見出し画像

無精子症と診断されたら?妊娠へのステップと必要な検査【泌尿器科専門医が解説】

まず結論から!
・無精子症と診断されたら、複数回の精液検査を受けて診断を確定
・詳細な問診、ホルモン・染色体・AZF採血、超音波検査を施行
・非閉塞性無精子症 vs 閉塞性無精子症に分類することが大切
・非閉塞無精子性で精索静脈瘤があれば先に治療をする
・TESEで精子が回収できたら、顕微授精を行い妊娠を目指す


泌尿器科専門医のたま先生です。
大学病院と体外受精クリニックで男性不妊の診療を行っています。
男性不妊関連手術は昨年250件ほど執刀しました。

本日のテーマは無精子症。健康な人でも100人に1人は無精子症、精液中に精子が1つもありません。当然、治療をしなければ自然妊娠の可能性はゼロです。

しかし、現代の医療では精索静脈瘤の治療・TESE-ICSIなどによって、妊娠までたどり着ける可能性があります。妊娠に向けての検査のステップを解説します。



1.精液検査を2回以上する

1度だけの検査では、「検査が正確でなかった」「その日だけコンディションが悪かった」可能性があります。精子が1つでもあるかどうかは、大きな違い。最低でも2回は精液検査を行う必要があります。

不妊治療が専門でない病院では、機械での判定のみ行なっているところが多いです。専門の医療機関で液体を遠心分離して顕微鏡で見ると、わずかに見つかることもあります。ですので、不妊治療を専門にしている病院での検査を推奨します。

2.これまでの病気をチェック

精子が悪くなる原因として、停留精巣・ムンプス精巣炎・がん治療後などがあります。背景にある病気によって、精子を回収する手術=TESEの成功率が違ってくるので確認が大切です。

3.投与中の薬をチェック

精子を悪くする薬として、脱毛症の薬であるフィナステリド・デュタステリド、筋肉増強剤としての蛋白同化ステロイド、抗がん剤などがあります。少しでも治療成績を上げるためにも、確認が大切です。

4.ホルモン採血

主にFSH, LH, テストステロンという項目を見ます。主にFSHの値が、後述する非閉塞性無精子症 vs 閉塞性無精子症の診断に関わります。また、TESEを施行した後に、テストステロン=男性ホルモンが低下して補充が必要になるかどうかの推測もできます。

5.超音波検査

精巣の大きさが非閉塞性無精子症 vs 閉塞性無精子症の診断に関わります。また、精巣周囲の血管拡張である精索静脈瘤があった場合、非閉塞性無精子ように対するmicro TESEに先立って手術を行うことで、射出精液中に精子が出現する可能性があります。また、TESEでの精子回収率を高めるという報告もあります。
無精子症の患者さんでは、精巣腫瘍=癌が発生していることが通常の方より多く、腫瘍を見逃さないことも重要です。

6.染色体・AZF検査

染色体は通常男性はXY、女性はXXですが、無精子症の約10%の方がXXYのクラインフェルター症候群です。精子回収率は比較的高いのですが、TESE後にテストステロンが低下しやすく、補充が必要なケースが多いため注意が必要です。
AZFは男性の特徴であるY染色体上にある、生殖に関わる遺伝子です。もし、AZFa AZFb AZFb +cに欠失がある場合には、TESEを行なっても精子を回収できる確率がゼロです。
一方、AZFcの欠失ですと精子回収できる可能性は、通常の方よりやや高いのですが、受精卵の培養成績が悪いことが多いです。また、男児が生まれた際には、AZFc欠失が受け継がれ、お子さんも無精子症・乏精子症となってしまうのが特徴です。
これらの検査はTESEの治療成績を改善する検査ではないのですが、治療方針を決める上で非常に重要なのでスキップできないパートです。(高額な検査であるため自費診療の時代には、なぜ行わなければならないか、という質問が多かったです。)

7.上記の結果を踏まえて非閉塞性無精子症 vs 閉塞性無精子症に分類する

超音波・ホルモンを基に無精子症を分類します。

精子の工場である精巣は問題ないけれど、通り道が塞がっているのが閉塞性無精子症。精巣容積・ホルモンが正常なことが特徴です。一方、精子の工場自体が悪いのが非閉塞性無精子症・この場合は精巣が小さく、FSHが上昇していることが多いです。

8.精子を回収する手術=TESE

閉塞性無精子症であれば、精巣を小さく切開するsimpe TESEを行えば、99%の可能性で精子を回収できます。また、塞がった通り道を作り直す精路再建という選択肢もあります。

非閉塞性無精子症の方が重症で、顕微鏡も用いて行うmicro TESEを行なっても精子回収できる可能性は30-40%程度(背景にある疾患によって異なる)です。

TESEについての詳細は下の記事を読んでください。

以下の記事ではmicro TESEに関して、私自身の細かい「こだわり」について書いています。


9.顕微授精

女性の体から卵子を取り出し、体外で精子と受精させます。授精卵ができたら、女性の体に移植します。

まとめ

・無精子症と診断されたら、複数回の精液検査を受けて診断を確定
・詳細な問診、ホルモン・染色体・AZF採血、超音波検査を施行
・非閉塞性無精子症 vs 閉塞性無精子症に分類することが大切
・非閉塞無精子性で精索静脈瘤があれば先に治療をする
・TESEで精子が回収できたら、顕微授精を行い妊娠を目指す


今回の記事は、いかがでしたでしょう?
少しでもいいな、参考になると思ったら、いいね・拡散お願いします。
次回は無精子症の治療=TESEについて、解説します。

Xの方もよろしくお願いします!
(2026/1現在 Xのフォローワーは6000人 https://x.com/male_repro


いいなと思ったら応援しよう!