反発してくる部下に感情を持っていかれない方法
ある日、年上の部下に発注量の話をしました。
最近うちの部門に、年上の部下が配属されました。
もともとチーフをしていた方で、社歴も年齢も私より上。
ただ、人間関係の問題で降格になり、今は私の部下という立場です。
私はこれまでも年上の部下と関わってきたので、指示を出す時は意識していることがありました。
それは、指示ではなくお願いのニュアンスで話すこと。
そして、相手の自己肯定感を下げないように言葉を選ぶことです。
たとえば、ただ
「もっとデータを確認してください」
と伝えるのではなく、
「少し時間はかかりますが、データを確認してからお願いしたいんですよ。
みんな面倒でやりたがらないんですけど、Aさんほど要領が良ければできると思うので」
そんなふうに、同じお願いでも受け取りやすい形に変えて話していました。
今回も同じように、発注量が少し多かった商品について、なるべく角が立たないように伝えたつもりでした。
「気を利かせて在庫に余裕を持って発注してくれてありがとうございます。確認してやってくれているのは伝わります。
でも、このお店だとこの2つの商品はこのくらいの発注量で大丈夫ですよ」
自分としては、かなりフォローを入れながら話したつもりでした。
でも返ってきたのは、思っていたものとまったく違う反応でした。
「私は売れると思って、良かれと思って発注したんです。
完璧を求められても困ります」
かなり高圧的で、不貞腐れたような返し方でした。
その瞬間、正直かなり引きました。
こちらは少しでも良くなればと思って伝えた。
でも相手からしたら、「指摘された」「非難された」と感じたのかもしれません。
私は普段から、仕事では建設的に、相手を尊重して話すことを意識しています。
でも、その返し方をされた瞬間、こちらも反射的に強く出てしまいました。
「別に完璧を求めて言っているわけではなくて、少しでも良くなると思って話してますよ?」
結果、少し険悪な空気になりました。
家に帰ってから、ずっと考えました。
最初の伝え方がまずかったのか。
相手に言われた後の反応がまずかったのか。
返事の仕方を変えるべきだったのか。
そして心理学の知識を読み直していく中で、ひとつ見えてきたことがありました。
問題は、相手を変えられなかったことではなく、相手の反応に自分の感情を持っていかれたことだった
ということです。
こちらが丁寧に言っても、反発する人はいる
ここは最初に書いておきたいです。
職場では、こちらがいくら建設的に話しても、相手がそれを
「指摘された」
「否定された」
「責められた」
と受け取ることがあります。
特に、もともとプライドが高い人。
過去の人間関係で傷ついている人。
自分のやり方へのこだわりが強い人。
こういう相手は、内容そのものよりも、自分の自由や自尊心が脅かされたかどうかに反応しやすいです。
心理学では、こうした「自由を脅かされた」と感じた時に反発したくなる反応を、
心理的リアクタンスと考えます。
人は、自分の選択ややり方を外から制限されたと感じると、反論したり、攻撃的になったり、逆の方向に動きたくなったりしやすいことが示されています。
つまり、こちらの言い方が多少ていねいでも、相手が「自由を奪われた」と感じれば反発は起きる。
これは、現場ではかなりよくあることなんだと思います。
だからまず、相手が反発した=こちらの伝え方が全部ダメだったと決めつけすぎないことが大事です。
一番危ないのは、相手の反応にこちらも飲み込まれること
今回、自分が一番反省したのはここでした。
相手の高圧的な返し方を受けた瞬間、
私は「伝え方を工夫してるのに、なんでそんな返し方なんだ」と思いました。
そして、その怒りや悔しさに引っ張られて、いつもより強く返してしまった。
でも、あとから振り返ってみると、
その瞬間に私は仕事の主導権を相手に渡していたんだと思います。
高圧的な相手って、感情の熱量でこちらを揺らしてきます。
でも、本当に怖いのは相手の態度そのものではなく、その態度にこちらの感情まで持っていかれることです。
こちらまで熱くなると、会話は仕事の話ではなく、感情のぶつかり合いになります。
そうなると、正しさはあっても前に進まない。
むしろ余計にこじれる。
だから、こういう相手に必要なのは、
うまい言い方を覚えることだけではなく、
相手の反応に自分の感情を持っていかれない技術なんだと感じました。
人の怒りは、ずっと同じ強さでは続かない
ここで知っておきたいのが、怒りの波は永遠には続かないということです。
感情が高ぶった瞬間、人は反射的に強く返したくなります。
でもその瞬間にすぐ反応するほど、会話は悪化しやすい。
怒りに巻き込まれた時は、まず数秒止まるだけでもかなり違います。
「すぐ言い返したくなったら、まず5秒だけ黙る」
というやり方は、反応を遅らせて自分の衝動にブレーキをかけるシンプルな方法です。
さらに、自分の感情の波が少し落ち着くまで短い時間を置くのも有効です。
ここで役立つのが、自分を少し外から見る感覚です。
心理学では、嫌な出来事を自分の目線でそのまま抱えるのではなく、少し距離を取って捉える
自己距離化(self-distancing)
が、感情反応を弱めやすいことが示されています。
過去の嫌な経験を振り返る時でも、自分を少し引いた視点から見る人ほど、感情反応や後を引く苦しさが小さくなりやすいという研究があります。
だから、相手が強く出てきた時は、
* 今、自分はイラッとしてるな
* 今、言い返したくなってるな
* 今、相手の態度に飲まれそうだな
と、頭の中で自分を実況するだけでもいい。
それだけで、自分の感情と少し距離が取れます。
言葉にすると、感情は少し整理される
今回、家に帰ってから自分の中で起きたことを言葉にしていく中で、少しずつ頭が整理されました。
* 自分は何に傷ついたのか
* どこで熱くなったのか
* 本当はどう返したかったのか
この整理ができたことで、次にどうするかが見えてきました。
感情を言葉にすることは、気休めではありません。
心理学では、
感情を言語化すること(affect labeling)
が、感情反応を調整する助けになる可能性が繰り返し示されています。
感情にラベルをつけて言葉にすることは、少なくとも一部の研究では情動反応の低下と関連しています。
つまり、
「ムカついた」
「悔しかった」
「尊重されてない感じがした」
と自分の中で言葉にするだけでも、感情の渦にただ巻き込まれる状態から少し抜けやすくなるんです。
反発してくる相手に、感情を持っていかれないための
3つの技術
ここからが、実際に使える話です。
技術① すぐ言い返さず、5秒だけ止まる
相手が強く返してきた瞬間、こちらも正しさで返したくなります。
でも、その瞬間に返すほど会話は壊れやすい。
だから、まず5秒。
黙る。
息を吐く。
この5秒は短いけど、かなり大きいです。
衝動のまま返さないだけで、その後の空気が変わります。
技術② 自分を実況する
相手の態度に飲まれそうな時は、心の中で実況します。
* 今、ムカついてる
* 今、悔しい
* 今、言い返したい
これだけで、自分の感情をそのまま行動に直結させずに済みます。
感情をゼロにする必要はない。
ただ、感情の中に埋もれすぎないことが大事です。
技術③ 相手の態度と、自分の役割を分ける
相手が不機嫌だった。
それは相手の課題。
自分は、部門を良くするために必要なことを伝えた。
それは自分の役割。
この2つを分けて考えるだけで、かなり楽になります。
相手の高圧的な反応まで全部、自分の責任にしない。
ここを切り分けないと、こちらが先に消耗します。
伝え方を工夫しても、全部は防げない
ここも大事です。
もちろん、伝え方の工夫は必要です。
お願いのニュアンスで話す。
相手の努力を認める。
自己肯定感を傷つけないように配慮する。
これはこれからも大事だと思っています。
でも、どれだけ工夫しても、相手が反発する時は反発します。
だから必要なのは、
伝え方の技術だけじゃなく、
反発された後に自分を保つ技術です。
この2つがそろって、はじめて現場で使えるんだと思います。
最後に
今回の出来事で、私は改めて思いました。
高圧的な相手に本当に必要なのは、
勝つことでも、言い負かすことでもない。
感情を持っていかれないことです。
こちらは仕事のために話している。
でも、相手の反発にこちらまで飲まれた瞬間、仕事の話は壊れやすくなる。
だからこそ、
* すぐ言い返さない
* 自分を実況する
* 相手の態度と自分の役割を分ける
この3つは、かなり大事です。
私もまだ練習中です。
でも少なくとも、前よりは
「相手がどう返してくるか」より
「自分がどう保つか」に意識を戻せるようになってきました。
次回は、相手が怒ったり高圧的に返してきた時、絶対に使わない方がいい言葉と、逆に通りやすくなる対処法を書きます。
高圧的な人にも自分の意見を聞いてもらえる
テンプレ8選の記事作りましまた!
仕事では言いたく無い時でも言わなくてはない
時がありますよね、
そんな時に使える、高圧的な人の心理を
言語化して、どの様な言い回しなら話を聞いてもらえる会話術のテンプレ作りました。
