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🌀嵐の丘で立ち尽くす者たち 4



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 第4話 風の通り道


 その場所は、少し不思議なところだった。


岩と岩が向かい合い、細いすき間をつくっている。空は開けているのに、そこだけはいつも風が集まってくるようで、地面の砂や小さな葉が、休みなく動いていた。

「ずいぶん、風が通る場所ですね」

ホズミは、そう言って立ち止まった。

ホズミのかぶっているカーボーイハット
旅の途中で手に入れたその帽子は、風の声を運んでくる。
帽子のツバを通る風がホズミの耳に囁く。

(……困っている)

ホズミがハットのツバを直すと、隙間から「カサ……カササ……」という乾いた音が漏れた。

それは過去の誰かの声でも、風のざわめきでもない。
まるで、誰かが生まれて初めて「言葉」という形を作ろうとして、失敗し続けているような――不器用で、たどたどしい響き。

「……え?」

ホズミが立ち止まる。

「どうしたんだよ。
あたい、何も言ってないぞ」

アルジェリーナが不思議そうに振り返る。

「……いえ、何か。
この岩の隙間から、困っているような……呼んでいるような響きが」

「あたいには、何も聞こえない。
……ホズミ、あんた変なもん拾ったんじゃないの?」

ホズミにはそう感じた。
風が、何かを訴えている。
“行き場がなく、ここに集まって、ぶつかり合っている。”

「この風たち……少し、苦しそうです」

レオンは岩の間を見た。
確かに、風は強いが、荒れているというほどではない。
ただ、同じ場所を行き来し、抜け道を探しているようにも見えた。

「通り道が、せまいんだ」

レオンの言葉に、ホズミは小さくうなずいた。

「ええ。だから、ここで止まってしまうんです」

ホズミは、そっと岩に手を触れた。
冷たく、重たい感触。

「少しだけ……広げてあげれば」

それは、思いつきだった。
でも、悪い考えではないように思えた。

風は流れるもの
流れれば、楽になる。

ホズミは、岩の根元に積もった小石を、ひとつ、またひとつと動かし始めた。
レオンも手を貸し、大きな石をずらす。

ごろり、と低い音が響いた。

その瞬間、風が――息を吸い込んだように、強く鳴った。

「わっ……!」


アルジェリーナが翼をすぼめる。
羽根が大きく揺れた。

風は、喜んでいるようだった。
今まで押し込められていたものが、一気に解き放たれたかのように。

びゅう、と音が変わる。

「通れた……!」


ホズミの声は、少しうれしそうだった。

 ハットの隙間から聞こえていた「カサカサ」という音が、一気に「ヒュオオオオ!」という高く、力強い叫びに変わった。
まるで、初めて呼吸ができた赤ん坊が、全力で泣き声をあげたみたいに。

風は岩の間を抜け、遠くへと走っていく。
それまでとは比べものにならない速さで。

砂が舞い、地面が削られ、小さな草が根元から揺さぶられる。

「……強くなってないか?」

レオンが言った。

確かに、さっきよりも風は勢いを増していた。
通り道ができたことで、風は止まることを忘れたようだった。

「でも……流れられるようになりましたから……」

ホズミはそう言いかけて、言葉を止めた。

風の声が、変わった
高く、鋭く、止まれない音。

「うわっ!」

アルジェリーナが翼をすぼめる。
羽毛が激しく乱れ、彼女は恐怖で足元を掴んだ。

「ホズミ……
なんなんだよ、これ……!
    怒鳴られてるみたいだ!」

アルジェリーナが、不安そうに呼ぶ。

「違います、アルジェリーナさん!
怒ってるんじゃなくて……ただ、力加減がわからないんです!」

ホズミは帽子を必死に押さえながら叫んだ。

風は岩の間を抜け、さらに遠くへ向かって吹き続けている。
振り返ると、さっきまで穏やかだった土地が、少しずつ削られているのが見えた。

「……やりすぎた、でしょうか」

ホズミの声は、小さく揺れた。

レオンは首を横に振った。

「違う。間違えたわけじゃない」

「ただ……俺たちは、この世界のことを、まだ知らないだけだ」

風は答えない。
ただ、吹き続ける。

それはもう、ひとつの流れになっていた。
ホズミは、帽子のつばを押さえながら、風の行方を見つめていた。

(良かれと思った だけなのに…)

その思いだけが、胸に残っていた。


風の声が聞こえるホズミ。
心優しいホズミ。
でも…
でも…

わし(ムヒ)の持つnoteかだけが知っている😁


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