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ニュージーランド経済の基礎と回復への道


 この記事ではニュージーランド経済の最新の状況についてアップデートします。ニュージーランドといえば、留学やワーキングホリデーで訪れる日本人も多く、私たちにとっても馴染みのある国のひとつです。
 そのニュージーランド経済が足元ではどうなっているのか。ニュージーランド経済の基礎的な構造についても触れながら解説したいと思います。

GDP成長率の推移と回復の兆し

 まずはGDP成長率の推移を簡単に振り返っておきましょう。2024年第2四半期は前期比でマイナス1.0%、第3四半期も同じくマイナス1.0%と、2四半期連続のマイナス成長となり、テクニカルリセッションに陥りました。第4四半期にはプラス0.6%と回復を見せましたが、年間ではマイナス0.5%のマイナス成長という結果になっています。

 その後どうなったかというと、2025年第1四半期のデータが6月19日に公表され、前期比でプラス0.8%となりました。これは前四半期を上回る伸びで、市場予想のプラス0.7%も上回る結果となっています。

好調の要因

 好調の要因としては、個人消費の回復が挙げられます。個人消費は前期比プラス1.3%と全体を牽引し、特に外食がプラス7.0%、娯楽がプラス5.2%と、顕著な伸びを見せました。民間消費が持ち直しつつあるという状況が確認された形です。輸出は前期比プラス0.1%と、前四半期のプラス3.4%からは伸びが鈍化しています。

ニュージーランドの輸出構造と貿易相手

 ニュージーランドといえば農業国家というイメージを持っている方も多いと思います。実際、人口は500万人強ですが、羊はその5倍、乳牛も人間より多いとされています。かつてはイギリスへの食肉・乳製品の輸出が主力でしたが、1973年にイギリスがEC(現EU)に加盟したことで、食料品をEU域内から調達するようになり、ニュージーランドは脱・イギリス依存を迫られました。
 
現在は中国、オーストラリア、アメリカ、日本などが主要な貿易相手国となっています。

ニュージーランド(New Zealand):主要貿易相手国
(1)ニュージーランドからの輸出
中国(27%)、豪州(13%)、米国(12%)、日本(6%)
(2)ニュージーランドへの輸入
中国(23%)、豪州(11%)、米国(10%)、韓国(6%)、日本(6%)
(2023年1月~12月、ニュージーランド統計局、金額ベース)

外務省

 なお、ニュージーランド経済の特徴として、貿易収支・経常収支ともに慢性的な赤字であり、農業以外に主力産業が少ないため輸入が多くなりがちです。

政策金利の推移と景気への影響

 その結果、通貨には下落圧力がかかりやすく、こうした状況を受けて他国よりも高めの政策金利を好む傾向があります。現在のニュージーランドの政策金利は3.25%で、オーストラリア(3.85%)やアメリカ(4.25%)よりも低い水準にあります。これは、最近のニュージーランド経済の不調を反映した結果と考えられます。

 リセッションの背景には、政策金利の高さと中国経済の低迷という二つの要因がありました。世界的なインフレの高まりのなかで、ニュージーランドでも2022年には前年比7.3%の物価上昇率を記録しました。インフレを抑えるため、政策金利はアメリカと同等の5.5%まで引き上げられ、一時はオーストラリアをも上回る水準となっていました。

出所)Bloomberg

 ニュージーランドは経常赤字国であるため、他国が利上げをする中で金利を低く維持すると資金流出が起こりやすくなります。そのため、比較的高めの金利政策を取る必要があるのですが、それが結果として国内景気の冷え込みにつながった形です。

中国経済と下押し圧力

 もう一つの要因が中国経済の低迷です。ニュージーランドの輸出の約3割が中国向けであり、中国経済の動向に対して非常に敏感になっています。2020年以降、中国では不動産バブルが崩壊し、経済成長が鈍化しています。こうした流れの中で、ニュージーランドの輸出も下押し圧力を受けてきました。
 ただし、足元では中国経済もだらだらと低迷はしているものの、急激に悪化するような状況ではなくなってきており、こうした下押し圧力が徐々に和らいできたというのが現状です。

関税の影響

 アメリカが導入を検討している相互関税については、ニュージーランドのアメリカ向け輸出は全体の10%弱、GDP比でも1%程度ですので、そこまで大きな影響は見込まれていません。それよりも中国向け輸出の方がはるかに大きいため、米中関係の影響を受けるのは間接的に中国経済経由で、ということになるでしょう。

人口動態の変化と生活実感とのギャップ

 2024年にはニュージーランドから国外に移住する人が過去最多の12万8,000人に達しました。そのうち7万人以上がニュージーランド国籍で、つまり「本国の人たちが出て行ってしまっている」ということになります。移民が入ってきているため人口全体は減っていないものの、自国民の流出が加速しているのは景気や雇用などの面での不安感の表れでもあります。

12万7,800人の出国者は、ニュージーランドの人口約500万人に対して2%を超える規模になります。日本に例えると約240万人に相当し、名古屋市の人口と同じくらいの規模です。

ニュージーランドの出国者増加と経済低迷の原因

 こうしたトレンドを反転させるには、経済の回復が実体経済にまで浸透し、人々が「良くなった」と実感できるところまで進まないといけません。回復傾向が見え始めた今も、この傾向が反転するにはもう少し時間がかかるかもしれません。

マクロと個人の判断

 経済について厳しい話をすると、「そこまで厳しいなら行かない方がいいでしょうか」という質問をいただくこともあります。ただ、私はそうは思いません。マクロ経済というのは500万人以上の人々が暮らす国全体の話であって、地域や分野ごとに事情は大きく異なります。農業や観光、都市と地方、あるいは教育機関など、各セクターごとに見れば状況は様々です。

参考情報としてのマクロ経済の動向

 実際に現地で暮らしている人にとっては、自分の住んでいる地域や業界、職場の状況が最も現実的な経済の指標であり、それがマクロデータと一致するとは限りません。今自分が挑戦したいこと、やりたいことがある場合には、マクロ経済の動向を「参考情報」として知っておくにとどめ、諦める理由にはしない方が良いと私は思っています。

総括

 リセッションから数ヶ月が経ったニュージーランド経済の足元の状況について解説しました。数字上は最悪期を脱しつつあり、個人消費の回復などから見ても回復への足取りは確かに始まっています。ただし、本格的な回復はこれからであり、政策の持続性や外的要因、特に中国経済の影響を見極める必要があるでしょう。
 今後もこうしたマクロ経済の動向をウォッチしながら、より具体的な判断材料として活用していただければ幸いです。引き続きよろしくお願いいたします。


ご参考

挑戦する勇気を
 完璧な英語力を身につけてからでないと海外で通用しないと思うかもしれませんが、行動しなければいつまでも海外に出ることができません。もちろん、努力を怠らず準備することは必要ですが、最終的には「思い切って挑戦してみる」ことも大切ではないでしょうか。

海外で働くために必要なスキルと覚悟

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