米国債大量売却の考察、中国と農林中央金庫
2025年4月8日頃から、米国債市場が大きく揺れ動きました。特に注目されたのは、10年物米国債利回りの急上昇です。4月7日時点では3.9%程度だった利回りが、わずか2日後の4月9日には4.5%付近まで跳ね上がり、市場は大きなショックを受けました。
この異変の背景にはさまざまな要因があるとされ、SNSや一部報道では「中国が米国債を売却したのではないか」、「日本の金融機関が大量売却したのではないか」といった憶測が飛び交いました。特に、中国と農林中央金庫の動きが焦点となっています。この件について説明してほしいというリクエストが多数きています。この記事では、こうした米国債の売却加速の背景について解説します。
農林中金が米国債を大量に売った説が出ていますが、そうだったとしても不思議はないですね。そうなんだろうと思っています。中国の売りも合わせて、動画で解説します。本日19時公開 pic.twitter.com/RJco4AxNDC
— 【世界経済情報】モハPチャンネル (@MohaP_WorldNews) April 11, 2025
米国債の急落理由
なぜ米国債が急落したのかというと、悪材料はいろいろあったと思います。まず、中国に対する追加関税です。関税率が100%を超えてくるとアメリカの物価に対する影響も深刻になる。関税がインフレに与える影響というのも、一つ警戒されたと思います。
そして、トランプ政権の幹部が「海外投資家がアメリカの金融資産に投資をする時に課税をしよう」ということを検討しているという情報もありました。これは正式に公表されたわけではありませんでしたが、検討していてもおかしくはないということで、嫌気された面はあったでしょう。
中国の国債入札への不参加
今回の動きを語る上で、まず注目すべきは中国の動きです。4月8日にアメリカの債券市場で3年国債の入札が行われましたが、これに中国が参加しなかったというニュースが流れました。
これはおそらく本当だと思います。
中国が米国債の入札に参加しなかったというニュースは、市場関係者の間でも話題になりました。各国の中央銀行は通常、外貨準備運用の一環として主要国の国債入札に参加するのが一般的であるため、中国がこれを見送ったことは大きなインパクトをもって受け止められました。背景に政治的な意図があったのではないかという憶測もあり、米中対立の文脈で語られることになりました。
中国の米国債保有
中国は7,000億ドル以上の米国債を保有しており、日本に次ぐ第2位の保有国です。中国は5年ほど前まで1兆ドル以上を保有していましたが、近年それを減らしてきています。米中対立の激化で、ますます保有国債を減らしてきても不思議ではないです。
中国の米国債保有状況ですが、3月末は7,674億ドルとなり、2009年以来の低水準になりました。2月末が7,750億ドルでしたので、3月は76億ドル減少しました。
●2024年3月末 7,674億ドル
●2023年末 8,163億ドル
●2022年末 8,671億ドル
●2021年末 1兆403億ドル
●2020年末 1兆723億ドル
中国の米国債売却に対する一見解
4月9日、米国債が急落していく中で、「中国が米国債を売却したのではないか」という話がSNSを中心に話題になりました。
それはないのかなと、私は思います。
というのも、債券市場の特徴として、取引は主に証券会社と機関投資家が直接行う「相対取引」であり、誰が売って誰が買ったかを証券会社は把握しています。これが、取引所で取引される株式とは大きく異なる点です。最近は電子取引も増えていて、端末上ですべてのやり取りが完結することもありますが、それでも証券会社と投資家が直接取引しているということは変わりありません。
大口の取引があればその噂は市場にすぐに広がる性質があり、もし中国がまとまった量の長期債を売却していれば、その情報はすぐに共有されていたはずです。
現時点では、入札不参加という行動こそ確認されていますが、実際に売却があったかどうかは不明であり、少なくとも証券業界内ではそのような動きは見られていないとの見方が有力です。「中国が米国債を売却したのではないか」という話という話は、SNSでは騒がれていましたが、これについては業界ではほとんど言われていませんでした。もし売っていたら、これもすぐに情報が流れていたと思います。そのため、そういうことはなかったのかなと私は理解しています。
農林中金の大量売却説
一方で、その後に「農林中金が大量売却したのではないか」という話も出てきています。これについては、
おそらくあったんだろうなと、私は思っています。
この説については、あくまで憶測の域は出ませんが、4月9日に米国債を投げ売りした投資家の中に、農林中金もいたのではないかと思います。海外の市場関係者の間では、農林中金は「世界最大のヘッジファンド」として知られています。農林中金は過去にも米国債を保有しつつ、デリバティブ取引を組み合わせたアセット・スワップなどを活用してきたことでも知られており、ポートフォリオの調整として売却を行った可能性は否定できません。
ただし、「農林中金が全部売却した」というような極端な見方には注意が必要です。マーケットが過度に反応している面もあると見られます。
米国債市場の構造と今後のリスク
現在、米国債の発行残高は約34兆ドルに達しており、そのうち33%以上を海外投資家が保有しています。特に7年〜10年の長期債については、外国人投資家の保有比率が45%に達しているとされます。
こうした中で、アメリカが関税政策を通じて経済の分断を進めれば、米国債の需要も減少していくのは自然な流れです。輸出によって貿易黒字を積み上げてきた国々は、その結果として外貨準備を増やし、米ドル資産を保有するという構造がありました。しかし、貿易が縮小しドルを保有する必要性が薄れれば、米国債を保有し続けるインセンティブも薄れていきます。
関税による経済分断が進行する中で、今後も海外投資家の保有動向に対する市場の敏感な反応が続くことが予想されます。引き続きよろしくお願いいたします。
ご参考
アメリカ経済への不安
S&P500の時価総額は、4月3日を含む2日間だけで5兆ドル(約743兆円)以上が消失しました。この短期間で、世界中の多くの人々の資産が急減し、「アメリカ経済は大丈夫なのか」という不安が市場に広がっています。
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