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ナイジェリアの原油依存と経済そして税制改革


 この記事では、経済危機に直面していると言われているナイジェリアについて取り上げます。「アフリカの経済危機って言われても、日本には関係ないのでは」といった声もよく聞きます。確かに、ナイジェリアはアフリカでは経済大国ではあるものの、世界経済に直接的に影響を与える国かと言われればそうではないでしょう。だからこそ日本のメディアではあまり取り上げられず、世界でも忘れ去られがちな存在となっています。
 しかし、こうした国々の動きをきちんと見ていくことで、間接的な影響や世界経済の構造がより立体的に見えてくることもあると私は考えています。

急速に順位を下げた経済大国ナイジェリア

 まずナイジェリアという国の概要を簡単に振り返っておきましょう。GDPで見ると2024年時点で3,949億ドル、世界40位となっていて、2020年には世界27位だったことから考えると、近年急速に順位を下げてきていることが分かります。

ナイジェリア連邦共和国:経済概況
 人口がアフリカ第1位であり(GDP規模はアフリカ第3位(2023年))、近年ではサービス産業の成長が顕著であるなど、市場の潜在性が高い。他方、国家歳入の約7割、総輸出額の約8割を原油に依存しており、経済の多角化が課題となっている。

外務省

 人口については、2024年の国連データで2億3,267万人と世界6位、アフリカでは最多です。2014年時点では1億8,000万人程度でしたから、わずか10年でかなり増加したことになります。ただし、これだけ人口が多い中で1人あたりのGDPを見てみると、ランキングでは179位とかなり下の方に位置しており、貧困層が非常に多い国であることが分かります。若者が多く、活気のある社会ではありますが、貧困は依然として深刻な問題です。

高インフレと通貨ナイラの急落

 近年のナイジェリア経済を語る上で避けて通れないのが、高いインフレ率です。コロナ禍では一時的にデフレとなった時期もありましたが、その後はインフレが進行し、2024年12月には前年比プラス34.8%という非常に高い水準にまで達しました。足元ではやや落ち着き、2025年5月のデータでは23.0%となっていますが、それでも高インフレには変わりありません。

ナイジェリア連邦共和国:通貨
ナイラ

外務省

 その背景にあるのが、通貨ナイラの大幅な下落です。かつては1ドル=460ナイラ程度で推移していたのが、足元では1ドル=1,500ナイラ程度までナイラ安が進行。わずか2年ほどでナイラの価値は3分の1以下になり、通貨下落率で言えば約7割になります。これによって輸入物価が大きく上昇し、庶民の生活を直撃しています。GDPの国際比較で順位を落としたのも、この通貨安の影響が大きいと見られています。

原油依存経済とガソリン価格の高騰

 ナイジェリア経済の中心にあるのが原油です。産油量ではアフリカ最大であり、世界でも10位前後を維持してきました。現在ではその比率は下がってきているものの、かつてはGDPの約4割が石油産業だったとされており、輸出においては今でも9割が原油と天然ガスに依存しています。

 元々イギリスの植民地だったナイジェリアは1960年に独立しましたが、1966年から1993年までに7回のクーデターがあり、何度も内戦が起こりました。1990年代は軍事政権が統治していた期間も長く、こうした政治的な混乱によって経済どころではなかったと言えます。石油プラントが破壊されることも何度も起こりました。

ナイジェリア経済の現状と食糧危機

 しかし、産油国であるにもかかわらず、国内のガソリン価格は2023年以降3倍以上に跳ね上がっているという逆説的な現象が起きています。これは、ナイジェリア国内で製油所が十分に機能していないことが原因です。

 資源はあるのに加工できない。

 つまり、原油を輸出している一方で、加工されたガソリンなどの二次製品は輸入に頼らざるを得ない状況となっているのです。
 政府はこれまで補助金を出してガソリン価格を抑えていましたが、2023年に就任したティヌブ大統領がこれを停止。その結果、ガソリン価格は一気に上昇しました。製油所が動かない理由としては、治安悪化による稼働停止や、資金不足による設備のメンテナンス不良、あるいは破壊行為などが挙げられており、これは開発途上国によく見られる構造的問題でもあります。

投資不足と治安の悪化による原油生産の停滞

 原油に関しては、生産そのものにも問題があります。ナイジェリアはOPECで割り当てられた生産目標を長らく達成できていません。その原因もやはり治安の悪化や投資不足。パイプラインが破壊されたり、原油が盗難にあったりといった問題が慢性的に続いており、資源を有効に活用できていない状況です。
 こうした状況が外貨不足や電力不足にもつながり、結果として通貨安やインフレという悪循環を引き起こしています。

ティヌブ政権による税制改革の実施

 こうした構造的課題に取り組むべく、ティヌブ大統領は2023年に就任し、国内外からの投資を呼び込むための規制緩和や予算改革、発電能力の強化、食料安全保障の向上といった政策を掲げてきました。前政権が行っていた保護主義的政策や為替介入を転換し、ガソリン補助金をカット、為替の自由化を行い、通貨ナイラの急落という痛みを伴う改革を進めています。

VATとは、日本の消費税のようなもので、EUやアジアなどの国で、物やサービスの購買時に課せられる間接税のこと。Value Added Taxの頭文字の略。付加価値税ともいう。

JTB総合研究所

 そして今回、2025年6月には新たな税制改革も実施されました。主な内容としては、低所得者層に対して付加価値税(VAT)を免除し、代わりに高級品に対してVATを引き上げるという、いわゆる「低所得者減税・高所得者増税」の方向に舵を切っています。このほか、税の種類を減らして分かりやすくしたり、中小企業にも配慮した設計になっているとされています。

 世界では、こうした問題に対応するため、「給付付き税額控除(negative VAT)」などの制度改革も進められています。

消費税と輸出免税と還付金

税制改革の成功の鍵と今後の見通し

 この改革については、ナイジェリア国内でも「実際に自分が払う税金がどうなるか分からない」といった声もありますが、報道を見る限り、比較的ポジティブに受け止められているようです。
 貧困問題が深刻なナイジェリアで、低所得者を重視した政策が打ち出されたことは評価できる動きですが、懸念もあります。たとえば富裕層への増税が進めば、富裕層が国外に流出し、結果的に税収が下がってしまう、イギリスで実際に起きたような現象が再現される可能性もあるからです。

世界で最も富裕層が流出する国である中国の1万2千人に次ぐ、世界で2番目に大きな規模です。

労働党政権の政策とイギリスの富裕層の流出

 今回の税制改革によって国民の暮らしが本当に良くなるのか、そしてそれを国民自身が実感できるかどうかが、今後のナイジェリア経済にとって大きなポイントになってくるでしょう。
 アフリカの経済は軽視されがちですが、こうした国の構造変化を丁寧に見ていくことが、世界経済を読み解くヒントになるかもしれません。今後も注目していきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。


ご参考

まだまだ問題は山積していますが、ソマリアという国が新たな道を模索していることは間違いありません。

メディアが報じないソマリアの建設ラッシュ

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