アオハル放課後ラボ・番外編⑦『Eternal Return』
ChatGPTと一緒にアオハル放課後ラボの番外編の新作を制作しました。
イラストもChatGPTに作ってもらいました。
『Eternal Return』
地学基礎の授業。スクリーンにビッグバン宇宙論の年表が映し出されている。田村先生が指し棒で図を示しながら話す。
「この宇宙は約138億年前、ビッグバンによって誕生したとされている。最初は“無”の状態から突然膨張が始まった……」
生徒たちはノートをとりながらも、どこか半信半疑の表情を浮かべている。慎也は腕を組んだまま、眉をひそめていた。
チャイムが鳴り、授業が終わると同時に教室がざわつく。結衣は教科書を閉じ、席を立ちながら隣の慎也に声をかける。
「どうしたの、なんか納得いってない顔」
「いや、だってさ。“無から宇宙ができた”って、なんか嘘っぽく聞こえるんだよ。無からエネルギーって出てくるのか?」
「……放課後、科学準備室で話そう。ちゃんと説明するから」
「おう」
放課後、科学準備室。窓からの夏の日差しが机に落ち、器具が静かに並んでいる。慎也は椅子に座り、結衣はタブレットを開いた。
「まずね、完全な“無”から宇宙が生まれたっていうのは説明を簡単にした言い方で、研究者はそんな風に単純化して考えてはいないの」
「やっぱりか」
「たとえば“量子ゆらぎ”説。真空って言葉を使うけど、実際は完全な空っぽじゃなくて、粒子と反粒子が一瞬生まれては消えてる。その小さな揺らぎが、特殊な条件で膨張を始める可能性があるって話」
「真空が実はざわついてる、ってこと?」
「そう。見た目は何もないけど、目に見えないレベルでは常にざわざわしてる。たとえばコップの水が表面は静かに見えても、中では分子が動いてるのと同じ。量子の世界ではそれがもっと極端」
慎也は「なるほどな」と頷く。
「それから、“エネルギー総和ゼロ宇宙”説。宇宙の正のエネルギーは物質や光。負のエネルギーは重力。両方合わせるとちょうどゼロになる。だから、外部からエネルギーを持ち込む必要がなくても始まれる、って考え方」
「借金と預金を同時に作って、差し引きゼロってやつか」
「そういうイメージ。ゼロからでも宇宙を作れる、っていう理屈になる」
結衣はさらに続ける。
「もう一つ、“無境界仮説”。ホーキング博士が提案したモデル。宇宙には“時間の始まり”という境界が存在しない。球体には端がないみたいに、時間も滑らかに閉じてると考える。だから“どこからエネルギーが来たか”を問う必要がなくなる」
「時間に端がないって、どういうことだ?」
「北極点や南極点はあっても、地球には“端”はないでしょ。そういう感じで“始まりの瞬間”が存在しない、っていう考え方」
「ふーん……でもそれ、直感的には変だよな」
「直感で理解するのは難しいけど、数学的には成り立つの。だから“無から生まれた”というより、“完全なゼロではない状態”から始まった、と考えられてる」
慎也は「ちょっと安心した」とつぶやき、椅子に背を預けた。
その時、ドアが開いた。
「おじゃましまーす」
入ってきたのは里奈先輩。大学生になった今も変わらない笑顔に、結衣がぱっと立ち上がる。
「里奈先輩! 夏休みに旅行に行かれたんですよね?」
「ええ。母の希望でサンクトペテルブルグのエルミタージュ美術館。建物自体が宮殿で、階段も廊下も金色の装飾がびっしり。レンブラントやダ・ヴィンチ、ピカソの絵まで展示されてて、息が詰まるほど綺麗だった」
「わあ……」
「それからボリショイ劇場。“白鳥の湖”を観たの。舞台の上でバレエ団が完璧に揃って動く姿は圧巻で、オーケストラの音も重なって本当に別世界だった。母はずっと泣いてたわ」
「お母さん可愛いですね」
里奈先輩は笑って続ける。
「父はどうしてもモスクワの宇宙飛行士記念博物館に行きたいって言ってね。宇宙服や人工衛星の実物大モデル、ソユーズのカプセルまであって、子供みたいにはしゃいでた。説明を受けながら、宇宙食を真剣に選んでたのが面白かったなぁ」
そう言って紙袋を机に置いた。
「で、お土産。慎也くんには宇宙食。結衣ちゃんには宇宙船のミニチュアとマトリョーシカ」
「ありがとうございます!」結衣は大事そうに受け取る。
「宇宙船はね、結衣ちゃんに。国際デビューも果たしたし、将来は宇宙飛行士になるかもと思って」
「ぜ、絶対無理です! 宇宙飛行士って知能も体力も、さらにコミュ力まで桁違いなんですよ。私なんて到底……」
口では否定しながらも、結衣は頬を赤らめてミニチュアを見つめていた。慎也がニヤニヤする。
里奈先輩が言葉を続ける。
「そういえば、帰りの飛行機で父から聞いたんだけど…。『ブラックホールの中に宇宙が存在する説がある』って、どういう事?そんな説あるの?」
結衣が頷いた。「はい。そういう説はあります。古くから考える人もいたし、今でも完全に否定されたわけじゃないんです」
慎也が身を乗り出す。「どういうこと? ブラックホールの中に宇宙って、どうつながるんだよ」
結衣は指で空中に円を描いた。
「ブラックホールには“事象の地平面”っていう境界があるでしょ。外からは中が見えない。で、もしその中で新しい時空が生まれていたとしたら、外の私たちからは観測できない。でも内部の住人にとっては、それが一つの宇宙になる」
「じゃあ、ビッグバンもブラックホールの中で起きたってこと?」里奈先輩が聞く。
「そう考える学者もいます。ビッグバンの“特異点”と、ブラックホールの“特異点”は数学的に似ている。だから“私たちの宇宙も、より大きな宇宙のブラックホールの内部かもしれない”って」
里奈先輩が目を丸くする。「そんなに前から考えられてたの?」
「はい。1960年代から既に似た発想がありました。最近はホログラフィック原理とか量子重力理論でも議論されています」
慎也がまた食いつく。「なあ、それだとさ、俺らの宇宙の中にもブラックホールがあるよな。その中にも宇宙があって……無限に続くってこと?」
結衣はにやりと笑った。「その通り。入れ子構造みたいに無限ループで宇宙がつながる、フラクタル宇宙って呼ぶ人もいる」
そう言いながら、机の上に置いていたマトリョーシカを手に取り、一つ開けて中から小さい人形を見せた。「これと同じ。中にさらに世界が入ってるってイメージ」
「やっぱり! じゃあ俺らが感じるデジャビュとか予知夢とかも、そのループのせいなんじゃねえの?」
結衣は笑いつつ首を振る。「科学的に証明されたわけじゃない。でも“あり得ない”とは言えない。だって科学で一番難しいのは、“存在しないこと”を証明することだから」
里奈先輩も興味深そうに身を乗り出す。「もしそうなら、ブラックホールが他の天体を吸い込むとき、そのエネルギーは内部宇宙にも影響するの?」
結衣が真剣に考える。「そこは議論が分かれます。外から見た吸い込みと、内部での影響は必ずしも一致しない。でももし対応していたら、内部宇宙では突然新しいエネルギーが現れたり、物理法則が少し揺らいだりするかもしれません」
慎也は目を輝かせて畳みかける。「じゃあブラックホール同士が合体したらどうなるんだ? 宇宙同士が合体するのか?」
「それも面白い仮説ね。別々の内部宇宙が融合するか、どちらかが吸収されるか……私たちには確認できないけど、インフレーション理論の“バブル宇宙の衝突”と似ているっていう研究者もいるわ」
「うおおお……! なんかワクワクしてきた!」
里奈先輩も笑いながらうなずいた。「本当にそう。オカルトっぽい話かと思ったら、科学の延長にあるなんて」
結衣は落ち着いた声でまとめる。「だから、こういう話はあくまで仮説。でも、もし正しかったら“無から生まれた”というより“連続する宇宙の一部”になる。そう考えると納得しやすいでしょ?」
慎也は深く息をつき、机を叩いた。「だな! だったら俺たちが夢見る未来だって、別の宇宙で実現してるかもしれない。夢を語るのは自由だ! 科学もそうやって進んできたんじゃねえか!」
その声に、結衣も里奈先輩も笑顔を浮かべる。
夕暮れの光が科学準備室を照らし、三人の興奮した声がいつまでも響いていた。
アオハル放課後ラボ・番外編⑦『Eternal Return』 ーーー 終

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