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【書評】からくりからくさ/梨木香歩|自然と手仕事が織りなす静かな共同生活の物語

私がこの『からくりからくさ』を手に取ったのは、この本の前に読んだ、柳宗悦氏の『手仕事の日本』がきっかけでした。

私は仕事で各地のクリエイターさんと接する機会があり、また元々その土地のものというものが好きで、柳宗悦氏の『手仕事の日本』に大変感動しました。

他にもこんな本がないかなと探し、梨木香歩さんの『からくりからくさ』に行き着きました。

「自然」「染織」「手仕事」というキーワードに惹かれる方にぴったりの小説、それが梨木香歩さんの『からくりからくさ』です。

本記事では、読後に感じた余韻や印象的な描写、心に残ったセリフなどを通して、この物語が持つ静かな魅力を紹介します。

こんな人におすすめ

  • 手仕事や工芸、自然との共生に関心がある方

  • 静かで丁寧な暮らしを描く物語を探している方

  • 「西の魔女が死んだ」など梨木作品が好きな方

この本の概要と基本情報


祖母が遺した古い家に女が四人、私たちは共同生活を始めた。糸を染め、機を織り、庭に生い茂る草が食卓にのる。静かな、けれどたしかな実感に満ちて重ねられてゆく日々。やさしく硬質な結界。だれかが孕む葛藤も、どこかでつながっている四人の思いも、すべてはこの結界と共にある。心を持つ不思議な人形「りかさん」を真ん中にして――。生命の連なりを支える絆を、深く心に伝える物語。

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本の長さ : 447ページ
出版社 : 新潮社
発売日 : 2001/12/26

梨木 香歩
1959年生れ。著書に『西の魔女が死んだ』『裏庭』『丹生都比売(におつひめ)』『エンジェル エンジェル エンジェル』『りかさん』『からくりからくさ』『家守奇譚』『村田エフェンディ滞土録』『沼地のある森を抜けて』『f植物園の巣穴』『春になったら莓を摘みに』『ぐるりのこと』『水辺にて』等がある。

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読んで学べたこと・印象に残ったポイント

  • 自然と、染織や機織りといった手仕事

  • 四人の登場人物の人生が重なり合う後半の展開

感想

4人の下宿生と一体の人形が暮らす家を中心に物語は進みます。

登場人物は、染織、機織りなどの手仕事に関わっていて、自然や手仕事を通して、人の生きることに対しての心持ちと言えるようなことが語られます。

まず、自然の描写がとても美しいです。

4人が住む古民家から見える庭に生えている植物。

山に自生する苅安。

庭先に美しい巣を張る蜘蛛。

その自然の描き方がとても素直で透き通っている印象でした。


機を織る。布を織る。
様々な色の糸を縦横に使い、一枚の布を織る。

機織りは、簡単には織れない、地道な作業。

織り上がった布には表裏があり、様々な顔を見せます。

至る所で機織りはされ、たしかにその土地に根付いている伝統はあり、脈々と伝えられてきました。

自分の気持ちや境遇、良い時も悪い時も、ただ機を織る。

そうして手仕事をつないできた歴史があるということを知ることは、少しだけ人生を豊かにしてくれると思います。


物語の途中、様々な場面で、草木から色を出していきます。

そしてその糸で紬が織られる。

名を残すのではなく、作った物で残っていく。

名は残らないけど、たしかにそれを作った誰かがいて、それは他の誰かの為に作られたもの。

手仕事が紡ぐ歴史は美しいと、改めて思います。


人が生きるということは、様々な縁という糸で織り上げられていくものなのかもしれません。

その織り上げた布は、自分は最後に見ることはできるのか。

見られず、誰かが見て「ああ、あの人はそうやって生きたのか」と思うものなのか。

そんなことをぼんやり考えました。

メモ

「どういうわけか、ゴツゴツと瘤(こぶ)だらけの古い幹の方がいい色が出るのよ」p16

「命は旅をしている。私たちの体は、たまたま命が宿をとったお旅所だ。」p46

「人は何かを探すために生まれてきたのかも」p70

「焙煎次第で、簡単に色は変わる。植物そのものは全く同じなのに。人間の集まりにも似たところがある。」p77

「女たちは機を織る。反物という一つの作品に並行して、彼女たちは自分の思いのたけも織り上げていったのです。」p95

「暗い梅雨の日。雨は止んでいるが今にも降り出しそうだ。空気は湿気を限度いっぱい抱えて、絞れば水が出るよう。」p104

「そう? 私はそこの土地で採れる作物のような、そこの土から湧いてきたような織物が好きなの。取り立てて、作り手が自分を主張することのない、その土地の紬ってことでくくられてしまう、でも、見る人が見れば、ああ、これはだれだれの作品、っていうようにわかってしまう、出そうとしなくても、どうしても出てしまう個性、みたいなのが好きなの。自分を、はなっから念頭にいれず、それでもどうしてもこぼれ落ちる、個性のようなものが、私には尊い」p143

知らなかった言葉

侘助椿(わびすけつばき)
侘助椿(わびすけつばき)は、ツバキの一品種で、一重咲きで半開の花を咲かせるのが特徴。

三和土(たたき)
三和土(たたき)は、「敲き土(たたきつち)」の略で、赤土・砂利などに消石灰とにがりを混ぜて練り、塗って敲き固めた素材。3種類の材料を混ぜ合わせることから「三和土」と書く。叩き漆喰とも呼ばれる。土間の床に使われる。

披瀝(ひれき)
心の中の考えをつつみかくさず、打ち明けること。

緞帳(どんちょう)
厚手の生地で作られた模様入りの布で、舞台と客席を仕切る幕のこと。

御旅所(おたびしょ)
御旅所(おたびしょ)とは、神社の祭礼で神輿が仮にとどまる場所、または神幸の目的地を指します。別名「旅の宮」「仮宮」「御旅宮(おたびのみや)」などとも呼ばれる。

述懐(じゅっかい)
考えている事や思い出を述べること。その述べた内容。

草いきれ
夏、強い日光に照らされて、草の茂みから生ずる、むっとした熱気。

蓬生(よもぎう)
ヨモギが一面に生え茂って荒れ果てている所。

藍建て(あいだて)
藍を発酵させて染められる液の状態にすることを「藍を建てる」という。

ぜんまい紬(つむぎ)
山菜のぜんまいの綿を緯糸に織り込んだ紬のこと。 素朴で趣きのある雰囲気が着物愛好家に人気。

菜種梅雨(なたねづゆ)
冬から春の菜の花が咲くころの長雨は「菜種梅雨(なたねづゆ)」、春から夏の梅の実がなるころは「梅雨」、夏から秋は「秋霖(しゅうりん)」、そして秋から冬は「さざんか梅雨」とよばれている。

たとう紙
たとう紙とは、着物を収納する時に使う専用の包み紙です。 元々は貴族のような上流階級の人々が着物を贈り合う際に、プレゼントに包装紙を付けるような意味合いで紙に包んでいたことが由来とされます。

宿世の縁(すくせのえん)
宿世の縁とは、前世からの因縁や宿命、定まった運命や関係などを意味します。仏教用語で、類義語には「因縁(いんねん)」や「契り(ちぎり)」などがある。

柴折戸(しおりど)
折った木の枝や竹を並べて作った簡単な開き戸。庭の出入り口などに設けられる。

清冽(せいれつ)
水が清く澄んで冷たいこと。

普請(ふしん)
土木・建築の工事。

悋気(りんき)
男女間の事で(主に女が)焼くやきもち。




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