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未来を今の判断基準にし、まだないものを創る|フューチャードリブン経営とは|フューチャードリブン経営論

今回の記事では
「Future Driven」とは何か、
そこで言う、
「Future」とは何か、
曖昧にせずに定義していきます。

実績や前例からしか目標をつくれないなら、経営者はいらない。

前年の実績を確かめ、今ある人員と予算を配分し、既存事業を安定して動かす。

経営には、どれも欠かせないことです。
これらを軽視して、会社を経営することはできません。

しかし、それだけで経営者の役割を果たしたことになるのでしょうか。

今ある資源を配分し、今ある事業を改善し、現在の会社を滞りなく動かす。
それだけであれば、経営者でなくてもできます。

経営には、経営者にしか担えない本質的な役割があります。

まだないものを創ることです。

まだ存在しない価値を生み出す。
今の会社にはない能力を、組織の中につくる。
現在の延長には存在しない会社を、現実のものにする。

それが経営者の仕事です。

ところが、会社が続き、実績が積み上がり、守るものが増えるほど、経営者の判断は現在へ引き戻されていきます。

今の人材では難しい。
今の技術ではできない。
今の資金では足りない。
この業界では前例がない。
これまで、うまくいかなかった。

だから、できない。

かつて、何もない場所から会社を創った経営者が、今は「ない」ことを理由に、会社の未来を閉じてしまう。

本人は、未来を諦めたつもりなどありません。

慎重に考えている。
社員や顧客を守ろうとしている。
現実を見て、堅実な判断をしている。

そう考えています。

しかし、どれほど正当な理由があっても、

「これまで、できなかった」
「現在は、持っていない」

という事実によって、これから実現する未来まで決めてしまえば、会社の可能性は現在の実力を超えられません。

経営計画では、未来を語っている。
けれど、
その未来を選んでいるのは、現在の会社です。

現在の会社ができそうなこと。
現在の会社が受け入れられそうなこと。
現在の会社が失敗しにくいこと。

その範囲から将来を選び、それを「未来」と呼んでいる。

しかし、それは未来ではありません。

過去と現在が許した範囲にある、次の会社です。

未来を創っているのではない。

現在の会社を前提にして、
現在の会社にも実現できそうな将来を選んでいる。

未来を創るはずの経営者が、現状に未来を決めさせています。

できそうなことを積み上げるのか。
それとも、
実現すべき未来を先に置き、そこへ進むために現在を変えるのか。

この二つは、挑戦の大きさが違うのではありません。

思考の起点が、正反対なのです。

ここでいう「Future」とは

前回の記事では、社長と社員が同じ答えを持つのではなく、会社の未来から同じ問いを立てることについて書きました。

では、その問いの起点となる「未来」とは何か。
「Future Driven」で言うところの「Future」とは?

Futureとは、
現状の思考の延長では辿り着かない未来に、
すでに実現している会社の在り方です。

Futureは、将来予測でも、中期経営計画でもありません。
売上や利益などの数値でも、社長が掲げる抽象的な理想像でもありません。

未来において、その会社は誰に、どのような価値を届けているのか。
そのために、どのような能力を持っているのか。
人と組織は、何を当然とし、何を基準に判断しているのか。

その会社全体の在り方を、この連載ではFutureと呼びます。

Futureは、何かを大きく変えることそのものではありません。

現在の主力事業を、未来にも続けている会社があるかもしれません。
変わらない価値を届け続けることが、その会社のFutureであることもあります。

ただし、その価値を未来にも届け続けるために、現在の事業の形や組織を変えなければならないことはある。

反対に、現在は利益を生んでいる事業でも、Futureには必要がないと判断することもある。

何を変えるかではなく、何を起点に変えるか。
何を守るかではなく、何を起点に守るか。

その判断を生み出すのがFutureです。

現状の外側にFutureを置くのは、大きな夢を語るためではありません。

現在の考え方のままでは辿り着けない場所を先に置くことで、現在の思考そのものを変えるためです。

Futureは、現在の会社を少し先へ進めるためにあるのではありません。
現在の会社そのものを、変えるためにあります。

「Future Driven」とは

Future Drivenとは、
Futureに実現している会社の思考と判断基準を現在へ持ってきて、
今の会社を判断し直すことです。

現在の会社が、未来を考えるのではありません。
Futureにある会社が、現在の会社を見る。

ここに、思考の反転があります。

Future Drivenは、未来から予定を逆算するだけの方法ではありません。

未来から逆算していても、考えているのが現在の会社のままなら、
現在の常識の範囲で計画を引き直しただけです。

Future Drivenで変えるのは、計画を立てる順番ではありません。

変えるのは、現在を見ている、思考の前提と判断基準です。

現在の会社が未来への道を考えるのではありません。
Futureにある会社が、現在の会社をどう変えるかを決めるのです。

Futureにある会社から現在を見れば、今まで合理的に見えていた判断が、未来を遠ざけていたことに気づく場合があります。

同じ現実を見ても、判断の起点が変われば、意味も選択も変わります。

Futureは、
遠くに掲げて眺めるための旗ではありません。
今の会社を測り直すための物差しです。

Future Drivenは、現実とのギャップを最も厳しく見る

Future Drivenは、理想を掲げて現実を無視する考え方ではありません。
まったく逆です。

現状の物差しで
現状を評価すれば、
現状はいつでも正しく見えます。

今の組織では仕方がない。
この業界では普通だ。
これまで、この方法で成功してきた。

現在を正当化する理由は、いくらでも見つかります。

Futureという別の物差しを持ってくるからこそ、現在に何が足りないのかが見えるのです。

Futureでは、管理職と社員が会社の未来から判断している。
しかし現在は、重要な判断がすべて社長に戻ってくる。

現在の物差しなら、「まだ任せられる人材が育っていない」で終わります。

Futureから見れば、
社長がいなくてもFutureから判断できる会社になるために、
現在の何を変える必要があるのか。
という問いが立ちます。

Futureが変われば、同じ現実から生まれる問いが変わります。

今できることの範囲で未来を描けば、現在とのギャップは小さくなり、実現可能性は高く見えます。
未来を現在の能力まで引き下げれば、ギャップが小さくなるのは当然です。

それは現実を見たのではありません。
目の前の現実から目を背けていることに他なりません。

未来を、現在の会社に従わせただけです。

Future Drivenは、Futureと現在との差を、厳しく、正確に捉えます。

現実を無視するのではありません。
現実に、未来を決めさせない、
未来に、現実を決めさせるのです。

「厳しい」のあとに、「じゃあ、どうする?」が出る

本当にFutureを判断基準にしているかどうかは、その実現に必要なものが、今の会社にはないと分かったときに表れます。

そこで、
だから、できない。
と判断を閉じるのか。

それとも、
未来にそう在るためには、じゃあ、どうする?
と考え始めるのか。

ここで、現在の条件に合わせて未来を縮める会社と、Futureに合わせて現在を変え始める会社に分かれます。

現在にないものは、Futureを諦める理由ではありません。
Futureを実現するために、これから創らなければならないものです。

Future Drivenの出発点は、「現在のままでは無理だ」と厳しく、そして正確に認めることです。

しかし、
「現在のままでは届かない」と
「だから実現できない」は、
まったく違います。

現在の能力が足りないことは、Futureが間違っている証拠ではありません。
今の会社を変えなければならないという証拠です。

無理は、結論ではありません。
まだ分解されていないギャップです。

もちろん、「たった今、この瞬間」は、今あるもので戦わなくてはなりません。

でも、
ギャップを正視して、それを埋めるための試行を続け、変化を厭わずに受け入れるのか、
それとも、
今の資源では無理だから、と挑戦することすらしないのか。

判断の起点の置き方で、今の資源の使い方も大きく変わってきます。
もちろん、その後も全く違うものとなることは容易に想像がつくと思います。

もちろん、すべてを変え、すべてに挑戦すればいいという話ではありません。

Futureに必要がないから、やらない。
Futureに必要なものへ集中するために、やめる。

それも、Future Drivenです。

Futureが、社長の答えに代わる

ただし、「じゃあ、どうする?」を社長一人だけが問い続けるなら、会社は再び社長依存へ戻ります。
Futureを社長だけが握っている限り、社員は社長の正解を当てようとします。
会社の中心にあるのは、Futureではなく、社長の答えです。

それでは、社長が判断し続けなければ会社は動きません。

Futureが組織の判断基準になれば、問いが変わります。
Futureに実現している会社なら、この場面でどう判断するか。

社長と社員で答えが違っても、同じFutureから問いを立てられれば、異なる答えを共通の判断基準に照らして検討できます。

社長の意見に合っているかではない。
前例があるかでもない。

Futureの実現に近づく判断かどうか。
Futureが、戦略から現場の判断までを一本につなぎます。

社員が社長の答えを待つ会社から、
組織全体がFutureから判断できる会社へ変わる。

それが、フューチャードリブン経営です。

会社の未来を、過去から取り戻す

Futureを置かなければ、判断が自由になるわけではありません。

過去が判断基準になります。

新しい目標や制度をつくっても、判断基準が過去のままなら、そこで生まれるのは過去の更新です。

目標を達成することと、
Futureへ前進することは
同じではありません。

過去からつくられた目標の達成が、「このやり方でいい」という確信を強め、変わるべき時期を遅らせることさえあります。

会社は、目標を達成しながら、まだない価値を創る力を失うことがあるのです。

Future Drivenは、
未来を思い描けば会社が変わるという理論ではありません。
成功を約束するものでもありません。

むしろ、Futureを本気で置けば、変えなければならないものが見えてきます。

それでも、現在できることから未来を決め続ければ、会社は現状の外へ出られません。

Future Drivenは、
未来を実現してくれる理論ではありません。
過去に会社の未来を決めさせず、
未来を実現する責任を、経営者と組織へ戻す経営原理です。

そして、創業社長は、かつて一度、それをやっています。

顧客も、実績も、信用も、組織もなかったときに、まだ存在しない会社を先に置き、その実現に必要なものを創ってきた。

では、なぜ今は、現在できることから会社の未来を決めているのでしょうか。

かつて何もなかった場所から会社を創った経営者が、その力を失ったわけではありません。

会社の未来を、現在の実力に合わせる必要はありません。
現在の会社を、Futureにふさわしい会社へ変えていけばいいのです。

次の記事では、創業時に発揮していた「まだないものを創る力」を、もう一度会社のFutureへ向けることについて考えます。


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