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【AI推進】CAXOとして考えるAIネイティブな会社への道筋「人とAI "社員"が協働する会社」のつくり方

 こんにちは!MOON-X 共同創業者・取締役 副社長のMasaです。 いつもMOON-Xのnoteを読んでいただき、ありがとうございます。

前回の記事では、全社AXプロジェクト「Project MAX」の始動と、最初の一歩としてのAIワークショップについてお話ししました。あれから3ヶ月、プロジェクトは着実に前進し、私自身も7月にCAXO(Chief AI Transformation Officer)に就任し、AX(AI Transformation)を経営の中心テーマとして推進する立場になりました。

今回は、Project MAXのその後の進捗と、その先に見据えている「AIネイティブな会社」への道筋、つまりMOON-XがこれからのAXで何をやろうとしているのかについてお話しします。

▼これまでのProject MAXに関するnoteはこちら

◼️ AI トランスフォーメーション(=AX)とは?
AIを企業の中心に据えることで、単なる業務の効率化にとどまらず、ビジネスモデルや組織そのものを抜本的に変革し、新たな価値を創造することです。

◼️「AIネイティブな会社」とは?
このAXが行き着く先として、AIが大前提として構築された企業のことです。AIが事業戦略、組織文化、日々の意思決定に深く組み込まれており、人とAIが当たり前に協働し、進化し続ける組織を指します。

CAXO Masa
大学卒業後、様々なネット・モバイルサービスの開発に従事。その後、楽天にてAd Tech・Big Data系プロダクトの責任者を経て、シンガポール・インドに100名規模の開発体制を構築。2019年にMOON-X株式会社を共同創業し、取締役CTOとして技術・システム基盤のゼロイチを牽引。その後、共創型M&Aの拡大、グローバル事業の立ち上げを担当。現在は取締役副社長CAXOとして全社AI推進を牽引。好きなVALUEはスピード狂。


1. スタート地点に立つまでの90日

Project MAXワークショップ風景

全社AXプロジェクト「Project MAX」の出発点は、AIを最大限活用したいという現場の熱量と、企業として守るべきセキュリティやコンプライアンスとの間で生じるジレンマでした。

この状況を打破し、管理部門と現場が一体となって最適な環境を創り上げるためには、迅速に経営判断を下せる体制が不可欠です。そこで、CTOの保田と共にスピード感をもって推進すべく、経営直下で立ち上げたのが「Project MAX」です。

そして、前回の記事でお伝えした「攻めと守りの共創」のもと、この90日間で以下の環境整備を完了させました。これによっていよいよ、本格的な「AI推進の攻め」に転じるためのスタートラインに立つことができたのです。

こうした背景から、この「攻め」を全社一丸となって強力に推し進める実行部隊として、部門の壁を越えて横串でAI活用を支援する専門組織「AX & Productivity CoE」を新たに立ち上げました。

・規定・ルールの策定
法務・情報システム部門と一体になって利用規定を整備し、利用可能なツールの検証と決定を「NoからGoへ」の考え方で推進

統制環境の構築
CASB/SASE/SIEMといったセキュリティIT基盤によって利用状況を可視化し、事故を未然に防ぐ環境を整備。無許可ツールや個人アカウントでの業務利用はブロック

リテラシーと権限の連動
希望社員を対象とした社内テストを作成し、特定のツールについては基準点以上の合格をアカウント付与の条件に

サポート体制
「使いたいが使い方がわからない」を放置しないため、エンジニアをサポーターとして巻き込んだ全社向けワークショップを毎月開催

安全にAIを活用できる環境、リテラシーの向上とマインドの醸成、そしてサポート体制。この3点セットが揃って、やっとスタート地点です。

ここを強調するのには理由があります。いまや「AIを導入したか」自体は特別なことではありませんし、導入するだけなら簡単です。「AIエージェントを作って業務効率化」も、簡単にできてしまいます。しかし私たちが重要だと考えているのは、全社員が安心して、当たり前に、全力でAIを使いこなせる状態を組織として作れているかです。

AIを使い始めたはよいものの、あとから「それは安全ではないので停止します」「情報漏えいの疑いがあります」と言われるようでは、結局誰も使わなくなります。中途半端な推進は、むしろ活用が止まってしまうリスクを高めるのです。そうならないように、私たちは最初からこの土台づくりを本気で、最速で実行しました。

では、スタート地点に立った私たちは、どこへ向かうのか。その話をする前に、前提となる私の未来観を共有させてください。


2. 私が考える未来:「AIで人はいらなくなる」への違和感

世の中には「AIによって未来はこうなる」という言説が溢れています。その多くは「AIが人の仕事を代替し、人はいらなくなる」「とにかくAIをたくさん使った企業が勝つ」という方向を向いています。一定の真実を含んでいるかもしれませんが、AIサービス提供側のポジショントークや、話題性を狙った極端な未来予測など、そのまま鵜呑みにはできない話が多いのも事実です。

私の見立ては少し違います。私は、AIには当面、3つの前提があり続けると考えています。

① AIにはコストがかかる 
AIエージェントは理屈の上では無限に作れます。しかし、動けば動いた分だけToken費用やサーバー代がかかります。つまり企業活動という視点で見ると経済的には有限のリソースであり、「無尽蔵に働く魔法の労働力」ではありません。もちろん、人の何十倍、何百倍も速く仕事をこなしたり、人にはできないほど複雑なタスクを瞬時に終わらせたりもできます。しかし、そこには常にコストがかかっている、ということを念頭に置かなければなりません。

② AIには内的動機づけがない 
AIは、自分のキャリア目標と照らし合わせて「これを経験してできるようになりたい」「数年後にこうなっていたい」と自発的に考えて動き出すことはありません。目的を与え、コンテキストを教えなければ正しく動きませんし、成果物にフィードバックして改善の方向を決めなければ、次のアクションを有効に取れません。もちろんAI自体の進化によって、こうした人の関与は徐々に減っていくでしょう。しかし、どこまでいってもそれは「内的動機づけ」ではなく、「人の指示」または「ロジックから導き出された手順」です。

③ AIはすべてを知らない 
AIが知らないことは、まだ山のようにあります。例えば、私たちの取引先との関係、店舗の現場で起きていること、商習慣の機微。こうした情報はAIの中にはありませんし、これらをインプットし学ばせることも容易ではありません。いつかフィジカルAIがスマホくらい当たり前の存在になれば状況は変わるかもしれませんが、それでもプライバシーの問題は残り続けます。

この3つの前提から導かれる未来は、「AIが人を置き換える会社」ではなく、人とAIが得意分野を分け合って補い合い、経済合理性に基づいて協働する会社だと私は考えています。

さらに私が面白いと思っているのは、この業務を分け合うAIを、社員と同じように扱い得るという点です。AIを"社員"に見立てて、適切なAI"社員"を「採用」し(つまり適切なエージェントを構築し)、使いながら「育成」し(ハーネスの設計、スキルの改善、チューニングなど)、そして「評価・査定」をする(ROIを見て、効果が高ければさらに投資し、落ちていれば改善し、見込めなければ停止する)、といった具合です。

本来AIは感情を持たないが、「生成AI⇒AIエージェント⇒AI"社員"」とその位置付けはより発展しており、企業はAIをより明確な社内のworkforceとして認識する必要があるため、敢えて "社員” として定義付けた。

そういう意味では、これまで人事部やマネージャーが人に対して行ってきたことを、会社としてAI"社員"に対しても行う必要が出てくるのではないか。そうなると、人事・マネジメント・技術のすべてが融合するような、新しい経営の機能が必要になるのではないか、と考えています。

経営学の歴史を振り返ると、働く人はかつて「労務」として管理の対象でしたが、やがて投資し育てるべき「人的資源(Human Resource)」と捉え直され、人的資源管理(HRM)という考え方が生まれました。ヒト・モノ・カネという経営資源の筆頭に「ヒト」が据えられてきたのも、この流れの上にあります。そして20世紀末からの情報革命・IT革命によって、ここに「情報」という第4の経営資源が加わりました。

AIは、この系譜に連なる「第5の経営資源」だと私は考えています。ただし、モノ(設備)や情報(データ)のような静的な資源ではありません。ヒトと同じように「採用し、育成し、配置し、評価する」ことで初めて価値を生む、動的な資源です。

だとすれば、これからの経営に必要なのは、AIだけを切り出して統括する機能ではありません。人とAI"社員"をひとつの戦力として捉え、それぞれの得意・不得意とコストを踏まえて最適な業務配分を設計し続ける機能。人的資源管理(HRM)の次に来る、いわば「人・AI統合資源マネジメント(Human & AI Resource Management)」です。

これまで人事部や組織マネジメントが「ヒト」に対して担ってきた機能を、人とAI"社員"の両方を包含する形へ拡張していく。これが、MOON-XがCAXOという役割を置いた理由であり、私たちのAXの前提となる未来観です。

そしてもうひとつ。AIができることだけで会社の業務を成り立たせることはできません。AIは卸先企業へ出向いて営業をしてくれませんし、店舗で棚の最適化も、工場での出荷前検査もしてくれません。「AIだけでできる業務で事業を構成する」のは、事業に自ら限界を設けるのと同じです。

また逆に、AIと役割分担をすることで、人の側にも変化が起きると予想しています。AIが「作業」を代替すればするほど、相対的に「意志を持つこと」の価値は高まります。これまで「仕事」と呼んでいたものの中には、実はAIに任せるべき「作業」が多分に含まれています。AIがそれを肩代わりしてくれる未来において、人は「何をやりたいか」「なぜやるのか」という、より本質的な問いと向き合う時間が圧倒的に増えます。

AI時代に不要になるのは「人」ではなく、人がやり続けてきた、AIに任せられる「作業」。むしろ人はAIというパートナーを得ることで、より人間らしく、創造的な意思決定に集中できるようになる。だからこそ、人の仕事の価値はむしろ上がっていく。私たちはそう考えています。


3. これから創るもの:3つのレイヤーで進めるAX

この未来観を前提に、MOON-XのAXは以下の3つのレイヤーで進めていくことを考えています。冒頭でお話しした通り、私たちはまだスタートラインに立ったばかり。これらは「これから創り上げていくこと」の構想です。だからこそ、CAXOとしてこの記事に書いて宣言したいと思います。

レイヤー1:プロダクト — MOON-X Agentic Commerce

MOON-Xは「AIを活用して3年でEC運営の8割を自動化する」という目標を1年前に掲げました。この中核となるのが、EC運営業務をマルチエージェント(複数のAIが自律的に連携する仕組み)で自動化する「MOON-X Agentic Commerce」の開発です。

さらに、AI活用はECオペレーションにとどまりません。顧客の声や購買データをもとにしたインサイト生成、レビューや検索キーワードを活用した商品開発、市場・競合分析によるポートフォリオ探索やクリエイティブ制作支援まで、ブランド成長のあらゆるプロセスに広がっています。

技術的な取り組みの詳細はAI開発チームの記事に譲りますが、私たちが日々行っている業務を最も深く知っているのは、私たち自身です。自分たちの事業のためのAI基盤を、自分たちの手で創り上げていきます。

レイヤー2:全社員のAI活用 — 現場起点のDX/AX

2つ目は、職種を問わず全社員がAIを使いこなすことによる業務変革です。ただし、個人単位の業務効率化だけでは属人化してしまい、全社で見ると大きな生産性の向上は見込めません。個人の業務効率化が会社全体の仕組みに採用され、継続的に改善・進化していくサイクルを前提としています。

出発点は、一人ひとりが自分の手元業務、自分が関わる業務プロセスをAIで効率化すること。それを「社内FDE」(Forward Deployed Engineer:現場に入り込んで課題解決を行うエンジニア)が伴走して支援し、効果が確認できたものはAI開発チームと共に正式な業務ツールとしてプロダクト化する。プロダクト化されたものは、AI開発チームが開発と運用改善を継続する。このようなサイクルです。

SaaSやパッケージシステムを現場に押し付けるのではなく、現場のプロセスを磨きながら少しずつシステムに落とし込み、プロセス全体を変革していく、現場起点のDX/AXです。主役は「与えられたシステムを使う人」ではなく、「自分の業務を定義して、AIを取り入れる発想を持つ人」。この発想さえあれば、具体的なシステム化は社内FDEとAI開発チームが全力で支える体制を創っていきます。

レイヤー3:「会社のOS」の変革 — AIネイティブ企業を自ら定義する

3つ目が、最も野心的なレイヤーです。会社の構造、情報の流れ方、意思決定や人事のあり方、カルチャー。いわば「会社のOS」そのものを、AIとの協働を前提に再設計することです。

前回の記事で「AIネイティブな会社」の定義に触れましたが、その完成形の姿は、まだ世界のどこにもありません。参考にできる完璧な前例がないからこそ、他社の事例を待つのではなく、自ら探索し、自ら定義しにいく。第2章でお話しした「人・AI統合資源マネジメント」も、このレイヤーで形にしていきたいと思っています。

この3つのレイヤーのどの活動にも、冒頭にお話しした「環境整備」が欠かせません。土台が中途半端なまま始めてしまうと、後戻りが発生したり、創り上げたものが無駄になってしまったりすることも多くなります。だからこそ私たちは、90日をかけて土台から創ったのです。

AI推進を牽引するメンバー。左から順に、Ue(IT&セキュリティ部​ 部長)、Masa(CAXO)、Chappy(CTO)、 Maco(AI&データストラテジー部​ 部長)

4. おわりに:AIが「当たり前」の会社へ

インターネットの登場が新しい企業のあり方を生んだように、AIはいま、会社のつくり方そのものを変えようとしています。前回の記事でお話しした通り、私はこの変化に、いち消費者としてではなく、会社を経営する者として向き合っていきます。

そしてMOON-Xでは、AIを使いこなすことは特別なスキルではなく、全職種共通の「当たり前」になっていきます。エンジニアだけの話ではありません。営業も、マーケティングも、SCMも、コーポレートも、です。求めているのは「AIツールに詳しい人」ではなく、自分の業務を定義し、そこにAIを取り入れる発想を持てる人。その発想を支える環境は、Project MAXで整えてきましたし、これからも進化させ続けます。

「モノづくりとテクノロジーの融合」を軸に世界の人々を幸せにするブランドを創る。そのための強力なエンジンとして、人とAI"社員"が当たり前に協働する会社を、これから創り上げていきます。この探索の過程は、今後もnoteで発信していきますので、ぜひ楽しみにしていてください。

AX & Productivity CoEのメンバー

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