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何色って呼ぶ? #シロクマ文芸部

 水色は空。赤色はりんご。緑色は木。黄色はレモン。
 誰に教えられたわけでもないのに、いつの間にか色とモノを結びつけていた気がする。
 空は橙色にもなるし、紫にもなるし、ピンクにもなるし、深い深い黒にだってなる。
 りんごだって、青りんごがある。まあ、「青」りんごと言っても見た目には「黄緑」くらいに見えるのだけれど。

 君は何色だろうねえ。
 ふと、僕の作る料理を待つ妻をちらりと見た。
 ……黄色っぽい。なんだかこう、ぱあっと明るい色だ。少なくとも今は。
 ありがたいことだ。たまたま料理が趣味だった僕の作るご飯を、ウキウキワクワクと期待に満ちた表情で待ってくれている。
 いつもはもう少し落ち着いた感じの色だと思う。
 色に詳しくもない僕は妻の色を「何色だ」と断定することはできない。 

 フライパンの中で、キャベツのうすい緑色にこげ茶色が混じり始めた。
 料理中に物思いにふけるものじゃない。

 そうだ。色は変わるものだ。何色、なんて決めつけなくていいんだ。


「あ、そうそう! 今日、りんご買ってきたんだった! あとで食べよう」
「ん、いいね。むいておこうか?」
「助かる! 最高!」
 さきほど思い浮かべた真っ赤なりんごのイメージが再び湧き上がる。つやつやの赤。
 エコバックに手を入れながら、弾む妻の声は何色だろうか。

 誰にする言い訳でもないけれど、妻が料理をしないわけではないことは言っておこう。ただ僕のほうが料理をすることが好きだ、というただそれだけのこと。
 妻の作ってくれるご飯だってもちろんおいしい。
 そう、夫婦だっていろいろな形があって、いろいろな色がある。

「はい、これ。おねがーい」
「へーい、りょうか——、いや、なにこの色?」
 僕の反応を見て笑う妻の、さらに明るくなった色が部屋に広がった。
「色はあれだけど、めっちゃおいしいって八百屋のおっちゃんが勧めてくれた」

 妻はりんごを買ってきたと言った。
 色は変わる。なにが何色かなんて決められなくていい。さっき思ったばかり。
 しかし、目の前に置かれた、妻の言う、おいしいと勧められたらしいりんごは——


 いや、本当、これ、何色?




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2025.10.11 もげら

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