「食べたもので身体はつくられる」の、その先へ。——食がめぐる「栄養の循環」について
「食べたもので身体はつくられる」
誰もが一度は聞いたことのある言葉だと思います。
管理栄養士として栄養学を学び、カロリーやタンパク質、ビタミンやミネラルを考えながら食事をしていても、以前の私はどこか満たされませんでした。
ちゃんと考えて食べているはずなのに
肌荒れは続き、疲れも取れない、朝も起きれない。
「何をどれだけ摂るか」は見ていたけど
「何を自分の身体にしていくのか」は、まだ見られていなかったのだと思います。
口にしたものは消化され、吸収され、血となり、筋肉となり、肌となり、髪となり、私たちの身体そのものになっていきます。
だから食べものは、ただお腹を満たすものではなく、未来の私を少しずつ育てている存在なんだなと思うものです。
そんなことを考えるようになってから、
日本に昔から伝わる「身土不二(しんどふじ)」という言葉が、とても好きになりました。
人は暮らす土地と切り離せないという考え方です。
その土地の水を飲み、その土地の空気を吸い、その土地の気候の中で生きている私たち。
だから、その土地、その季節に育った食べものが身体になじむのは、ごく自然なことなのかもしれません。
春には苦みのある山菜が身体を目覚めさせ、夏には水分の多い野菜が火照った身体を潤し、秋には実りがエネルギーを蓄え、冬には根菜が身体を温める。
旬とは、自然が私たちへ贈ってくれる季節の処方箋なのだと思います。
そして、もう一つ大切にしたい考え方があります。
それが「一物全体」。
できるだけ、まるごといただくという考え方です。
皮には皮の役割があり、葉には葉の役割があり、根には根の役割があります。
食べものは、栄養素の集合体ではなく、一つの命として存在しています。
だから私は、食べものを「成分」として見るだけではなく、「命」として迎え入れたいと思うようになりました。
管理栄養士の教科書では、「にんじんはにんじん」「卵は卵」と栄養価を学びます。
でも実際には、人が一人ひとり違うように、
野菜も果物も、お米も、肉も、魚も、卵も
一つとして同じものはありません。
どんな土で育ったのか
どんな微生物と共に生きてきたのか
どんな餌を食べ、どんな環境で育ったのか
その違いは、食べものの中身にも現れます。
2014年に『British Journal of Nutrition』へ掲載された343件の研究をまとめたメタアナリシスでは、有機栽培の作物は慣行栽培と比べ、ポリフェノールなどの抗酸化物質が18〜69%高い傾向があること、農薬残留も少ないことが報告されました。
もちろん、「有機だから必ず栄養価が高い」というわけではありません。
ビタミンやミネラルは、品種や土壌、天候、収穫時期による影響も大きく、一概に優劣はつけられないことも分かっています。
それでも、「育つ環境が違えば、食べものの中身も変わる」ということは、科学的にも少しずつ明らかになってきています。
植物だけではありません。
牧草を中心に育った牛は、穀物中心で育った牛に比べて、オメガ3脂肪酸や共役リノール酸(CLA)が多い傾向があります。
鶏も、食べる餌や飼育環境によって卵の脂肪酸組成やビタミンEが変化します。
養殖魚と天然魚でも、食べてきたものが違えば、脂質の組成は変わります。
これは人間も同じです。
私たちの身体は、昨日まで食べてきたものでできています。
だから私は、「どんな食べものか」だけではなく
「どんな環境で育ってきた食べものか」を知りたいと思うようになりました。
それは、有機栽培だから偉いとか
慣行栽培だから悪いという話ではありません。
農家さん一人ひとりに想いがあり、それぞれに事情や工夫があります。
ただ、「どう育てられたか」という背景もまた、
その食べものの一部なのだと思うようになりました。
土が豊かになれば、そこに集まる微生物も増えます。
微生物が植物を育て、植物が動物を育て、動物が私たちを育てる
そして私たちはまた自然へ還っていく。
栄養とは、身体の中だけで完結するものではなく、土から始まる大きな循環の一部なんだなと感じます。
だから私はバランスの良い食事とは
「何が何グラム入っているか」だけではなく、
「これは、どんな命のバトンを受け取ってきた食べものなんだろう」
そんな視点も大切にしたいと思うものです。
次に味噌汁をつくるとき、今日の身体がほしがっている具材をひとつ選んでみる。
野菜を買うとき、旬のものに手を伸ばしてみる。
そして、「身体がおいしいと言っているかな」と
ほんの少し耳を澄ませてみる。
それだけでも、食卓の景色はきっと変わります。
静かに、確かに、私たちの身体になっていきます。
皆さんは、「これは身体がちゃんと受け取ってくれているな~」
と感じるときはありますか?
今日も最後まで読んでくれてありがとう^^
はじめて読んでくださった方へ
もしこのnoteをはじめて読んでくださったなら、まずはこちらから読んでいただけたら嬉しいです。
この発信のはじまり
→ 管理栄養士の私が、栄養だけでは足りないと気づくまで
