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君を思い出さない #シロクマ文芸部

 思い出す君は笑っていた。初めて見たときに、とても可愛いと思った。
 ときには泣かせたこともあった。
 君は泣いても可愛かったな、なんて思う僕は単純な男かもしれない。

 だけど、怒った君は可愛くなかった。
 怒った顔も可愛いなと思った頃もあったのは事実だけれど。
 君を思い出したときに、可愛くない君が居るだろうことに、急に耐えられなくなったのはどうしてだろうか。
 君を怒らせた理由が些細なものだったからだろうか。
 怒る君に耐えられなかったのは、僕が単純な男だったからだろうか。


 今、僕の腕に抱かれた君を、思い出すことはないだろう。

 恐怖と悲しみの顔だと、思う。
 死を予感した人の顔だと。

 可愛いとは到底思えない。

 僕は思い出さない。その、君の顔を。

 思い出すという行為には、忘れるという行為が必要だ。
 僕は忘れない。君の、最期の顔を。




#シロクマ文芸部 企画に参加しました。

こんなような話は前にも書いている記憶はあるのだけれどね。



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2025.03.09 もげら

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