鹿が増えた山荘で、熊のことを思った
富士山麓の山荘にいた。昨年に比べて、鹿の姿を見かける回数が明らかに増えている。
道の脇に一頭。木立の奥に二頭。気づけばこちらを見ている。そんな場面が何度もあった。目の保養と言えばその通りで、静かな森に鹿が立つ姿は美しい。けれど、美しいだけでは済まされない違和感も残る。
今年の鹿たちは、人をそれほど警戒していないように見えた。別荘区域の中を、当然のように歩いていく。五、六頭ほどの家族連れが列をなして進んでいく姿も見た。
その時、ふと思った。
——熊はどうしているのだろう。
この別荘区域には猟師が入れない。獣にとっては、ある意味で安全地帯なのかもしれない。人間が整備した場所が、結果として野生動物の避難所になる。そんな皮肉もある。
北海道で鹿撃ちハンターをしている甥が以前、猟師のなり手は減っていると言っていた。高齢化も進み、山に入る人は年々少なくなっているらしい。
鹿が増える。人は減る。境界線が少しずつ動いていく。
帰宅すると、山荘の管理事務所からFAXが届いていた。
熊出没注意。
やはり、と思った。
山の側では、もう変化が始まっているのだろう。
【2025年7月16日の制作日記より】
▼このテーマに関連する記事
いいなと思ったら応援しよう!
『ヒグマカルマ』は現在も北海道・東北で取材と撮影を続けています。
もし活動を応援していただける方がいましたら、サポートいただけると制作継続の力になります。
いただいた支援は、移動費・撮影費として大切に使わせていただきます。