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『ヒグマカルマ』の出発点になった、昨年9月2日の記録

昨年の夏、日本中が熊のニュースで溢れていた。
7月12日、北海道・福島町で起きた新聞配達員襲撃死亡事件。
その衝撃を皮切りに、全国各地で熊の出没報道が相次ぎ、列島は一気に“熊恐怖時代”へと突入した。

北海道では福島町に加え、羅臼岳での死亡事故も大きく報じられた。

僕の育ったオホーツク方面でも、走行中の車にヒグマが飛び出して衝突する事故が起き、学校の校庭に熊が現れたというニュースまで流れた。

思えば、僕が子どもの頃、鹿や熊がこれほど日常的に話題になることはなかった。
少なくとも、今のような頻度で被害報道が続く時代ではなかった。
それがいまや、熊と鹿のニュースが日々流れ続けている。

一方で、駆除すれば抗議が殺到する。
2018年の駆除をめぐる事件以降、猟友会と行政の関係にも緊張が走り、現場の担い手不足も深刻化している。

東京都でも八王子、青梅、日の出町など住宅地近くで熊出没が報じられた。

僕は思った。
これは単なる害獣問題なのか。
もっと別の何か──日本社会そのものの歪みが、熊という姿を借りて噴き出しているのではないか。

環境変化。
制度疲労。
地方の空洞化。
都市と地方の感覚断絶。
命をめぐる価値観の分断。

熊は、ただ山から降りてきただけなのか。
それとも、人間社会の綻びが姿を変えて現れたのか。

北海道・鶴居村でハンターをしている甥に、会いに行こうと思った。
現場にいる人間の目で、この問題を見たかった。

僕は北海道へ向かった。

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「虚空門GATE」監督 小路谷秀樹 Hideki Koujitani 『ヒグマカルマ』は現在も北海道・東北で取材と撮影を続けています。 もし活動を応援していただける方がいましたら、サポートいただけると制作継続の力になります。 いただいた支援は、移動費・撮影費として大切に使わせていただきます。