🟢緑の章:深緑の楽園 ― 揺るぎない信念を貫くものたち 5

ムヒのお勧めクリエイター
拌ねここさん
凄いです‼️
365日ショートショートを書いてらっしゃいます。
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第五章 楽園(パラダイス)
レオンとホズミは、陸亀のカンロからこの島が「人を堕落させる楽園」であるという警告を受けた。
「どういうことだ……?
楽園が人を堕落させるなんて……」
レオンは、その言葉の意味を、理解することができなかった。
彼の心は、カンロの言葉とこの島の豊かな自然との間で揺れ動いていた。
これまでの旅は苦労と試練の連続だった…
しかし、この島は、まるで彼らの苦労を嘲笑うかのようにあまりにも豊かだった。
ホズミもまた、不安な表情でカンロに問いかけた。
「カンロさん……。
わたくしたちの旅は、まだ始まったばかりです。
そんなにこの島に……長居するつもりはありません」
カンロは、そんな二人の言葉に静かに、しかし、少しだけ寂しそうに笑った。
その瞳の奥には、遠い昔、彼もまた同じような決意をしていたのだろうという、深い哀しみが宿っていた。
「そうじゃろう……。
じゃが……。
まあ、わしは、疲れた体を休ませるために、少しだけこの島に立ち寄っただけじゃ。
そう思うて、この島に留まってしもうた。
お前さんたちも、少しだけこの島の安らぎに浸ってみるとええじゃろう」
カンロはそう言うと、再び草の上で気持ちよさそうに寝息を立て始めた。
レオンとホズミは、カンロの言葉に互いに顔を見合わせた。
「レオンさん……。
わたくしたち、この島の安らぎに、少しだけ、身を委ねてみませんか……?
わたくし、もう……少し疲れてしまいました……」
ホズミはそう言って、レオンに懇願するような眼差しを向けた。
彼の瞳には、これまでの旅で蓄積された、疲労が色濃く浮かんでいた。
彼の小さな体は、嵐の恐怖と海の冷たさに、まだ震えているかのようだった。
レオンもまた、ホズミと同じ気持ちだった…
これまでの旅はあまりにも過酷だった。
燃える様な火山、風の吹き荒れる渓谷、灼熱の砂漠、容赦ない嵐…
そして、アルとの心を引き裂かれるような別れ…
彼らの心と体は限界に達していた。
楽園という言葉が、甘い響きを伴って、彼の心に深く染み込んでいく。
「……そうだな。
少しだけ、休んでいこう。
一日だけだ。
明日になったら、また、旅を再開する」
レオンはそう言って、ホズミに力強く頷いた。
二人は、その言葉を、互いに強く確認し合い、この楽園での、穏やかな生活を、始めることにした。
最初の一日、二人は、旅の目的を忘れてはいけないと互いに確認し合っていた。
朝目覚めるとレオンは、自分の腰につけた【キャンプ用ポーチ】を、ホズミは、胸元の【星図の石】をそっと撫でた。
それは、自分たちがここにいる理由を、忘れないようにするための大切な儀式だった。
しかし、この島に満ちている、抗いがたい誘惑が彼らの心を少しずつ蝕んでいく。
木々には見たこともない、色とりどりの果物がたわわに実っている。
その果実は、一口食べれば、口の中に、信じられないほどの甘みが広がり、彼らの疲れた体を一瞬で癒していく。
彼らは、もう、お腹が空くという感覚を完全に忘れてしまっていた。
海には、色とりどりの魚が悠々と泳いでいる。
レオンが、棒切れを垂らせばすぐに魚が釣れ、
ホズミが、素潜りをすれば、色とりどりの魚たちと戯れることができた。

この島には苦労も痛みも何も無かった。
彼らは、太陽が昇れば起き、太陽が沈めば眠る、そんな原始的な生活を、何日も、何日も、続けていた。
彼らが「一日だけ」と決めたはずの時間は、この島の永遠の時間の流れに溶け込んでしまっていた。
ある日ホズミが目を覚ますと、隣にいるはずのレオンの姿が見当たらなかった。
彼は慌ててレオンを探した。
するとレオンは、湖のほとりで仰向けになり空を見上げていた。
「レオンさん……。
どうしたんですか……?」
ホズミはそう言ってレオンに近づいた。
レオンは、ホズミの声に、ゆっくりと体を起こした。
彼の瞳には、これまでの旅で宿していた、燃えるような情熱の光はもう無かった。
代わりに、この島の穏やかな空の色が映し出されていた。
「ホズミ……。
お前、覚えてるか?
俺たちが旅に出た理由を……」
レオンはそう言ってホズミに問いかけた。
ホズミはその言葉に胸が締め付けられるような、苦しい感覚を覚えた。
彼の心は、旅の目的を、まだ、忘れ去ってはいない。
しかし、この島の安穏とした生活が、彼の心を、深く、深く、閉じ込めていた。
「……はい……。
もちろん、覚えています……。
オーロラが輝く空を……」
ホズミはそう言ってレオンに答えた。
「ああ……。
そうだな。
でも、この島はそれよりも、ずっと楽だ。
苦労も、痛みも、何も無い。
もう、旅なんてしなくても、いいかもしれないな……」
レオンはそう呟き、再び、空を見上げた。
彼の言葉は、彼の心の奥底に眠っていた本音だった。
ホズミは、そんなレオンの言葉に、何も答えることができなかった。
彼の胸元にある【星図の石】は、相変わらず静かに、しかし、どこか悲しそうに輝きを放っていた。
この楽園での、満たされた生活が、どこか空虚に感じられるという違和感。
それは、ホズミの心の奥底に、小さな小さなさざ波のように生まれていた。
しかし、その違和感も、この島の心地よい空気と、楽な生活によって、すぐにかき消されてしまった。
彼らは、もう、何も考えなかった…
…もう何も求めなかった。
ただ、この楽園での、穏やかな生活を享受するだけだった。
彼らはいつしかこの島の住民となり、旅人であったことを忘れ去ろうとしていた。
あーぁ…
やっぱり2人は堕落してしまいましたね〜
この先どうなるのやら…
ワシ(ムヒ)の持つnoteだけが知っている😁
次回はこちら
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