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無精子症の精巣内精子回収術(TESE)の回収率と費用、手術の流れ、術後【泌尿器科専門医が解説】

まず結論!

・閉塞性無精子症
 →simple TESE(テセ) 
  回収率99% 日帰り・局所麻酔 保険適用で6-7万円程度
・非閉塞性無精子症
 →micro TESE (テセ)
  回収率30-40% 日帰り・局所麻酔 保険適用で10万円程度
・精巣の状態を改善する生活習慣を心がける
・精子が回収できたら顕微授精
・精子が回収できなかったら
a. Johnsen score1-2 養子縁組・第三者精子提供
b. Johnsen score8-10 再手術またはsalvage micro TESE
c. Johnsen score3-7 salvage micro TESE

泌尿器科専門医のたま先生です。 大学病院と体外受精(不妊治療)専門クリニックで、日々男性不妊の診療を行っています。 昨年は約250件の男性不妊手術を執刀しました。

この記事では無精子症に対する精巣内精子回収術(TESE)の詳細から術後について解説します。

この記事は、下の記事の続編です。
あわせて読むことで理解がより一層深まります。


1.閉塞性無精子症 小さい切開のsimple TESE


精子の工場である精巣自体には問題がないため、精巣を少し(1cm)切開するsimple TESEを行えば約99%の可能性で精子を回収することができます。

局所麻酔・日帰りで施行可能で、手術時間は10分程度です。保険適用で自己負担は6-7万円程度です。

術前診断が閉塞性無精子症(ホルモン・精巣容積が正常)であっても、実際手術をしてみると非閉塞性無精子症だったということが稀にあります。だから、精子回収率は100%ではありません。

精巣ではなく精巣上体にいる精子の方が成熟しているという理論の下、MESA・PESAという処置をする施設もありますが、TESEと比較した明らかな優位性はありません。

2.非閉塞性無精子症 顕微鏡下のmicro TESE


精子の工場自体に問題があるタイプのため、治療はより専門的な技術を要します。 非閉塞性無精子症には、精巣の状態によって2つのパターンがあります。

  • a. 全ての工場が機能していないパターン

  • b. ほとんどダメだが、一部の工場だけで精子が作られているパターン

micro TESEは、顕微鏡を使って精巣内を隅々まで探し、この「b」のわずかな精子を見つけ出す手術です。

動画は下を参考に。世界で初めてmicro TESEを行った、Cornell大学のDr.Schlegelのチームの動画です。

非閉塞性無精子症になった背景の病気などによって精子回収率は異なりますが、全体で約30-40%の可能性で精子を回収できます。

局所麻酔・日帰りで可能で、手術時間は30-90分程度です。保険適用で自己負担は10万円程度です。

私のmicro TESEへのこだわりは以下の記事を読んでください。

FNA mappingという前処置を行う施設もありますが、エビデンスは不十分で学会が出している診療ガイドラインにも記載はありません。

また、非閉塞性無精子症でmicro TESEの適応がある患者さんで、grade2以上の精索静脈瘤の手術を先行することを検討します。精子回収率の向上や、射出精子(出した精液に精子を認める)の出現の報告があります。

精索静脈瘤については以下の記事を読んで下さい!

3.精巣の状態を改善するための生活習慣

禁煙・節酒・BMI適正化・精巣を温めない・射精頻度を増やす・股間を圧迫しない・適度な運動・抗酸化サプリの内服など、精子改善のために有効な生活習慣があります。
劇的な効果は期待できないため、生活習慣改善にこだわってTESEを先延ばしにするほどの価値はありませんが、可能な範囲で心がけましょう。
詳しくは以下の記事をご参照ください。

4.精子が回収できたら顕微授精


女性の体に針をさして卵を採取(採卵)し、体外で精子と受精させる顕微授精を行い、受精卵ができたら、女性の体に戻して妊娠を狙います。(移植)
現在、全てのステップが保険適用となっています。

5.精子が回収できなかったら


TESE中に採取した精巣組織を顕微で細かく分析した結果が治療方針の鍵となります。(病理)Johnsen scoreで精巣の発達度合いを評価します。

a. Johnsen score1-2 養子縁組・第三者精子提供

精子の元になる細胞(生殖細胞)も認めないため、ご主人の遺伝子を残すことは難しいです。現実的な選択肢は、養子縁組・第三者精子提供となります。

b. Johnsen score8-10 再手術またはsalvage micro TESE

精子があるので精子回収ができるはずです。もしTESEで精子回収できていなかった場合は再度micro TESEを行うまたは、後述するsalvage micro TESEを考慮します。

c. Johnsen score 3-7

精子の成長が途中で止まっている状態です。精子の元になる細胞(生殖細胞)は存在するため、ホルモン療法で成長を後押ししてから、2回目の手術(salvage micro TESE)を検討します。特に「あと一歩で精子になれる」段階で止まっている(late maturation arrest)場合は、再手術の期待値が高まります。

d. ROSI(精子細胞を用いた顕微授精)

精子より未熟な細胞を用いた治療です。妊娠例が報告されているのは国内の1施設しかなく科学的根拠が強いとは言えません。通常円形精子細胞を認めれば精子を認めるため、micro TESE-ICSIに対する優位性はないと考えます。

e.再生医療

PRP(血液から血小板を凝集したもの)を投与する試みを行なっている医療機関もあります。卵巣への治療は科学的根拠がそろってきて、かなり一般的な治療となっています。現状、精巣に対しては臨床試験レベルの試みと言えます。一部の美容クリニックなどでは、男性不妊の治療としてエクソソーム投与などを行っていますが、現状推奨できる治療ではありません。

まとめ


・閉塞性無精子症
 →simple TESE(テセ) 
  回収率99% 日帰り・局所麻酔 保険適用で6-7万円程度
・非閉塞性無精子症
 →micro TESE (テセ)
  回収率30-40% 日帰り・局所麻酔 保険適用で10万円程度
・精子が回収できたら顕微授精
・精子が回収できなかったら
a. Johnsen score1-2 養子縁組・第三者精子提供
b. Johnsen score8-10 再手術またはsalvage micro TESE
c. Johnsen score3-7 salvage micro TESE


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次回は精索静脈瘤瘤について、解説します。


たま先生(泌尿器科専門医)

  • 男性不妊とメンズヘルスのスペシャリスト

  • X(旧Twitter)でも発信中:@male_repro (フォロワー6000人突破!いつもありがとうございます!)

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