アメリカ経済は強いのか、それとも弱いのか
2025年12月23日に発表された2025年7-9月のアメリカのGDP成長率を取り上げます。結果は前期比年率+4.3%となり、約2年ぶりの高成長になりました。世の中では「アメリカ経済は大丈夫なのか」、「逃げろ」といった厳しい見方もあると思いますし、労働市場を見ても失業率が緩やかに悪化しています。FRBは利下げしているはずなのに、という感覚もあるでしょう。
実際のところ、アメリカの景気はどうなのか。
この記事では改めて、GDP統計をベースに米国経済の足元を整理して解説します。
動画で消費者物価指数の解説していなかったので、Noteでどうぞhttps://t.co/qLr0K2tVlO
— 【世界経済情報】モハPチャンネル (@MohaP_WorldNews) December 25, 2025
アメリカのGDP成長率
2025年7-9月のGDP成長率は前期比年率+4.3%で、市場予想の+3.3%を大きく上回りました。4-6月が+3.8%でしたので、比較的高い伸びが続いています。今回の伸び率は2023年7-9月以来、2年ぶりの高成長です。

一方で、2025年1-3月は▲0.6%になっていました。ここは関税引き上げ前に輸入が増加した関係などもあり、数字が歪んだ面もあったと思います。その後、2四半期連続で高い伸びを示している、という状況です。
好調の中心は個人消費
何が好調だったのかと言えば、まず個人消費です。
4-6月の前期比年率+2.5%から、7-9月は+3.5%に加速しました。中でもサービス消費が4-6月の+2.6%から7-9月に+3.7%へ加速しています。内訳を見ると、娯楽サービスが+3.9%から+6.6%、医療サービスが+4.8%から+6.8%に加速しました。

モノの消費についても動きがあります。使用期間が短い製品などの非耐久財は、4-6月の+2.2%から7-9月は+3.9%に加速しました。一方で耐久財は、4-6月がプラスだったところから、7-9月は+1.6%に鈍化しています。耐久財の中身を見ると、自動車が▲6.7%、家具が▲4.2%となりました。価格上昇がこれらを押し下げた面があるということです。その一方で、娯楽財が+15.7%と高い伸びになりました。娯楽財というのは、ゲーム機やスポーツ用品、映画鑑賞の機材、楽器といった、娯楽に使うもので、すぐに捨ててしまうようなものではなく、値段もそこそこ高くて長期間使えるものを指します。こういうものが大きく伸びた、という点は特徴的です。
失業率と消費
では、なぜ消費が伸びているのかです。
失業率は2023年4月の3.4%から徐々に上昇してきており、2025年11月時点で4.6%まで上がってきています。失業率の上昇もあって、12月にも利下げを実施しています。
労働市場が悪くなってきて失業率が悪化しているのに、なぜ個人消費は上向いているのか。ここで一つの要因として見られているのが、二極化が進んでいるという点です。以前から言われていることですが、高所得者の賃金は伸びていて、消費もどんどん増えている。AIに関連する投資もどんどん行われていて、テクノロジー関連の業界の一部の人たちは収入を増やし、消費も拡大している。一方で、そうした恩恵を受けられない人たちの中では失業率が上がっている。
トータルすると失業率は上がっているけれど、消費は高所得者が牽引する形で伸びている、という状況だと見られています。一部の分野が高成長を実現すると他の分野にも波及していく、トリクルダウンのような現象は見られず、ずっと二極化が進んでいる状況だと言える、ということです。
輸出と輸入
次に、関税の影響が注目された貿易のところを見ていきます。輸出は7-9月が+8.8%で、4-6月に▲1.8%になっていたところからの反動もあったと見られます。伸びているのはコンピューター関連が+69.3%で、半導体の輸出などが伸びた影響だと見られています。航空機関連も+69.3%と大きく伸びました。サービス輸出は+11.2%と伸びていますが、旅行サービスは▲12.9%となりました。これはアメリカへの旅行が人気がなくなってきていることを示す結果です。
一方、輸入については、1-3月に関税前の駆け込み需要で大きく伸びた反動がありました。4-6月は▲29.3%に落ち込み、7-9月は▲4.7%となっています。このあたりはトランプ政権の政策の影響が大きく現れた格好だと言えるでしょう。
設備投資とエネルギー投資
設備投資については、4-6月が+7.3%と高い伸びだったところから、7-9月は+2.8%に鈍化しています。AI関連で大規模な投資が行われているのは事実ですが、それが全体を大きく牽引するまでには至っていない、という状況です。
石油・天然ガス関連の設備投資は、4-6月が▲31.7%、7-9月も▲19%と大きく減少しました。トランプ政権が「石油を掘りまくれ」というスタンスであるものの、原油価格の低迷もあって、実際に掘りまくるような動きは見られていない、ということです。
強いのか弱いのかが見方で変わる局面にある
GDP統計をざっと振り返ると、今のアメリカ経済が弱いのか強いのかは、見方によって大きく変わる状況だということが分かります。良い面と悪い面が、はっきり二つに分かれてきていると言えるでしょう。
失業率の悪化などを理由に、「もっと緩和的な金融環境にするべきだ」という主張もあります。ただ、それをやったところで金利が下がれば、ますますAI関連の投資が活発になるばかりで、二極化の構図は変わらない。金融政策は非常に難しい舵取りを迫られていて、政策の方向性について理事会メンバーの間でも意見が分かれている状況です。
CPI
11月の消費者物価指数は12月18日に発表されています。政府機関の閉鎖の影響でデータが収集できなかった関係で、季節調整済みの前月比の内訳が公表されませんでした。全体の数値で言うと前年比+2.7%で、予想の+3.1%を下回りました。コア指数もプラスで、予想の+3.0%を下回っています。
この結果だけを見ると、トランプ関税の影響は想定されていたよりもだいぶマシだった、ということになるでしょう。ただし、一部の調査開始時期が11月14日になっていて、歪みが生じている可能性もあります。そこは割り引いて見る必要があり、今回の結果だけで評価するのは難しい、というのが正直なところです。このままディスインフレが続いていくのか、今後も注目になっていくでしょう。
総括と私の考え
前期比年率+4.3%という高成長は確かに目を引きますが、同時に失業率の悪化、二極化、政策の難しさといった、別の顔もはっきり見えてきます。景気が強いのか弱いのか、という問いに対して、単純に白黒で答えられない局面に入っている。今のアメリカは、まさにそういう状態だと思います。今後ともよろしくお願いいたします。
ご参考
米雇用統計はアメリカの労働省の労働統計局が発表している経済指標です。毎月発表されます。アメリカの約16万の企業と政府機関、約40万件のサンプルを対象に調査がされています。調査対象が多く、労働市場の状況を把握できる指標です。
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