リハビリ継続中――坂道の景色が変わってきた
マンションを出ると、すぐに緩やかな坂道がある。
今はそこを鉄アレイを2本入れたリュックを背負って、六往復。昨日からは、午前と午後、一日二回にリハビリを増やした。
歩く速度は遅い。膝の痛みはそれほどでもないが、右のふくらはぎや太ももの付け根に痛みが走る。リハビリ開始の頃は二往復目には、立ち止まっていたが――
理学療法士から筋肉のほぐし方を教わり、それを実践すると、驚くほど痛みは軽減した。
さらに毎朝の日課として、筋肉を電動マッサージ器&手揉みでほぐし、足裏はグリグリ棒で反射区を刺激している。
足裏反射区の効果については、医学的にはまだ十分に証明されていないのかもしれない。
それでも、僕の身体は確かに反応している。
朝の目覚めが驚くほどくっきりした。頭の中を覆っていた晴れないモヤが、スーッと晴れていく感覚がある。
理屈は分からない。しかし、身体が実感している以上、それは僕にとって紛れもない事実だ。
そして、不思議なことが起きた。
リハビリを始める前は、何でもない日常の坂道だった風景が、少しずつ違って見え始めたのである。
マンションを出入りする住民たち。
一階のオフィスで働く若者たち。
炎天下の中、黙々と樹木の剪定を行なっている逞しき若者。昼休みに坂を下ってくる建設関係の若者たちがヘルメットを小脇に抱え、まだ汗の乾ききらない顔で、笑いながら上がってくる。その中にいる一際背の高い黒人の青年。彼には笑顔はない。どこか孤立感を漂わせて、映画「タクシー・ドライバー」の主人公のトラビスを連想させる風情。建設関係者の中には、お湯を入れたばかりのカップラーメンを片手にもちながら坂道を登ってくる若者もいて、僕は追い越された。
この坂道は、圧倒的に若者が多い。
僕は、どんどん追い抜かれていく。
思わず比較している自分。若者に追い抜かれても、僕は決して泰然自若というわけではない。
悔しさは湧かない。
ただ、不思議と自分の人生を振り返るような、静かな内省に入っている。
そんな中、ときどき僕と同じくらいの速度で歩く若者が現れる。
その姿を見つけると、何故かホッとする。
一方、足早に坂を上っていく若者たちに次々と越されていくと、妙に孤独感が増してくる。
今日は、一人だけ足取りの重い若者がいた。
「もしかしたら追い抜けるかもしれない。」
僕は少しだけ歩幅を広げた。
距離は縮まる。
これは、いけるかもしれない。
……しかし、かなわなかった。
そのとき、雨が降り始めた。
今日は六往復の予定だったが、一往復減らして五往復でリハビリを終えた。
それでも、この坂道はもう以前と同じ坂道ではない。
身体が少しずつ回復すると、この坂道の色彩まで変わって見えてくる。輪郭も濃く、立体的になっていく――
その変化を一歩一歩、自分の足で確かめている。リハビリは苦ではない。追い越されても。
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