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日本経済の状況と自民党の経済政策の話


 日本の参議院議員選挙をめぐって、「どう思いますか」、「特定の政党の政策をどう見ていますか」といった質問を多数いただいています。この記事では、その中でも特に注目が集まっている自民党の経済政策について、私自身の見方に説明したいと思います。
 今のところ私は、今回の選挙は自民・公明にとってかなり厳しい結果になるのではないかと考えています。そう考える背景には、現状の経済に対する不満の高まりと、それに対する与党の公約の内容があります。

日本政治の現状と今後
 経済的な側面から見ると、日本の政治状況に対する国民の不満は、市場参加者が考えている以上に大きくなってきていると、私は見ています。

政治と経済とインフレとセンチメントの関係

自民党公約の概要:3つの柱と経済重視

 まず、自民党が今回掲げている公約を見てみますと、大きく次の3つの柱で構成されています。

1.強い経済
2.豊かな暮らし
3.揺るぎない日本

出所)自由民主党

 このうち1と2が、経済に関するものとなっています。

 「強い経済」では、2040年までにGDPを1,000兆円にするという長期的な成長戦略を打ち出しています。一方「豊かな暮らし」では、物価対策、非正規と正規の格差是正、子育て支援、高校授業料の無償化、そして2030年までに賃金を100万円引き上げるといった、生活に直結する政策が列挙されています。

 これらの目標そのものに異論はありません。GDPが1,000兆円になるとか、賃金が上がるというのは、それが実現すれば確かに良い話です。しかし、重要なのは、どうやってそれを実現するのかということです。

公約の具体性

 公約には、目標達成のための「アクション」が提示されていますが、その内容は非常に抽象的で具体性に欠けているように見えます。特に目立つのは、企業への補助金のような文言が多い点です。

 例えば、賃上げについての記載には、

中小企業・小規模事業者に丁寧に寄り添い、経営者の負担感軽減と5年間
60兆円の生産性向上に向けて官民で取り組みます。

という表現がありますが、これは結局、企業への補助金を通じた支援策を示唆しているとも受け取れます。また別の部分では、

物価上昇に負けない賃上げと国内投資の実現により、わが国の力強い成長を実現 します。GX、DX、経済安全保障、コンテンツなどの成長分野への設備投資や研究 開発を促進するため、大胆なインセンティブ措置を講じます。

と記載されています。ここでも「GX」、「DX」といったキーワードを挙げつつ、賃上げを企業支援経由で実現するという構図が読み取れます。

過去の教訓

 ここで考えていただきたいのが、企業はこれまでも巨額の現金を抱えていたという事実です。実際、2024年3月末の資金循環統計では、企業の現金・預金残高は300兆円を超えています。
 つまり、企業にはお金があったのに、それを活用した賃上げが十分に進まなかったというのがこれまでの実態です。その中でまた補助金を配って賃上げを促す、という手法が果たして有効なのか。

 過去の失敗が十分に反省されていないように見えるというのが私の率直な印象です。

財政スタンス

 財政政策に関しては、野党の中には消費税減税を主張する政党もありますが、「自民・公明が最も緊縮的だ」と言われることがあります。ただ、今回の公約を見る限り、必ずしもそうとも言い切れない側面もあるように思います。実際に、「丁寧に寄り添う」、「インセンティブ措置を講じる」などの記載があり、要するに補助金などで企業への支出を伴う政策とも言えるでしょう。さらに、一人2万〜4万円の現金給付や、企業への賃上げ支援も行うとしています。
 消費税減税に対しては「実施に1年以上かかる」と否定的な立場をとっていますが、どちらにしても財政出動を伴うという点では、野党と本質的な違いがあるとは言い難いかもしれません。

経済政策と目に見える支援

 私自身は、企業に対する間接的な支援よりも、消費税減税のような誰もが実感できる分かりやすい施策の方が良いのではないかと感じています。
 景気が悪い中で、企業に補助金を出しても必ずしも賃上げに繋がるとは限りません。むしろ「分かりやすく、手取りが増えたと感じられるような政策」の方が、生活者の実感に結びつきやすい。そうした視点が今の公約には少し欠けているのではないかという印象です。

 もちろん、選挙は経済政策だけで決まるわけではありません。外交、安全保障、社会保障、エネルギー、農政、政治とカネの問題、外国人労働者政策など、論点は多岐にわたります。
 
しかし、今回は特に賃金や物価対策が大きな論点になっているようにも感じます。そうした意味では、現在の与党にとってはやや不利な局面になっているのではないかと私は見ています。

理想と現実のギャップ

 最後に強調しておきたいのは、日本経済の状況は極めて難しいということです。もし「これをやれば必ずうまくいく」という政策があるなら、誰もが既にそれを選択しているはずです。少子化も止まらない、GDPもなかなか伸びない。こうした現実のなかで、どの党の経済政策にも限界があります。そういう意味では、各党の経済政策に過剰な期待を持つよりも、現実的な評価と冷静な判断が求められるのではないでしょうか。
 自民党の経済政策とその公約の中身について、私なりの視点から整理しました。今後ともよろしくお願いいたします。


ご参考

 情報との付き合い方、日本経済の置かれている状況、トランプ政権とアメリカ経済のこと、力を失っていくイギリス経済、中東経済のこと。今の時点での私の考えをまとめて本にしました。

ドル安進行化での中国の動きと書籍化のご報告

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