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アメリカのイラン攻撃とマーケットの反応と注意喚起


 アメリカがイランの核施設に対して攻撃を行い、「ホルムズ海峡は封鎖されるのか」、「イランの報復はどうなるのか」と、非常に緊迫した状況の中で迎えた週明けのマーケットは、日本時間からスタートとなりました。
 朝方、日本の株式市場はやや下げて始まったものの、その後は徐々に値を戻す展開となりました。一番下がったタイミングでも、日経平均でおよそ1%程度の下落にとどまっており、マーケットの反応としては「思ったほど大きなものにはならなかった」といった状況だったかと思います。

 この件について「どうしてマーケットはあまり下がらないのですか」、「どういう状況になっているのか教えてください」というリクエストを多数いただいております。そこでこの記事では、市場参加者が今回の問題をどう捉えているのか、そしてどこまで織り込んでいるのか、その辺りについて解説します。

原油価格の反応

 まず最初に、今回の問題で最も大きな影響を受けると見られる原油相場から見ていきます。2025年6月20日時点でWTI原油の価格はおよそ74ドル前後で推移していました。それが6月23日、日本時間の取引開始時点で78ドルを超える水準で始まりました。
 しかし、その後、日本時間の午後には再び74ドル台まで下がってきており、上げた分のほとんどを戻してしまったという状況です。

 アメリカがイランに対して攻撃を行い、イランによる報復の可能性が高いと見られている中、西側の国々へ向かうタンカーが攻撃対象になるかもしれないとか、イランがホルムズ海峡の封鎖を検討しているといった話も出ています。そうした割には、原油価格はそれほど上昇していないわけです。

原油価格と株価

 この「原油価格がそれほど上がらなかった」という事実が、株価がそれほど下がらなかったこととも関係していると言えるでしょう。
 もしホルムズ海峡が封鎖されれば、原油や天然ガスの供給ショックが起こります。その影響は封鎖の期間にもよりますが、仮に2ヶ月程度の封鎖となれば、原油価格は100ドルを超え、120ドルにまで達するという予測をしているアナリストもいます。

ホルムズ海峡封鎖とリスクシナリオ
 現在のイスラエル・イラン間の緊張において、国際的に懸念されているのがホルムズ海峡の封鎖です。

イラン経済の解説と戦闘の影響のリスク認識

 しかし実際には、WTI原油が74ドル台、ブレント原油が77ドル台と、そこまで上がっていません。この背景には「市場参加者が意外と楽観的に見ている」という点があると考えられます。

ホルムズ海峡封鎖

 ホルムズ海峡を封鎖するというのは、現実的にはかなり難しいことです。というのも、ホルムズ海峡を通っている原油は、ヨーロッパや中国、日本、そして実はイラン自身も含めて多くの国にとって死活的に重要な供給源です。封鎖すれば、そうした国々すべてが大打撃を受けることになります。

出所)Bloomberg【2025/6/18】

 これは、ウクライナ戦争が始まった際にロシアの天然ガス供給が止められなかったのと同じ構図です。当時も「ロシアを制裁しろ」、「ロシアとの貿易はやめろ」という声が多く上がりましたが、結局のところエネルギーの取引は止めるに止められなかった。

マーケットの反応

 中東のエネルギーについても、同じように「実際には止めるのは無理だろう」と見ている投資家が多いということが、今回の原油価格の反応に表れていると思われます。

2020年の事例を意識した市場の見方

 今、市場参加者が前提としている中心的なシナリオというのは、2020年1月にトランプ政権がイラン革命防衛隊の司令官ソレイマニ氏を殺害したときのケースです。
 当時はイランが報復としてイラク国内のアメリカ軍基地を攻撃しましたが、それで面子を保ったという形で事態は収束しました。今回も同様に、イランが「形だけの報復」をして、ある程度で落とし所を探っていくという見方が、投資家の間では主流になっているようです。

 もちろん、今回の攻撃は2020年のそれよりも規模が大きく、イランやイスラエルの被害も深刻であるため、同列には語れないという意見もあります。ただ、もう少し規模が大きくなったとしても、完全にエスカレーションすることなく収束に向かうだろう、という見通しが多くの市場参加者の頭にあるということが、マーケットの動きに表れていると言えるでしょう。

市場はやや楽観的すぎる可能性

 ただし、私はこうしたマーケットの見方について、「やや楽観的すぎるのではないか」と感じています。
 だからといって、今すぐ株を空売りした方がいいとか、そういう話をしたいわけではありません。しかし、仮にイランによる報復が予想以上に大きな規模になった場合、市場が急激にリスクオフへと転じる可能性があるという点は無視できません。そういう意味では、多くの投資家がすでにリスクを落としていたという背景もあって、今回の下落が限定的なものにとどまったのかもしれません。

株式市場の反応

 6月23日の株式市場を見ても、先物主導で慌てて売られるような展開はほとんど見られませんでした。相場が大きく崩れる時というのは、機関投資家がリスクを一気に落とそうとするために、先物を一気に売ってくることが多いですが、今回はそうした動きは見られなかった。つまり、ボラティリティインデックス(恐怖指数)も大きくは跳ねていません。
 関税の影響などで景気の減速が見込まれていたという背景もあり、投資家は既にポジションを抑え気味にしていたとも言えます。

金融市場と実体経済

 もう1つ、今回のような地政学的リスクがマーケットに与える影響が限定的だった理由として、金融不安の方がはるかにマーケットにショックを与えるという傾向があります。
 
例えば2022年、ウクライナ戦争が始まった時には原油価格が一時120ドルを超えるなど大きく上昇しましたが、株式市場が大暴落したかというと、そうはなりませんでした。むしろ、2023年にシリコンバレー銀行が破綻した時の方がマーケットは大きく動揺しました。実際、2022年のエネルギー価格高騰で欧州経済はかなり打撃を受けましたが、金融市場へのインパクトは限定的だったという事実があります。
 金融市場と実体経済との関係は、必ずしも連動するわけではないということは、今後のマーケットを見ていく上で理解しておく必要があると思います。

慎重にリスクと向き合う必要性

 今のマーケットは、アメリカとイランの緊張が高まる中にあっても、比較的落ち着いた反応を見せています。しかしその背後には、市場のある種の楽観や、「今回も大事には至らないだろう」という前提があります。
 
もしその前提が崩れた時には、マーケットは一気に反応を強める可能性がある。だからこそ、過度なリスクテイクは避け、慎重に動くことが大切だと私は思っています。


ご参考

ブラックマンデーに株価の急落が始まると、「ポートフォリオインシュアランス」を行っている人たちがどんどん先物を売り、売りが売りを呼ぶ展開に発展しました。これが市場の変動を大きくし、マーケットを急落させる一因となりました。

ブラックマンデーの振り返り

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