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macurocuo
決意も思い出も拭ったもの #シロクマ文芸部
手を洗う機会を、このさき一生失った、と思った。
推しと、握手したのだ。
俳優の彼は今までに握手会を開催したことがない。ライブなどがあるわけでもない。
生の姿を見られることすらほぼ叶わない。まさに画面の向こうの人。
そんな彼が、握手会を行ったのだ。
私の震える手を、彼の手がしっかりと握ってくれた。そのあたたかさが、まだ残っている。
何人ものファンが、握手したあとの自分の手をぼんやりと眺めていた。それはもちろん私も同じ。
確かに彼の熱を感じたのに、やはりどこか現実ではないような気がした。
SNSで繋がっていた仲間たちと、イベント後の打ち上げで居酒屋に集まった。
席に案内され、おしぼりを配られながらも「最高だった〜」「無理すぎる」とみんなが口にしている。みんながまだ夢見心地だった。
「絶対に手洗わない」
「私も」
「あれ言っても絶対洗うでしょ、と思ってたけど、まじで洗わない」
「手袋しておけば大丈夫かな」
「手荒れ対策ってことでごまかせる?」
早速いかにして手を洗わずに過ごせるかの議論が始まる。真剣で、本気だ。
「あ」
その音を出したのは一体誰だったのか。
きっと、全員だ。
「手洗わないって、言ったじゃん……」
「ちょ、ちょっと、どうしよ、拭いちゃったよ、」
みんなが呆然と、手元のおしぼりに視線を落とした。
#シロクマ文芸部 企画に参加しました。
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・餅があふれる月 10/2「月の味」
・何色って呼ぶ? 10/9「水色は」
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2025.10.28 もげら
