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アオハル放課後ラボ・番外編⑧『Hungry Like the Wolf』

ChatGPTと一緒にアオハル放課後ラボの番外編を制作しました。
イラストもChatGPTに作ってもらいました。


『Hungry Like the Wolf』


朝の教室。田村先生が新聞記事の写しを抱えて入ってきた。机の間を歩きながら、一枚ずつ配っていく。

「今日の社会科レポートの題材だ。記事のタイトルは『害獣被害の対策にオオカミ導入は有効か』。来週月曜までにA4一枚以上で提出。引用は必ず明記すること」

紙を受け取った生徒たちがざわつく。慎也が新聞をのぞき込みながら口を尖らせた。

「結衣、マジでオオカミの話だぞ。なんかハードル高そうだな」

「でも、やりがいはありそうだよ。面白そう」

後ろの席から声が上がった。

「先生、前に言ってましたよね。先生の田舎の秩父に、オオカミを祀った神社があるって」

田村先生が少しだけ笑った。

「そこに引っ張られすぎないでほしいけど、参考までに話す。三峰神社だ。“お犬さま”としてオオカミを守り神にしてきた。獣除けや盗難除け、旅人の道案内。信仰の対象として地域に根づいている」

陽菜が新聞を広げ、声に出して読み上げる。

「記事によれば、令和四年度の獣害による農作物被害額は全国で約156億円。そのうちシカが約70億円、イノシシが約40億円を占めているって書いてあります」

田村先生が黒板を指で軽く叩いた。

「そうだ。シカによる樹皮剥ぎで森林が枯れる例も多いし、イノシシは畑を荒らしてサツマイモやトウモロコシが全滅することもある。さらに農村部では高齢化で見回りが減り、対策が追いつかない」

慎也が新聞を折りたたみながら言う。

「で、オオカミを戻そうって話になるのか」

「賛成派の意見はこうだ。自然界のバランスを取り戻すために、シカやイノシシを捕食する上位捕食者が必要だという。人間だけではコントロールできない。実際にヨーロッパやアメリカでは効果が出ている例もある」

「反対は?」と結衣。

「反対派はまず安全面だ。狼が人の生活圏に入ったらどうするのか。導入や管理には莫大なコストもかかる。近縁種を持ち込めば外来種問題になるし、日本の国土は狭く人口密度も高い。共存の条件が整いにくいとされている」

「うーん…やっぱり簡単じゃないんだね」と結衣が小さくため息をつく。

田村先生がまとめる。

「だからこそ、レポートで考えてほしい。賛成・反対を決め打ちするのではなく、前提条件を整理して比較すること。数字と事例を必ず確認して書くんだ」

チャイムが鳴る。先生が教卓をトントンと叩いて締める。

「続きは各自の課題に任せる。思い込みは捨てて調べろ」




休み時間。教室のざわめき。

「156億ってすごい金額だな」

「オオカミって怖いけどカッコいいよな」
そんな会話が飛び交う。

慎也が結衣の机に寄ってきて、ひそひそ声。

「結衣、これどう書く? めちゃくちゃ難しいぞ」

「まずは条件を整理してからだよ。賛成と反対、両方の根拠を見ないと」

陽菜が横から顔を出した。

「ニュースでイノシシがスーパーに出たって見たよ。現実味あるよね」

結衣がうなずく。

「うん、ただ感情的に賛成反対を言うだけじゃダメ。そこがレポートの難しいところだね」




次のチャイムが鳴り、英語の授業が始まった。

「Good morning, everyone. My name is Ravi Narayan. ラヴィでいいです。今日は環境問題に関する短いニュースを聞き取りましょう」

音声が流れ、生徒たちがプリントに書き込み、ディクテーションが進む。数分後、答え合わせが終わる。

「ここまでで予定の教材は終了です。残り時間は十分ほどあります。質問があればどうぞ」

結衣がおずおずと手を挙げた。

「あの、ラヴィ先生。社会科でオオカミ導入について調べる課題が出ました。先生の故郷のインドでオオカミの共存や野生復帰について、ご存じでしたら教えていただけませんか」

ラヴィ先生が微笑む。

「いい質問ですね。インドにもインディアンウルフがいます。乾燥地や草原に住み、人と近いところで生活するため、家畜を襲うことがあります。そのため農家との衝突が絶えません。対策としては補償制度や放牧のルール、番犬の強化があります。地域全体でルールを共有して共存を図っています」

陽菜が驚いた顔で前を見た。

「補償制度って、本当にお金が出るんですか?」

「はい。政府やNGOが家畜を守る人たちに補償金を出します。その代わり、農家は違法な駆除をしないことを約束します。こうして地域全体の合意が作られるのです」

前列の男子が言った。

「アメリカのイエローストーンは有名ですよね」

「はい。イエローストーンでは一九九五年に再導入されました。シカが減って植生が回復したと報告されています。ただし実際には他の要因もあり、狼がすべてを解決したわけではありません」

慎也が横で小声。

「結衣、なんか世界地図広がってきたな」

「うん、いい勉強になるね」

ラヴィ先生が黒板に「EU」と書く。

「ヨーロッパ連合では“共存”がキーワードです。電気柵や牧羊犬、補償制度、教育を同時に進めています。特に教育活動は重要で、人と獣の距離を正しく理解させることを目的にしています」

ラヴィ先生が少し熱を帯びて言った。

「しかし、それ以上に興味深いのは、皆さんの国の狼です。Japanese wolf。そして私はジブリが大好きです。『もののけ姫』をご存じですね」

後ろの席で小さな笑いが起きた。

「やっぱり」「ジブリだ」

ラヴィ先生は構わず続ける。

「あの映画のテーマ、私が感じるのは“動物と人間との関わりが減ったこと”です。昔は里山で獣の痕跡を毎日のように見ました。足跡、鳴き声、畑の痕。それがなくなったことで、恐怖や理想化、神話化が先に立つようになった」

結衣がそっと手を挙げた。

「先生は、映画に“解決”があったと思いますか?」

「簡単な答えはありません。サンは人間に戻らない。アシタカは森に住まない。でも橋はかかります。大切なのは“境界を無視しないこと”。互いのテリトリーを尊重し、間にある緩衝を大切にすることだと思います」

チャイムが鳴る。ラヴィ先生は手を広げた。

「時間ですね。皆さんのレポート、楽しみにしています」




放課後。科学準備室。

机の上には新聞の切り抜きとノートが散らばっている。窓から夕方の光が差し込んでいた。

慎也が椅子を回して結衣に向く。

「結衣、さっきの“関わりが減った”って、どう思う?」

「私は、本当だと思うよ。野生の痕跡を見ないから、話が極端になりやすいの。『オオカミを入れれば全部解決』とか『危ないから絶対ダメ』とか」

ノックの音。陽菜がドアを開け、顔をのぞかせた。

「おじゃま。さっきの英語、面白かったね。で、レポートどうする?」

結衣がうなずく。

「まず条件整理だよ。電気柵、農地管理、ゴミ処理、狩猟の調整。ラヴィ先生が言っていたように緩衝をどうするか。里山を緩衝地帯として整備することが出来るか。狼を入れるのは最後の選択肢だと思う」

陽菜が真剣に聞いていた。

「うちのおじいちゃん、畑の周り、昔はもっと手を入れてたって言ってた。今は人が少なくて荒れてしまうんだって」

「そうなんだよ。里山は人の手で保たれてきたの。そこを回復しないと、人と獣がぶつかっちゃう。

……それにね、日本のオオカミは明治のころに絶滅してるんだよ。狂犬病の流行や森の開発、そして人の駆除。いくつもの要因が重なって姿を消したの。

でもその当時は、まだ里山の文化がかろうじて残っていたの。人と獣の間に“緩衝地帯”があったんだよね。今はその里山すら失われつつあるから、もしオオカミを考えるなら、まず“里山をどう取り戻すか”から始めなきゃいけない。その後で外来種の導入という問題もある……」

慎也がペンを回しながら。「なるほどな」

しばし沈黙。夕陽が机を赤く染める。

慎也がぽつり。

「…で、結衣。もし本当に狼を入れるってなったら、賛成?」

結衣は少し考え、柔らかく笑った。

「条件が整えば反対はしないよ。でも今すぐは無理かな。まずは人と自然の関わりを取り戻すことが先だと思う…今回の害獣対策だけではなくて、ね」

三人は片付けを始める。

「購買まだ開いてるかな。腹減った」と慎也。

「減ってない時を見たことないよ。野生児の慎也くん」と陽菜が笑う。

「がお~」おどける慎也。

笑いながら結衣も立ち上がり、新聞を丁寧に重ねる。
廊下に出ると夕方の鈍い光。 窓ガラスに三人の姿が重なる。



アオハル放課後ラボ・番外編⑧『Hungry Like the Wolf』 ーーー 終



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