【断熱編 Season3】大工の腕と重力との戦い。断熱材「繊維系」の光と闇【ゴリラ論文】
こんにちは、はぐれゴリラです。
シーズン1の「断熱ライン」、シーズン2の「断熱工法」と、家を覆う”枠組み”の話に長々とお付き合いいただきありがとうございました。
前回はコチラ↓
基礎知識の土台がガッチリ固まったところで、今回からはいよいよ皆さんお待ちかね!壁の中に詰め込まれる主役たち、「断熱材」そのものに迫っていきます。
ハウスメーカーや工務店に行くと、営業マンは必ずこう言います。
「うちは〇〇という素晴らしい断熱材を使っているので、冬でも半袖で過ごせますよ!」と。
断熱材の世界には大きく分けて「繊維系」と「発泡プラスチック系」の2つの派閥が存在します。
そして、「どんな素材にも必ず光と闇(メリット・デメリット)がある」ということです。
今回は前編として、日本の住宅で古くから愛される「繊維系断熱材」に絞って、カタログには絶対に載っていない「施工の闇」や「家への負担」についてメスを入れていきます。
※ちなみに「羊毛(ウール)」や「炭化コルク」といった、マニアックすぎるマイナー自然派素材は、語り出すとキリがないので今回はバッサリ飛ばします!
なぜなら僕も何社も見て回る中でやはり採用しているところを見たことがないからです…笑
また、各素材の性能をわかりやすくするため、スカウターで測った「戦闘力(熱伝導率:W/m・K)」を記載しておきます。
この数値は「数字が小さいほど、熱を通さず優秀(=戦闘力が高い)」と覚えておいてください。
製品によりバラツキがあるので、あくまでも目安です。
■ 繊維系の絶対王者:「グラスウール」の光と闇
日本の木造住宅で最も使われている断熱材、それがガラスを細い繊維状にした「グラスウール」です。
【戦闘力(熱伝導率)】
約0.035〜0.038(※高性能品の場合)
【メリット】
圧倒的なコストパフォーマンス。そしてガラスなので「燃えない」、無機物だからシロアリにも「食われない」、さらに「防音性」も高い。
カタログスペックと値段だけを見れば、これ以上ないほど優秀なコスパ最強素材です。
【デメリット:施工難易度が狂気レベル】
しかし、最大の闇は「施工の難しさ」にあります。
グラスウールは、繊維の間に空気をたっぷり含むことで断熱性能を発揮します。つまり、柱と柱の間に「隙間なく、ふんわりと、絶対に押し潰さずに」入れなければなりません。
少しでも隙間があればそこから熱が逃げ、無理やり押し込めば断熱性能が落ちます。
さらに恐ろしいのが「湿気」。防湿シートの施工が甘く、壁の中で結露(水分)を吸ってしまうと、重みで下にズリ落ちてしまいます。
上部がスッカスカになり、下部にカビだらけのグラスウールが溜まっている……解体現場でよく見る「黒いグラスウールの悲劇」です。
グラスウールに関してはもっと語りたいことたくさんあるのですが長くなるのでまたの機会にします…

ネットで出てくる狂気レベルのピッタリフィット職人さんは本当に奇跡の人だと思います笑
ガチ勢の人たちはグラスウールに切り込みを入れて下地にピッタリフィットさせるみたいですが…
■ グラスウールのタフな兄弟:「ロックウール」
グラスウールと内容はほぼ一緒ですが、原料がガラスではなく「玄武岩などの鉱物(石)」から作られているのがロックウールです。
【戦闘力(熱伝導率)】:約0.038
【メリット】
グラスウールの特徴を受け継ぎつつ、石が原料なので「さらに火に強い」です。また、グラスウールより少しだけ水(湿気)を弾きやすい性質があります。耐火性や遮音性を重視する大手ハウスメーカーなどでよく採用されています。
【デメリット:やっぱり施工難易度は高い】
グラスウールより少し価格が高く、そして「重い」です。
そして結局のところ、これも繊維系である以上、グラスウールと同じく「隙間なくふんわり詰める」「防湿シートを完璧に貼る」という大工さんの技術への依存からは逃れられません。適当に詰めれば、普通に結露してズリ落ちます。
■ 貴族の断熱材:「セルロースファイバー」の光と闇
新聞紙などの古紙を細かく砕き、ホウ酸(防虫・防カビ剤)を混ぜて壁の中にパンパンに吹き込む断熱材です。自然派の工務店が好んで使います。
【戦闘力(熱伝導率)】:約0.040
【メリット】
機械で隙間なく吹き込むため気密が取りやすく、木質繊維なので「調湿作用(湿気を吸ったり吐いたりする)」があります。
なかなかに重い素材なので防音性も最強クラスです。
木質繊維とは言え、ホウ酸のおかげでゴキブリやシロアリも寄り付きません。
まさに「呼吸する家」を体現する、意識高い系の貴族の断熱材です。
【デメリット:家を押し潰す「重さ」と解体の地獄】
光が強い分、闇も深いです。最大の闇は、その「圧倒的な重さ」。
グラスウールが「羽毛布団」だとすれば、セルロースファイバーは「砂袋」です。
長期間の振動や自重で、数十年後には壁の中で「沈み込み(上部に隙間ができる現象)」が発生するリスクと常に隣り合わせです。
これを防ぐために、施工時はこれでもか!というくらいパンッパンに吹き込む必要があります。
そして意識高い系の工務店などで見るため、断熱性能が優れているように感じるかもしれませんが、実は「グラスウールよりちょっと悪いかも?」くらいの性能です。
もし本気で高断熱を取りに行くなら、さらに増量して自重を増やすしかありません。
さらにもうひとつ。
将来リフォームなどで壁を壊すことになった時が「地獄」です。
壁のボードを剥がした瞬間、パンパンに詰まった大量の粉状の紙くずがドバーッと滝のように溢れ出し、家じゅうがホコリまみれになります。
リフォーム業者が嫌がる断熱材の一つです。
もしかしたらリフォームや解体の費用が追加で必要になるかもしれません。
■ まとめ:繊維系は「技と重力」との戦い
いかがでしたか?
安くて高性能だけど、大工さんの腕次第でダメになるかもしれない「グラスウール」と「ロックウール」。
自然派で調湿機能も多少あるけど、重くて将来のリフォームが地獄な「セルロースファイバー」。
繊維系断熱材は、空気を抱え込む性質上、どうしても「施工者の技術(隙間と防湿)」と「重力(ズリ落ち、沈み込み)」という物理法則との戦いになります。
だからこそ、「その素材の弱点を、どうやって施工でカバーしているか?」を工務店に質問できるかどうかが、家づくりの勝敗を分けるのです。
■ 次回予告:モコモコ膨らむ「プラスチック系」の真実
繊維系断熱材の光と闇、ご理解いただけたでしょうか。
「もっと簡単に隙間を埋められる素材はないの!?」
……あります。
次回シーズン4では、もう一つの巨大派閥。スプレーで吹き付けてモコモコ膨らむウレタンフォームや、最強の断熱性能を誇るネオマフォームなどの「発泡プラスチック系断熱材」に触れていきます。
燃えるのか? 縮むのか?
次回も、震えて待て。
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