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2025年6月第2週の米国債の入札に向けて


 「米国債は大丈夫なのか」、「大変なことになるぞ」といった声もある中、今週はマーケットで重要なイベントが行われます。米国債の入札です。これまで以上に警戒感が高まる中で、米国債入札の注目点について説明します。

 今週は、アメリカの国際市場で3日連続で入札が行われます。

  • 2025年6月10日(火):3年債  580億ドル

  • 2025年6月11日(水):10年債 390億ドル

  • 2025年6月12日(木):30年債 220億ドル

 入札は特別なものではなく、定例のスケジュールに沿って毎月第2週に行われているものです。月後半には2年債や20年債、物価連動国債の発行もありますが、特にこの第2週の3連続の入札は、10年債・30年債という長期債が含まれていることから、米国債相場において毎月最大のイベントと位置付けられています。

2025年4月の米国債の入札の振り返り

 4月には米国債が急落し、「アメリカ売り」が叫ばれたこともありました。トリプル安(株・債券・ドル)と呼ばれるような状況で金融市場が不安定化したのも、この第2週の入札前でした。

 2025年4月9日、日本時間で米国債が急落した際、「農林中央金庫がまた何かやらかしたのではないか」といった話題がネットを中心に飛び交いました。

農林中央金庫の運用スタイルの話

 当時は「入札が無事に終わるのか」と警戒感が高まり、入札前に国債が売られ利回りが急上昇しました。結果的に予想されたほど悪い結果にはなりませんでしたが、今後もこのような不安感は繰り返し高まると見られています。

国債発行を巡るマーケットの動き3段階

 国債の発行を巡って、マーケットが織り込んでいく過程には大きく3段階あります。

1.財政赤字拡大が決定

 この段階では、まだ発行額は不明ですが、マーケットは財政拡大の方向性をある程度織り込んで動き始めます。

2.国債発行規模が明らかに

 これは四半期ごとのタイミングで行われ、国債の増発方針などが正式に示されます。

3.入札

 国債が市場に出されて、どれだけ需要が集まるのか、具体的に示される段階です。今回の入札は、まさにこの3段階目にあたります。

減税法案通過と財政赤字の拡大懸念

 特に、今回は重要な背景があります。5月にトランプ政権の減税法案が下院を通過し、それ以降初の3年・10年・30年の入札ということになります。この減税法案により、今後10年間で2兆4,000億ドルもの財政赤字が拡大すると見られており、まずはトランプ政権下で赤字が急増する見通しです。
 ただし、法案はまだ上院での審議が残っており、今回の入札で発行額が増えるわけではありません。しかし将来的に国債の発行が増えれば金利が上昇する可能性が高く、それを先取りして、今回の入札でも買いを手控える動きが出る可能性があります。

30年債の入札

 特に警戒されているのが30年債の入札です。なぜなら、債券投資家の多くは負債の期間に合わせて債券を保有していますが、アメリカで30年の負債を持っている機関投資家は年金基金ぐらいで、それほど多くありません。

 日本では生命保険会社が長期保険を販売しているため、30年どころかもっと長期の債券を保有する必要がありますが、これは世界的には例外的な存在です。

生命保険会社によるALM(アセット・ライアビリティ・マネジメント)や、長期・超長期債の需給バランスの問題などは、海外ではあまり知られていません。

日本の長期金利上昇と世界の債券市場への影響

 アメリカの保険会社にはそこまでのニーズはなく、したがって30年債は購入者が限られているため、入札の警戒感が特に高まっているというわけです。ただし「入札割れ」まで懸念している市場参加者はほぼいません。むしろ想定されているのは、応札倍率が前回より低下する可能性、そして応札価格がばらけて最低落札価格と平均価格の差が広がることです。こうした事態を織り込んで、入札前から利回りが上昇する展開になるかもしれません。

 ちなみに6月6日時点で、アメリカ10年債の利回りは4.51%、30年債は4.97%。30年債は5月に一時5.15%まで上昇しましたが、その後は大きな動きは見られていません。

5月のCPIも発表予定

 今週は米国債相場に影響を与えるもう1つのイベントとして、5月の消費者物価指数(CPI)の発表も控えています。トランプ政権の関税引き上げによって「スタグフレーションではないか」とオールドメディアが騒いでいますが、現実にはすぐに物価が上がるということは考えにくい状況です。

日本のメディアでも「アメリカのスーパーマーケットがどうなっているのか」といった報道が多くされていましたが、現時点ではそれほど大きな影響は出ていないと見られます。

5月13日発表の米消費者物価指数の詳細解説

 輸入品や輸入原材料を使用した製品が店頭に並ぶには時間がかかり、企業にも在庫があります。価格転嫁においても企業は消費者の反応を見ながら手探りで進めており、一社が値上げを先行すれば他社が顧客を奪いに来るリスクもあるため、全体としては緩やかな値上げが一般的です。

 そのため、今回のCPIには一部の関税の影響は含まれているとはいえ、4月と同様、まだ本格的な物価上昇には至っていないと予想されます。今後も引き続き情報をアップデートしていきますので、どうぞよろしくお願いいたします。


ご参考

中国経済の先行き
 今回のCPIの大幅なマイナスは、春節の影響もありますが、中国経済がデフレ基調にあることを改めて示しています。PPIも長期にわたってマイナスが続き、輸出・輸入の低迷が顕著になっていることから、今後も景気の停滞が続く可能性が高いでしょう。

中国の消費者物価指数に見るデフレの兆し

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