デンジへ
今日、チェンソーマンが終わる。
伏線がどうとか、第3部があるかとか、そういう話はいい。ここではそういうことは話さない。
ただの手紙を書くよ。
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デンジへ
チェンソーマンに出会ったのは、ジャンプで連載していた頃だった。
最初は「ヤベー漫画がある」くらいの温度だったんだ。おまえを描いてる藤本タツキはヤバいよ、わかるだろ?
サムライソードの金玉を蹴り上げるシーンで完全に持っていかれた。こんなことしていいんだ、と思った。
少年漫画のルールとか物語のお約束とか、全部踏み倒して走ってる。それだけで読む理由としては十分だった。
でも、読み続けるうちに気づいたんだ。
この漫画がめちゃくちゃなのは、おまえの人生がめちゃくちゃだからだ。そうだよな?
おまえの夢は、いつも普通だった。
ジャムを塗った食パンを食べて、ポチタと暮らして、女の子とイチャイチャしたい。それだけ。
ただそれだけのことを手に入れるのに、臓器を売ったり、タバコ食ったりさ。
命をかけてたの。見てたぜ。
やっと手に入れた日常は、何度も壊されてた。
友達は死に、信じた人には裏切られ、家族も奪われた。
おまえが何かしたか?
普通に暮らしたかっただけだ。それは分かってる。
俺はさ、高校生の頃「普通」の価値がわからなかったんだ。
みんなが当たり前にやっている毎日に、意味が見えなくて、退屈で、どこか遠くに正解があるような気がしていた。
22くらいになって、ようやく気づいた。
普通の日常は退屈なんかじゃなかった。
それはずっとそこにあったのに、俺が見えていなかっただけだった。朝起きて、飯を食って、仕事して、家に帰って犬が出迎えてくれる。
「そういうもの」の中に、ちゃんと美しさがあった。
そこからだ、人生に意味を感じられるようになったのは。
おまえは最初からそれを知っていたのか?
ジャムの塗ってない食パンでも幸せだった。
ポチタと一緒のボロ小屋でよかった。
「普通」を守りたいとかじゃなく、ただ感じていたかっただけだ。
なのに世界がそれを許さなかった。
なあ、俺はおまえが愛おしいよ。
おまえはさ、男に好かれたくないだろうけど。
忘れられないシーンがいくつもあるんだ。
パワーと抱き合ったとき。
あの瞬間だけ、おまえは強さも正しさも関係なく、ただの人としてパワーに触れていた。
読んでいて胸が詰まった。マジだ。
マキマを食べたとき。
あのやり方を「愛だ」と言い切ったおまえに狂気を感じた。復讐でもない。執着でもない。
歪みきっているけれど。
あれは、おまえなりの。デンジにしかできない誠実さだったんだな。
そんでさ、ぐちゃぐちゃに泣きながらヨルに言ったよな。
「オレん事 まだ好きな人がいてくれて よかった」
本気で「よかったな」と思ったんだ。
「自分を好きな人がいる」って認識できたこと。
たったそれだけのことが、本当に嬉しかった。
デンジ、おまえはかわいそうなやつじゃない。
失敗して後悔して、それでも次の日に進んで、少しずつ何かを掴んでいく。
成長ってこういうことなんだなと、教えられた。
俺はおまえからたくさんのことを学んだよ。
ありがとう。
陳腐な言葉だけど、幸せになってほしいって思ってんだ。マジでな。
毎週水曜日の0時。
みんな、おまえの物語を見てたよ。
俺は出勤前にジャンプ+を開いて、車に乗り込む前の25分間で、おまえの一週間分を受け取る。
なあ、4年もデンジとの朝があるんだ。
長い間がんばってきたな、最高に面白かった。
その朝が明日で、最後になるなんて、ウソだろ?
やっぱ、寂しいぜ。
デンジ。
おまえの物語がどう終わるか、わからない。
生みの親、藤本タツキのことだから、俺たちの予想なんか軽々と飛び越えてくるだろう。
でもひとつだけ。
おまえがトーストを食べることがあるならさ。
美味しいジャムを塗って、苦くて、まずいコーヒーを飲めよな。
幸せってのは、甘くて美味しいものを毎日食べるんじゃないんだ。苦くて、辛くてさ。
たまに食べるから美味いんだよ。
それは、おまえが教えてくれたことだ。
俺は明日も朝起きて、飯くって、犬に「散歩行くぞ」って声かけて、いつもの道を車で走る。
おまえが夢に見てたような朝だと思う。
大丈夫だよな?デンジ。
今日はたいへんだと思うけど、頑張れよ。
1人じゃない。
みんな、おまえを想ってるよ。
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