僕とニャンゴスターが結んだ悪魔のトレード 第3話「トレード成立」【全10話】
🎧 サントラ小説
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【僕とニャンゴスターが結んだ悪魔のトレード】
第3話
トレード成立
「……ニャンゴ君がしゃべった!? えっ? 嘘でしょ?」
「ちがうニャ。俺の名前はそんな名前じゃニャイ。まぁいいニャ。俺の声、聞こえてるニャロか?」
「本当にニャンゴ君?」
「ニャから、俺はニャンゴじゃニャイって。お前、心臓が弱いニャロ」
「そうだよ。僕は一度に100歩くらいしか歩けないんだ。それ以上歩くと胸が苦しくなる。だから学校へ行くなんて夢物語なんだよ……」
「ふうん。俺は目が悪いんだニャ」
「そうなの?」
「俺たちニャンズは、ぼんやりしか見えないニャロ」
「見えないのに飛んだり跳ねたりするの?」
「感覚で覚えるんだニャ。最初からできるわけじゃニャイ。
この位置ではこのくらいジャンプすれば届くニャ、とか。
あの位置には曲がり角があるニャね、とか。
頭の中にこの家の地図をつくって、初めて走り回れるんだニャ」
「僕とお父さんとお母さんの違いはどう判断するの?」
「百人、人間がいたらみんな動きが微妙に違うニャ。
だからシルエットで判断するニャ。
あとは匂いと声ニャロ。俺たちニャンズは音を聴き分けることが得意ニャから」
「え? でも、おもちゃのネズミをジャンプしてキャッチするよね?」
「動いているものだけは別ものなんニャよ。止まっている物体はぼんやりしか見えないニャけど、動いている虫とか鳥はよく見えるんだニャ。君たち人間とは目の使い方が違うニャロ」
「え? 待って。でもなんで僕の気持ちが読み取れるの? まさか、人間みんなの心が読めるとか?」
「イニャ。後にも先にも、お前だけニャッタ」
「なんだそれ。僕の心を最初から盗み見してたってこと?」
「聞こえちゃうんニャからしょうがないニャロ? お前、意外とひねくれたヤツニャね」
「悪かったね」
「お前、俺と悪魔の契約を交わさニャイか?」
「どういうこと?」
「俺は目さえ見えれば、どこへでも行けるんニャが……」
「行きたいところがあるの?」
「そうニャ。俺には行かなきゃならニャイ場所があるニャロ。悪い話じゃニャイ。
お前の視力を少しだけ俺がもらう代わりに、お前の心臓を、俺が死んだときに俺の丈夫な心臓と交換するんだニャ」
「心臓を交換する? そんなことできるわけないだろ? それに僕が欲しいのは自由だよ」
「自由……。ニャら、俺らのトレードは成立だニャ」
「え? 心臓を交換したって自由は手に入らないでしょ?」
「これから俺の身体を使って、お前の目で見るんニャ」
「見るって何を?」
「自由ニャロ。お前、自由が楽しいと勘違いしてるニャろ?」
「楽しくないの?」
「どうかニャ。俺の知っている自由は、しんどいニャから」
「…しんどくたっていいよ!だって、今よりもしんどいことなんかないもん。僕の目と、ニャンゴ君の心臓をトレードしよう!」

そして僕とニャンゴ君は、悪魔のトレードを結んだ。
小さな羊雲が隠していた月夜をよみがえらせる。
暗くなっていた僕の部屋が、再び灯った。
まるで月が僕らを見守っているみたいに。
ニャンゴ君はまん丸の満月に向かって「ウミャーん」と叫んだ。
ドラ猫みたいな太い声。
聞いたことないニャンゴ君の低音に、僕はビックリする。
すると、月明かりだけの暗闇に小さな火の玉が現れた。
火の玉はオレンジ色に燃えている。
全力で燃え盛ると、火の玉はだんだん大きくなっていく。
成長した火の玉は、真っ二つに分裂した。
一つはニャンゴ君の体に吸い込まれて、もう一つは僕の体に向かってきた。
すべてが一瞬の出来事で、火の玉を避ける暇はなかった。
僕の体に吸い込まれるとき、火の玉は氷みたいに冷たかった。
次の瞬間。
ニャンゴ君が赤い火の玉を吐き出して、僕の口からは青い火の玉が飛び出した。
青い火の玉が出るとき、ちょっとだけ苦しかった。
でも僕の使えない心臓が苦しくて痛くて、ドクドクって波打つときに比べたら、なんてことない。
僕たちの間には、小さな赤い火の玉と青い火の玉が、二つ仲良く並んだ。
「なにを眺めてるニャ。さっさと俺の心臓を、一思いに飲みこんでしまうんだニャ!」
なんで僕が先なの?という謎が横切ったけれど、僕はニャンゴ君よりも勇敢だと証明したくて、勇気をかき集め、ひとおもいに赤い火の玉を飲み込んだ。
一瞬だけ喉が焼けるように熱くなった。
でも……平気だ。大丈夫だ!
ニャンゴ君は飲み込む勇気がないのか、青い火の玉をそのままにして、
「まずは俺が外に出られるように窓を少し開けるニャ! お母さんにはバレニャイようにカーテンを閉めるニャロ。そしたらお前はベッドで得意の寝たフリニャロ! ニャハハッ! タヌキ寝入りだニャ!」
とか誤魔化して、僕を小馬鹿にして笑っている。
「なにそれ、寝たふりって……ニャンゴ君だって……」
寝たフリして恥ずかしがり屋なくせに。
えらそうに上から目線で命令するニャンゴ君に、僕は呆れて、ちょっぴりイラついた。
けど、平気だ。
青い玉を飲み込むのがニャンゴ君はきっと怖いんだろう?
って僕は得意な気分になって、仕方なくニャンゴ君の言うことを聞いてあげた。
……っていうのは全部、僕の強がりだ。
本当は嬉しくて、愉快で、笑い転げたくなるくらい楽しかった。
だって、よく分からないけれど、心からワクワクドキドキしたから。
ずっと埋もれていた僕の感情が、ふつふつと湧き出してくる。
「準備はできたニャか? さぁ! さっそく冒険に出るニャよ!」
僕がベッドで横になったのを確認してから、ニャンゴ君は青い火の玉を飲み込んだ。
すると僕の意識が赤い光を放って、ニャンゴ君に乗り移った。
⸻
暗い……うす暗い。
でも、ここは見慣れた僕の部屋。キャットタワーの最上部だ。
薄暗闇の中、僕がベッドで意識を失った僕を見下ろしている。
すると僕は軽快にジャンプして床に着地して、再びキャットタワーを駆けのぼる。
こんな風に動けるのは生まれて初めてだ。
胸が痛くない。心臓が、苦しくない!
最高に身軽で愉快。
「すごい。すごいよニャンゴ君! オリンピックの体操選手みたい!」
「なんニャ、それ? おい、人間はこんなに目がよく見えるニャか? スゴイニャロ! 見えすぎるニャロ!」
「どうだろうね。目の悪い人もいるから。
でもコンタクトレンズとか眼鏡とかあって、みんなが僕みたいに目が良いわけじゃないよ」
「お前の目玉スゴイニャね! 見えすぎてビックリしたニャロ! さて、まずは手ならしに夜の街へ偵察ニャ!」
「どこへ行くの?」
「お前、自由が知りたいって言ったニャロ? 自由を探しに行くんだニャ!」
閉ざされたカーテンをくぐり、さっき開けておいた窓をすり抜ける。
さっそく、僕んちの庭の青々とした芝が出迎えてくれた。
まだお母さんもお父さんも起きていて、リビングからうっすらと光が漏れている。
さっき食べそびれたハンバーグの焼けた匂いがして、今さらだけど、もっと食べておけばよかったって反省した。
落ちたばかりの八重桜の絨毯が、僕らの門出を歓迎している。
可憐な花びらを踏みつけると、柔らかくてしっとりとしていた。まるで女の子がまとうフリルのドレスの絨毯だ。
ニャンゴ君は走り出した。
その景色は僕の知ってる景色とは、立ち位置が全然ちがう。
草むらを軽快に走り抜けたと思ったら、一瞬でジャンプして塀をのぼって、塀の上を楽々と駆けぬける。
早すぎて、まるで新幹線みたいだ。
夜の街並みを切って進んでいる。
塀の高さから何軒か先の家の屋根に飛び乗り、あとはどんどん、どんどん!
高く高く!
屋根から屋根へジャンプする。
どんどん高い場所を目指して、ニャンゴ君は休むことなく駆けのぼる。
この辺りの街並みを見下ろせる高い場所で、ニャンゴ君は「休憩だニャ」とポツリつぶやくと立ち止まった。
僕は初めて見る夜の街の景色に感動した。
広がる夜空よりも、満月に照らされた色んな色の屋根たちが、光を灯す窓たちが、遠くに望む高層ビルが、輝いている。
明るい街並みに溶けるように、春の色がところどころで柔らかく揺れている。
黄色と紫と薄ピンクと薄緑。
葉っぱはお花と同じ細胞で、葉っぱが進化したのがお花だって図鑑に書いてあった。
僕も進化できたら、ニャンゴ君みたいに走り回れるのかな?
月明かりが街と僕たちを照らす。
「キレイだね」
と僕が話しかけると、ニャンゴ君は
「これが、お前たちが見ている “景色” ってやつニャか……」
とだけポツリと返事をしてくれた。
それから僕たちは一時間ほど、ただ黙って穏やかな春の夜の街を見下ろしていた。
「今日のところはこの辺で帰るニャロ」
とニャンゴ君が決めるまで、春の夜を楽しんだ。
帰りはゆっくりと、来た道と同じ道を、記憶をたどるように戻って僕たちは無事、僕んちに戻ってきた。
もうお父さんもお母さんも寝静まっている。
僕は冷蔵庫に入っていた食べかけのハンバーグを温め直して、夢中で平らげた。
僕は気を失っていただけで運動なんかしてないのに、ものすごくお腹が空いていた。
「俺も腹が減ったニャ。お前だけズルいニャロ!」
ってニャンゴ君がひがむから、ニャンゴ君にも特製ニャンズパウチを開けてあげた。
なんか二人で夜中に悪いことをしたみたいで、すごくすごく楽しかった。
その日の夜は、久しぶりにぐっすりと眠れた。
⸻
このとき僕は、悪魔との取引を後悔することになるなんて、思いもしなかった。
つづく🐾
↓↓↓ 第4話「はじめての喧嘩」
-モフモフ🐾余談-
編集の合間の息抜きに☕️
本日アップされたばかりのチイノちゃんのプロンプトを試したら……。
ニャニャニャ、にゃんと!Σ(・ω・ノ)ノ!!!
🐈⬛ニャンゴスターケーキ🎂が生成されましたぁ😍🐾😍🐾きゃわゆす🤭✨
チイノちゃん、素敵なプロンプトをありがとう🫶🏻

“Endlessly Eden Reverie Cake”
ミルアのケーキは、
“幸福”だけで作られていない。
苦しみも、執着も、愛も、哲学も、
全部を抱えたまま、
それでも「美しく在ろう」としているケーキ。
だから、
食べると少し泣きそうになる。
次回予告…第四話🐾
ニャンゴスターと少年の、初めての確執編。
少年がニャンゴスターをガン無視します🤣
