話高校を代表する秀麗な女子だが、絵の才能・絵心だけが無く、圧倒的に絵が下手くそである。それは、絵を描くことで戦う“常世絵師”にとっては致命的な弱点なのだが、画竜との出会い・画竜や仲間たちと共に戦う経験を通して、絵を描く楽しさ・喜びを思い出し、少しずつ画力を向上させ、自分にしか描けない絵を身につけていく。
(実は、両親にとある秘密があるのだが…それは、また別のお話である)

◯ 洛外 永斗(らくがい えいと)(16)
…時話高校の1年生男子で、生徒会 広報として活動し、爽やかなイケメンで女子から人気がある。浮世と同じく“常世絵師”で、機械系のイラストや緻密な設計に基づく描き込みが得意。浮世とは幼馴染で、両親も“常世絵師”の有力者であるため、幼い頃から英才教育を受けている。しかし、厳しい教えのもと、誉められた経験がないため、承認欲求に飢えている。そのため、戦いの際に仲間と協力することを良しとせず、自分一人だけで勝とうとする癖がある。だが、画竜や仲間たちとの戦いを通して、協力し合うチームプレーの精神を学んでいくことになる。
(実は、めちゃくちゃイケメン・ボイスなのだが…それは、また別のお話である)

《 用語解説 》

● “常世絵師”(とこよえし)
…異なる次元からの侵略者 “戯画超獣”から人々を守る存在。この世(現世)をあの世(常世)から守り、“戯画超獣”と戦うために、不思議な筆を使って絵を描くことで戦ったために、“常世絵師”と呼ばれた。
(その他、詳細な設定については後述…)

● “戯画超獣”(ぎがちょうじゅう)
…異なる次元からの侵略者。中には無害な者もいるが、ほとんどが凶暴で手に負えないヤバい奴ら。自身が生き延びるために、その世界で知能の高い生物を捕食しないといけないため、人間を襲う。古くから、この世界に現れて人間たちに危害を加えてきた歴史があるため、昔の人々は、それを妖怪・モンスター等と呼称し、それを神話や信仰に基づく物語などを用いて、霊的な存在として後世に伝えてきた。
退治するためには、“常世絵師”が不思議な筆を使い“絵獣”を描かなければならない。低級の“戯画超獣”であれば、単なる線のような攻撃だけでも退治することが可能である。しかし、高レベルの“戯画超獣”には、それに見合った“常世絵師”の画力が必要とされる。
(その他、詳細な設定については後述…)

● “絵獣”(かいじゅう)
…“常世絵師”によって生み出される存在。“戯画超獣”と戦う際に、同レベルか、それ以上の画力で描かれていないと“戯画超獣”を退治することができない。(画力=戦闘力のようなイメージ)さらに、“絵獣”を描く際に、相手の“戯画超獣”が纏うオーラ・正体(“戯画超獣”のモチーフ・元ネタ)を見極めずに自由に描いてしまうと、すぐに消滅してしまうため、“絵獣”を生み出すためには画力だけでなく、知識も必要とされる。また、ギャグ漫画の“絵獣”(キャラクター)を描いた場合、一定時間はなんでもありの無敵・無双モードになるが、その代わり、相手の“戯画超獣”もノーダメージとなるため、“絵獣”を生み出す際の順番・組み合わせ・描くスピード・画力…等の戦略・戦術面での戦いが、“常世絵師”には求められる。
(その他、詳細な設定については後述…)

● “子廻結界”(こまわりけっかい)
…“戯画超獣”が現れた際に、約半径2kmぐらいの結界に閉じ込める仕組み。その結界には、一般人が気づかない・入れないような仕掛けになっていて、“常世絵師”が“戯画超獣”を退治するまでの間、一般人やこの世(現世)を保護する役割がある。また、“子廻結界”の効力は無限ではなく、超獣の出現から24時間以内であれば、自動的に結界が持続するが、それを超えた時間で結界の発動を維持するためには、必ず、結界内に“常世絵師”が存在していなければならない。さらに、“常世絵師”なら誰でも、“子廻結界”に入ることができるが、逆に、出るためには“戯画超獣”を退治しなければならない。(“戯画超獣”を退治しなければ、“子廻結界”から出ることはできない)つまり、“常世絵師”には、自分の命と引き換えにしてでも“戯画超獣”を退治する、この世(現世)の平和を守るという使命があるのである。(その他、詳細な設定については後述…)

● “逢魔時”(おうまがどき)
…“戯画超獣”が現れた際に、その一帯が夕暮れ時のような空模様になる現象。“常世絵師”は、この空模様に気づいた瞬間、現場に駆けつけ、戦闘・退治モードに入る。(一般人は“逢魔時”に気がつかない)また、“戯画超獣”が存在しているうちは、“逢魔時”の空が続くため、逆に“逢魔時”が解除された時 = この空模様が消えた時が、“戯画超獣”退治・完了!の証となる。
(その他、詳細な設定については後述…)




[第1話](9915字)

◯ 時話高校・マンガ愛好会の部室

誰かが描いたマンガのキャラクターが並んでいる。上手いとは云えない下手なイラストがしばらく続いていく。

友人A「ゴムゴムの〜ピストル!」

友人B「螺旋丸!」

友人C「卍解!」

画竜「…鼻毛真拳奥義 鼻毛激烈拳!!」

  そこに一人だけ段違いの画力で描かれている、画竜のイラスト。

友人A「やっぱり、画竜の絵は上手いわー」

友人B「敵わねぇな」

友人C「画竜氏、ハジけてますねー」

画竜「えへへへ…」

  そこは高校のマンガ愛好会の一室。一筆 画竜(16)が友人たちに囲まれてマンガを描いている。

友人A「画竜、次はアレ描いて、オシリスの天空竜」

友人B「頭がパカって開いて召喚するやつね」

友人C「悲しい事に俺らの画力が追いついてねーーー!!! 」

  楽しそうに絵を描いていく画竜。

画竜M(モノローグ)「俺の名前は、一筆 画竜。マンガを描くことが大好きで、放課後はいつも、マンガ愛好会に集まって、友だちと絵を描いて過ごしていた。きっと卒業まで、この楽しい時間が続くんだ…そう思っていた………」


◯ 時話高校・マンガ愛好会の部室(次の日)

呆然とする画竜。

画竜「……」

 なんと、部室は閉鎖されて、中は空っぽになっていた。


◯ 時話高校・廊下

画竜「解散!? 」

  廊下に集まる友人A・B・Cと画竜。

友人A「今朝、部室に行ってみたら鍵がかかってさ。俺らのマンガ道具も全部、没収されてたんだ」

画竜「…なんで、マンガ愛好会が解散なんだよ! 」

友人B「生徒会だよ。あいつら、部活の存続決定権を持ってるだろ? 去年まで何も言われなくて平和だったのに、今年に入ってから急に厳しくなったんだ…」

画竜「…誰が、誰がそうしたんだ? 」

友人A「俺たちと同じ1年で生徒会にいる、点睛って女子らしいんだけど…」

画竜「テンセイ…? 」

友人C「うぅ…僕たちが立ち上げた愛好会なのに……」

画竜「……(決意の表情)」


◯ 時話高校・生徒会室

  画竜、生徒会室を訪ねる。勢いよくドアを開けると、そこには静かに読書する少女(16)が、ひとり座っていた。

画竜「あの…生徒会に用があって来ました! 」

少女「……」

画竜「あの…生徒会長は、いますか? 」

少女「……」

画竜「あの…生徒会長じゃなくても良いんですけど」

少女「……」

画竜「…副会長でも書記でも広報でも良いんですけど…あと、庶務でも誰でも良いんですけど…」

少女「……」

画竜「あのぅ……」

  少女、パタンと本を閉じて、

少女「あなた、名前は? 」

画竜「え? 」

少女「用があるなら、まず名前を言うのがマナーでしょ? 」

画竜「えっと…自分、マンガ愛好会・初代名誉会長の一筆 画竜(ひとふで がりょう)です! 今日は、僕らの活動を認めてもらうために…」

少女「マンガ愛好会? 」

画竜「あ、もしかして知ってる? 」

少女「えぇ。だって私が解散させたんだから…」

画竜「!? 」

少女「生徒会1年 庶務の点睛 浮世(てんせい うきよ)です」

画竜「…テンセイ…お前が、俺たちのマンガ愛好会を…」

浮世(少女・改め)「で、どんなご用件で? 」

画竜「…なんでだ? なんで、マンガ愛好会を潰したんだ? 」

浮世「…それは私が、マンガを愛してるから」

画竜「…? 」

  浮世、マンガのイラストが描かれた紙を4枚ほど取り出す。それは冒頭で画竜と友人たちが描いた「ゴムゴムのピストル」「螺旋丸」「卍解」のイラストだった。

画竜「どこで、それを! 」

浮世「酷い絵」

画竜「……」

浮世「人間の骨格や関節の可動域を1ミリも考えない自分勝手な構図はもとより、オリジナル特有の作画の魅力や、それぞれの線が持つ色気を殺しにかかる無個性で凡庸な筆遣い。自分たちの好きなキャラクターを模倣するのは別に良いけど、これじゃ小学生のお遊び…なーんて言ったら、小学生に失礼か」

画竜「……」

  浮世、「鼻毛真拳」のイラストを手に取って、

浮世「まぁ、この「鼻毛真拳」だけは多少マシだけど、多少マシってだけ。この絵は多分…それなりに絵を描いてきた人間で、少しマネをするセンスに優れている、でも、それだけ。オリジナリティーは皆無。所詮、仲間内でキャッキャやって悦に入ってる、そんな人間の描いた絵ね」

画竜「……悪いかよ! 好きなマンガを好きなように描いて、悪いかよ! そのためのマンガ愛好会だぞ!! 」

浮世「じゃあ、その好きなマンガ、どうするの? 」

画竜「え? 」

浮世「何かコンクールに出すの? どこかの出版社に持ち込むの? 」

画竜「…いや、それは…」

浮世「まさか、好きなようにキャラクターを描いて終わりってことないよね? …え、もしかして、そもそもストーリーすら考えてないとか? 好きな絵を描くことに夢中で、ネームすら作ってないのに、マンガ愛好会を名乗ってた、なんて言わないよね? 」

画竜「……ぐぬぬ」

浮世「…図星? あのね、この時話高校には、運動部だけでなく、多くの文化部がある。そして、どの部活も、みんな本気なの。大会で優勝を目指したり、コンクルールで入賞するのを目標にしたり、人によってはプロを目指している生徒もいる。そういう私も美術部で絵を描いてるから、文化部ならではの楽しさも厳しさも身をもって知っているつもり。そんな歴史と伝統ある時話高校には、遊び半分で楽しいだけのぬるい部活や愛好会は不要なの。そんな、お遊戯会は即刻、廃止なの! 」

画竜「……ぐぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬぬ!!」

浮世「だから言ったでしょ。私がマンガ愛好会を潰したのは、私がマンガを愛しているから。もし、復活させたいなら、私よりもマンガを愛して、何か1作品、描き上げてみなさい!! 」

  浮世、そう言うと、再び読書を始める。

画竜「……」

  画竜、悔しいが何も云えず、生徒会室を出ていき扉を閉める―――かと、思いきや扉が開いて、浮世に宣誓する。

画竜「点睛! 俺はこの夏休み、マンガを描く! 1話完結のストーリー漫画だ! そして必ず、お前に「おもしろい」って言わせて、お前よりも俺の方がマンガを愛してるって証明してみせる! だから、その時は俺たちのマンガ愛好会を正式な部活として認めろよ! 」

 浮世、顔を上げて、

浮世「…いいわ。あなたのマンガが、おもしろかったら認めてあげる」

画竜「…約束だぞ!! 」

  画竜、勢いよく部屋を出ると、そのまま走り出す。


◯ 夏休み・点描

  自分の部屋に籠って、ひたすらマンガを描く画竜。

画竜M「こうして、マンガに捧げる夏休みが始まった。俺は点睛を見返すべく、寝る間も惜しんで、ひたすら描いた。描いて、描いて、描きまくった。そして、夏休み最後の日―――」

画竜「………描けねぇーーー!!!」

  描き掛けの原稿用紙やキャラクターのラフスケッチが散乱している部屋で叫ぶ画竜。

画竜「…マンガって、どうやって描けば良いんだ? 絵は描けるのに、ストーリーが全然、思い浮かばない…くっそ……こうなったら、点睛に土下座でもして………」

  画竜、妄想を膨らませるが、点睛にうぷぷぷとバカにされ散々ディスられる未来を想像して首を振る。

画竜M「いや、とりあえず、描くんだ。不出来でも、納得できなくても、何かひとつ、約束の日までに作品として描き上げるんだ…」

  再び、原稿用紙に向かって、マンガを描き始める画竜の姿。


◯ 時話高校・正門前(夕)

  なんとか描き上げたマンガの原稿用紙を抱えて、高校の前に立つ画竜。なぜか今日は高校が、いつもより大きく感じる。

画竜「……? 」

  画竜、正門を潜るとき、何か光の線のようなものが見えた気がして、振り返るが、そのまま進んでいく。


◯ 時話高校・生徒会室(夕)

  静かにドアをノックする画竜、返事がないので、そろそろとドアを開ける。

画竜「…どうもぉ…マンガ愛好会・初代名誉会長の一筆 画竜ですぅ…あれ、誰もいない? 」

  画竜、生徒会室が無人であることに気づく。

画竜「…? 」

  しかし、浮世の机に読みかけの本が置かれてあり、グラスが汗をかいていること、そして、カバンが開いたまま置きっぱなしになっていることに気づく。


◯ 時話高校・点描(夕)

  高校の各所を歩き回る画竜。しかし、誰の姿も見えない。

画竜M「…今日は夏休み最終日。確かに、いつもより人は少ないはずだけど、妙だ。誰にも会わない、なんてことあるか? そして、点睛はどこだ? あの本は、この前、俺が来た時に読んでいた本だ。そこに濡れたグラス…ってことは、さっきまで点睛が生徒会室にいたってこと。それに、あのカバン。開いたまま置かれている、ってことは、何か急に部屋を出ることになったってことか? …どこだ、どこなんだ点睛? 」

  浮世を探していた画竜、廊下の角で何かが蠢くのを見つける。

画竜「…? 」

  画竜、追いかけるが、その謎の生物は急いで逃げていく。

画竜「おい、待て! 」


◯ 時話高校・渡り廊下(夕)

  画竜、渡り廊下に謎の生物を追い詰める。

画竜「そっちは、行き止まりだよ! …!?」

  画竜、そこで見つけたのは、瓢箪を逆さまにしたような形で、かわいいブタのような謎の生物(ヒョウタンツギ)だった。

画竜「…なんだ、こいつ? 」

  画竜、恐る恐る近づいてみると、ヒョウタンツギが可愛らしく鳴き声をあげる。

画竜「なんかよくわからないけど、かわいいじゃん」

  画竜が撫でようと手を伸ばした瞬間、ヒョウタンツギから凶悪な口が現れ、画竜の腕を食いちぎろうとする。その刹那、どこからともなくGペンで描かれた線が矢のように現れ、ヒョウタンツギを突き刺す。

画竜「…あ………っあぶねー!! 」

浮世「大丈夫? 」

  画竜、振り返ると、そこには巫女のような格好で不思議な筆を持つ浮世の姿があった。

画竜「…点睛? 」

浮世「…あなた、ここで何してるの? 」

画竜「何って、これ、マンガ描いてきたんだよ! お前に読んでもらうために! 」

浮世「あ、そういえば、そんな約束したっけ」

画竜「忘れんなよ!! 」

  すると、そこに再びヒョウタンツギが現れる。しかも、今度は大勢いる。

浮世「…次から次へと」

画竜「あれ、一体、何なんだ? 」

浮世「話はあと。私の後ろに下がってて」

  浮世、画竜の前に出ると不思議な筆を使って、Gペンで描かれた矢を次々と放っていく。その線に突き飛ばされ、次々と消滅していくヒョウタンツギ。

画竜「…すげぇ」

  その浮世の姿に思わず見惚れてしまう、画竜。

画竜「……」

  やがて、全てのヒョウタンツギを退治し終える浮世。

浮世「…これで、逢魔時が終わる……え、なんで? まだ終わらないの? 」

画竜「??? 」

浮世「…ってことは、まだ戯画超獣がいる、ってことか」

画竜「????? 」

浮世「ね、手伝って」


◯ 時話高校・校舎裏(夕)

  先程のヒョウタンツギの残党を探している浮世と画竜。しかし、主に画竜が草むらを捜索し、浮世は休みながら話している。

浮世「…この世界には、別の世界と繋がっている不思議な出入り口があるの。例えば、私たちのいる世界とは別の次元・二次元や三次元、四次元の世界もある。だけど、私たちはその別の世界を行き来することはできない。でも、稀に次元の違う世界を行き来できる特殊な生き物がいて、そいつらが不思議な出入り口を使って、私たちのいる、この世界にやって来るの。そいつらが “戯画超獣”(ぎがちょうじゅう)。中には無害な奴もいるんだけど、ほとんどが凶暴で手に負えないヤバい奴らばっかり。あいつら、その世界で知能の高い生物を捕食しないと生きていけないから、すぐに人間を襲うの」

画竜「そんな危険なやつを俺に探させるなよ! 」

浮世「(無視して)…古くから“戯画超獣”は、この世に現れて人間たちに危害を加えてきた。昔の人は、それを妖怪とかモンスターとか、神話や信仰、物語によって霊的な存在として後世に伝えてきたの。そして、いつの頃からか“戯画超獣”と戦い、奴らを退治する人々が現れた。彼らは、秘伝の方法で生み出された絵筆を使って、絵を描くようにして、凶悪な“戯画超獣”たちと戦ってきた。いつしか彼らは、“常世絵師”(とこよえし)と呼ばれるようになる。この世をあの世から、つまり現世を常世から、絵を描くことによって守る絵師、“常世絵師”。…その末裔で“常世絵師”・見習い修行中なのが、私ってわけ」

画竜「ふーん、その巫女さんみたいなコスプレも、そのナントカ絵師さんの格好ってわけね」

浮世「“常世絵師”! この格好は超獣退治の時の正装なの。…てか、ふつう一般人には“戯画超獣“の姿は見えないし、そもそも“子廻結界”の中に入れないハズなのに、なんであんたは、この空間に入ってきてんのよ! 」

画竜「え、何、なんて? 」

浮世「“子廻結界” (こまわりけっかい)! この街には昔から“戯画超獣”がよく現れていたから、どこかに別の世界と繋がる出入り口があるって言われていて、それで“戯画超獣”が現れた瞬間に、だいたい半径2kmぐらいの結界に閉じ込める仕組みがあるの、その結界には一般人が入れないような仕掛けになっていて、それが“子廻結界”! そして、“戯画超獣”を“子廻結界”の中に閉じ込めている間、ずーっと夕暮れ時みたいな空になるでしょ? それが、“逢魔時”(おうがまどき)。だから、この空が消えた瞬間が、超獣退治・完了!の証ってわけ」

画竜「だったらさ、別に退治しなくても、その、ナントカ結界の中にずーっと閉じ込めておけばいいじゃん」

浮世「“子廻結界”の効力は無限じゃないの。もし、超獣の出現から1日以上効力を延ばすなら、必ず、結界内に“常世絵師”が存在していなければならない」

画竜「…もし、その超獣を退治できなかったら、どうなるんだ? 」

浮世「超獣を退治するまで、この結界からは出られないよ」

画竜「え? 」

浮世「“子廻結界”に入るのは絵師なら誰でもできるけど、出るのは超獣を退治した時だけなの。だから“常世絵師”は自分の命と引き換えにしてでも“戯画超獣”を退治する使命があるの」

画竜「…なんで、そこまでして…」

浮世「もし、“戯画超獣”が結界を超えて暴れ出したら、とんでも無いことになるから。見るも無惨な酷い世界になるの。…ねぇ、いい加減、あのヒョウタンみたいなやつ見つけてくれる? これ以上、あなたと一緒にいるなんて、ごめんなんだけど…」

画竜「俺だって好きで、こうなったワケじゃ…」

  すると、草むらから勢いよくヒョウタンツギが飛び出してくる。

画竜・浮世「あ!! 」

  画竜、思わずヒョウタンツギを捕まえる。が、再びヒョウタンツギの凶暴な口が開く。

画竜「…やべ、忘れてた」

浮世「動かないで! 」

  その言葉通り、フリーズする画竜。その頭上を浮世が描いたGペンの矢が飛んできて、ヒョウタンツギが破裂する。

浮世「…よかった。これで帰れる」

画竜「…良くねぇよ! かすったぞ、俺の頭! ジュって音したぞ、ジュって!! 」

浮世「……うそ、なんで? 」

画竜「…なんだよ」

浮世「“逢魔時”が終わってない…ってことは、まだ“戯画超獣”がいるってこと? 」

画竜「えー、また探すのかよー」

  浮世、持っていた筆が激しく振動していることに気づく。

浮世「…ちがう。これは、もっと巨大でヤバいやつが……」

  すると突然、地面が持ち上がり、下からスライムのような不定形宇宙生物(ムーピー)が現れる。

画竜「…!? なんだ、こいつは!? 」

浮世「…わからない! でも、やることは、ひとつ!! 」

  浮世、不思議な筆をとり、Gペンで描かれた矢を放つ…が、ムーピーはその矢を吸収してしまう。

浮世「…? 矢が効かない…? 」

  浮世、次々とGペンの線を引いていく。剣のような線で斬撃を与えたり、鞭のような線で攻撃を与えるが、どれもムーピーには効果がない。

浮世「……(焦る)……! 」

  今度はムーピーが触手を伸ばし、それで浮世を攻撃する。触手で弾き飛ばされる浮世。

画竜「…! 点睛、大丈夫か? 」

  画竜、倒れた浮世のもとに駆け寄る。

浮世「…あなたは、逃げて」

画竜「え? 」

浮世「あいつは、私の手に負えないかも…」

画竜「……」

  画竜、浮世を抱きかかえて持ち上げる。

浮世「え? 」

画竜「だとしたら、やることは、ひとつ! …逃げろー!! 」

  画竜、浮世を抱えたまま走り出す。後ろからは触手を伸ばして暴れ回るムーピーが迫る。

浮世「……」


◯ 時話高校・屋上(夕)

  屋上まで浮世を抱えて走ってきた画竜。

画竜「……(ゼェゼェ)……さすがに疲れた。……お前、重くね? 」

浮世「……(画竜を殴る!)」

画竜「イテ! …てか、どうするんだよ? あのスライムみたいなやつ倒さないと、この結界から出られないだろ? 」

浮世「…ひとつだけ、方法はある。…でも…」

画竜「なんだよ? 」

浮世「……“絵獣”(かいじゅう)を生み出すの」

画竜「かいじゅう? 」

浮世「絵の獣と書いて、“絵獣”。この“逢魔時”が発動している時、この筆によって生み出したキャラクターを結界の中で操ることができる。その“絵獣”で、“戯画超獣”を退治する」

画竜「それなら初めから描けばいいじゃん、その“絵獣”ってやつ」

浮世「“絵獣”を描くには時間がかかるでしょ。それに何でも描いていいワケじゃない。相手の“戯画超獣”の正体を見極めて、それに合った“絵獣”を描かないと意味がないの。そして何より大切なのは…“絵獣”を生み出しても、画力が無ければ勝てない…ってこと」

画竜「…画力? 」

  すると、屋上の扉をドーンドーンと叩く音がする。

画竜「来た!? 」

  扉を打ち破り、ムーピーが現れる。その姿は巨大に膨らみ、触手を広げ、凶悪なモンスターそのものである。

画竜「点睛、描いてくれよ、“絵獣”を! 」

浮世「…やってみる。まず、こいつの正体を見極めないと…時間を稼いで」

画竜「わかった! 」

  画竜、ムーピーの気を惹きつけようと走り回る。

浮世M「このスライムみたいな“戯画超獣”、昔なにかで見た気がする…待って、最初に現れた、あのヒョウタンみたいな、あいつ……そうか、あいつの正体は……」

  その時、画竜がムーピーの触手に捕まり、足を取られ逆さに吊るされる。

画竜「…! …点睛!! 」

浮世「…ヒョウタンツギ! …ってことは、こいつは手塚作品の何かのキャラクター! それなら、私はレオを描く、ジャングル大帝レオ!! 」

  浮世、決意して筆をとり、「ジャングル大帝レオ」を描く。その様子を見つめる、画竜。

画竜「…点睛、お前……」

浮世「…いけ、「ジャングル大帝レオ」! 」

  しかし、浮世が描き上げたのは、ヘンテコなネコのイラストだった。

画竜M「…めっちゃ、絵下手だったのかぁ〜〜〜………」

  浮世の描いたレオが「きゃうるる〜ん」と鳴いている。

画竜「お前、これなんだ? おにぎりか? 異様な形のおにぎりか!? 」

浮世「うっさい! だから、“絵獣”描きたくなかったんだよ!! 」

画竜「…いい、もうおにぎりでも、なんでもいいから、助けてくれ! 」

  浮世の描いたレオが「きゃうるる〜ん」とムーピーに挑みにかかるが、触手で弾かれて一瞬で消し飛ぶ。

画竜M「…ですよね〜〜〜………」

  しかし、その瞬間、画竜を掴んでいた触手が緩み、脱出する画竜。次々と迫るムーピーの触手を躱していく画竜。

画竜M「…でも、どうする? このままじゃ、あいつに二人ともやられる……」

浮世「きゃあああーーー! 」

画竜「!? 」

  画竜、浮世がムーピーの触手に捕まっているのを見つける。浮世は手足と首を触手に捕まり身動きできない状態である。

画竜「点睛! 」

浮世「…“絵獣”を、あなたが“絵獣”を描いて…」

  画竜、地面に落ちた不思議な筆を見つけ、それを手に取る。

画竜「任せろ、絵を描くことなら誰にも負けねー! 」

  画竜、不思議な筆で「鼻毛激烈拳」のイラストを描くが、そのイラストは描いたすぐそばから砂のように消えていってしまう。

画竜「…なんで? 」

浮世「言ったでしょ、“絵獣”は相手の“戯画超獣”の正体に合わせないと意味がないの」

画竜「こいつの正体って、なんなんだ? 」

浮世「わからない、でも、最初に現れたのはヒョウタンツギ。つまり、こいつも手塚作品のキャラクターの1つ。だから、なんでも良いから、あなたの好きな手塚治虫マンガのキャラクターを描いて! 」

画竜「…おう、わかった! …で、手塚治虫って誰だ? 」

浮世「…………………ウソでしょ、ウソって言って………………あなた、まさか手塚治虫を知らないのに、今までマンガを描いてたの? 」

画竜「……………………(うふぇっほ:照れ恥ずかしい顔)」

浮世「…ありえない! 神様よ、マンガの神さま 手塚治虫! ほんとに知らないの!? 」

画竜「……………………(うふぇっほ:照れ恥ずかしい顔・パート2)」

浮世「アトムは? 鉄腕アトム? 鉄腕アトムなら知ってるでしょ? 」

画竜「聞いたことは…あるけど……どんなのか……思い出せない……かな? 」

浮世「……………………(怒りと失望を二乗した修羅のような顔)」

画竜「……………………(うふぇっほ:照れ恥ずかしい顔・パート3)」

  すると、浮世を掴んでいたムーピーの触手が次第に広がり、浮世を包み込もうとする。

浮世「……! なんでも良い、手塚作品ならなんでも…ブラック・ジャックは? リボンの騎士! あと、三つ目がとおる! 」

画竜「…………(ふるふる:わからないと首を振る)」

浮世「じゃあ、さっき私が描いたレオ、レオで良いから」

画竜「レオ? レオって、どんなだ? 変な形のおにぎりしか見てないぞ、俺…」

  その時、ムーピーの触手が浮世の顔を包む。浮世、なんとか顔を出すが、

浮世「……っ! …「火の鳥」…「火の鳥」を描いて! 」

  と言うと、浮世はムーピーに取り込まれてしまう。

画竜「点睛! 」

  そこにムーピーの触手が飛んでくる。咄嗟に躱す画竜。見上げると、ムーピーの体内で苦しんでいる浮世の姿が見える。

浮世M「…なに、これ……私の過去の記憶……お母さん、お父さん……行かないで……」

  浮世の脳内に走馬灯のように幼い頃の父と母の記憶が甦ってくる。そして、涙が浮世の頬を伝う。

浮世「……たすけて……誰か、たすけて……」

  その浮世の姿を見た画竜。決意して不思議な筆を握り直す。

画竜「……描いてやるよ、「火の鳥」! 」

  画竜、筆をとって描こうとするが、ムーピーの触手が飛んできて、それを躱す。

画竜M「…なるほどね、ゆっくり描いてる時間は無いってわけね。ってことは、自分の中でアイデアを膨らませて、イメージを具現化して、一気に描き上げる………」

  画竜、ムーピーの触手を躱わし続けながら、頭の中で「火の鳥」のアイデアを膨らませ、イメージを固めていく。

画竜M「…これだ! 」

  画竜、「火の鳥」を描き上げようとするが、あと少しのところで、ムーピーの触手によって邪魔されてしまう。

画竜M「…っ! なんとか、描く時間を……あと何秒か、描く時間さえあれば……! 」

  画竜、気がつくと、屋上の縁まで追い詰められていた。目の前にはムーピーが迫る。そして、ムーピーの中で苦しむ浮世の姿が目に入る。

画竜「…こうなったら、やるしかねぇか」

  画竜、筆を構えると、ムーピーの触手が飛んでくる。すると、そのまま倒れ込む画竜。画竜は屋上から落下しながら筆をとり「火の鳥」を描き切る!

画竜「これが、俺の「火の鳥」だ!!! 」

  画竜が描いた「火の鳥」が見開きいっぱいに飛翔する! そして、“絵獣”として、ムーピーを焼き払い、囚われていた浮世を救い出す。そのまま「火の鳥」は地面に激突する寸前の画竜を背中に乗せて、高く空へと舞い上がる。

浮世「……ん」

画竜「気がついたか? 」

浮世「退治したの、あいつ? 」

画竜「あぁ。それより、見てみろよ。絶景だぜ」

  浮世、「火の鳥」の背中に乗って街を望む。夕陽が街を照らす絶景である。

浮世「……きれい」

画竜「……」

浮世「……あ、あいつを退治したってことは、この「火の鳥」も、もうすぐ消えちゃうから」

画竜「…え、そうなの? 」

浮世「ほら、早く戻らないと」

画竜「あれ、言うこと聞かないんだけど……」

浮世「え、うそ、ヤバい! おねがい「火の鳥」、学校にもどって」

画竜「「火の鳥」ちゃーん! 学校まで…って、どこいくの? 「火の鳥」ちゃーん!」

  わちゃわちゃと会話する二人。


◯ 時話高校・正門前(夜)

  超獣退治を終えて、“逢魔時”が終わり、夜が訪れている。帰ろうとする浮世と画竜。

浮世「画竜、今日はありがとう」

画竜「…うん」

浮世「でも、もう手伝わなくて良い。“常世絵師”の仕事は危険なの。時には命を落とすこともある。これからは、私ひとりでも戦えるぐらいに画力を上げて…」

画竜「あー!! 」

浮世「…? 」 

画竜「マンガ! お前に読んでもらうために描いてきたマンガ! どっかにいっちゃった…」

浮世「……いいわ。夏休みは終わっちゃったけど、また描いてきたら読んであげる。それで、おもしろかったら、マンガ部を認めてあげるから」

画竜「…約束だぞ!! 絶対、おもしろいマンガ、描いてやるからな!! 」

浮世「……(笑って)」

  画竜と浮世、楽しそうに話しながら帰り道を歩いていく。


[つづく]


#創作大賞2024 #漫画原作部門  #少年マンガ

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