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イラン経済の解説と戦闘の影響のリスク認識


 現在、イスラエルとイランの戦闘が注目されており、最悪の事態に発展するのではないかと警戒感が高まっています。政治的な立ち位置や外交関係についての解説は多くありますが、イランの経済が今どのような状態なのか、実はあまり知られていないかもしれません。
 イスラエルについては、テクノロジー企業が多く存在し、国債も主要なインデックスに含まれているなど、国際投資家との関係も深いですが、イランに関してはその逆で、経済の存在感はかなり限定的です。この記事ではそうしたイラン経済の基礎的な部分を中心に解説します。

出所)外務省

イランの経済規模とGDP

 まずは、イランの名目GDPを確認しましょう。2024年のイランの名目GDPは4,014億ドルで、世界で第40位という位置付けです。この金額は日本と比べると、大阪府よりは大きいけれど、東京都よりは小さいといった規模感です。ただし、イランの人口はおよそ9,000万人に達しており、それを考慮すると1人当たりのGDPは約4,000ドル程度となっています。この金額は世界順位で見るとおおよそ120位。つまり、経済的にはあまり豊かとは言えない国というのが実情です。

イラン・イスラム共和国(Islamic Republic of Iran):人口
8,920万人(2023年、世界人口白書2023)

外務省

インフレ率と経済制裁

 それでは現在のイラン経済の足元はどうなっているかというと、「厳しい」と言われることが多いのですが、その中でも特に議論されるのがインフレ率です。IMFが公表しているデータによると、2025年3月時点のイランの消費者物価指数は前年比プラス37.1%となっています。2023年4月にはプラス55.7%という水準に達していた時期もあります。
 2020年代に入ってからは、ほぼ常に40%を超える高インフレが続いており、2010年代のような10%以下の安定的なインフレ率には戻っていません。この背景には、アメリカなどからの経済制裁の影響で輸入品の価格が上がりやすくなっているという構造的な問題があります。

実質成長率

 こうした高インフレ下にあるイランですが、経済成長率そのものは意外と悪くありません。IMFなどの統計によれば、コロナ禍以降のイランの実質GDP成長率は、2021年がプラス4.7%、2022年がプラス3.8%、2023年がプラス5.1%、そして2024年はプラス3.5%と、安定的な成長を続けています。
 イランはOPEC加盟国の中でも産油量ではサウジアラビア、イラクに次ぐ3位。輸出量ベースではUAEの方が多いとも言われますが、それでも原油輸出はイラン経済にとって大きな柱であることに変わりありません。

UAEの出生率と移民
 UAEの人口はおよそ1000万人弱ですが、そのうちUAE国籍を持つ人は約10%しかおらず、残りの大多数は移民です。

UAEの出生率低下に見る中東の少子化問題

中国との関係

 では、イランの原油はどこへ輸出されているのか。最大の輸出先は中国です。OPECの公表するデータによると、2023年時点でイランが輸出している原油の約37%を中国が購入しており、ロシア、サウジアラビアに次ぐ第三の調達先として重要視されています。
 中国は近年、ロシアとイランからの原油輸入を増加させており、そのおかげでイラン経済も一定の安定を保ってきたという側面があります。

ホルムズ海峡封鎖とリスクシナリオ

 現在のイスラエル・イラン間の緊張において、国際的に懸念されているのがホルムズ海峡の封鎖です。ここが封鎖されれば、最大の打撃を受けるのは中国、日本、インド、韓国の4カ国で、同海峡を通過する石油タンカーの6割がこれらの国々向けとなっています。中でも最大の輸入国は中国で、全体の約2割を占めていると見られています。

出所)Bloomberg【2025/6/18】

 したがって、もしイランが海峡を封鎖すれば、自らの最大の顧客である中国を苦しめることになり、自国経済にもブーメランのように返ってくることになります。そういう意味では、海峡の完全封鎖という選択肢は現実的ではないと考えられます。
 ただし、封鎖まではいかなくても、航行中の船舶が攻撃を受けたり、脅威に晒されることで保険料が高騰し、輸送コストが急上昇する可能性は否定できません。バブ・エル・マンデブ海峡と同様に、緊張が続けば原油価格が高騰する可能性が高くなります。

イランも抱える移民・難民問題

 イラン経済を考える上で、もう一つあまり知られていない重要な要素として「移民・難民問題」があります。イスラム教国家であるイランも、人口が自然にどんどん増えていくというわけではありません。
 それでも、近年イランの人口が急増している背景には、移民というより難民の存在があります。特にアメリカのアフガニスタン撤退以降、タリバン政権下となったアフガニスタンからは500万〜800万人が周辺国へ避難したとされ、イランもその多くを受け入れています。
 2024年時点で、イランには約350万人の難民が暮らしていると推計されており、これはトルコに次いで非常に多い数字です。仮にイランとイスラエルの対立が全面戦争に発展すれば、今度はイランから大量の難民が周辺国に流れ出すリスクもあります。

金融市場での存在感

 最後に、イランという国は国際金融市場ではほとんど存在感がありません。これは単に経済規模が小さいからというだけでなく、経済制裁によって金融機関が欧米市場から排除されているためです。したがって、地政学リスクが拡大した場合でも、金融市場での混乱は限定的だと見られています。

リスク認識

 今すぐ状況が悪化するという話ではなく、リスクシナリオが顕在化した場合にどういうことが起き得るのかという視点で解説したものです。こうした経済構造や他国との関係を把握しておくと、今後の展開やリスク評価にもつながります。引き続きよろしくお願いいたします。


ご参考

イランは産油国であるため、イランが関わると原油市場にも影響が出てきます。

イランとイスラエルの戦闘状況と今後の見通し

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