🌀嵐の丘で立ち尽くす者たち 6

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第6話 ふくらみはじめた水
その場所は、少しだけ空気が違っていた。
地面はしっとりとして、足を踏みしめると、かすかに水の音がした。
遠くで風が鳴っているのに、ここだけは静かで、ひんやりとしている。
「水の匂いがします」
ホズミが言った。
三人が進んでいくと、低くくぼんだ場所に、小さな水たまりがあった。
広さは、せいぜい数歩分。
空を映して、淡く光っている。
「久しぶりだな……水」
レオンはそう言って、ゆっくりと手を浸した。
冷たい。
だが、気持ちがよかった。
アルジェリーナは、そっと翼を広げ、羽根の先を水に触れさせた。
水面が揺れ、小さな波が広がる。
「生きてるみたい」
「実際、生きているのでしょう」
ホズミは水面を見つめながら答えた。
「ただ……静かすぎます」
三人は、水たまりのそばに腰を下ろし、顔や手を洗った。
長く歩いてきた体が、ゆっくりとほどけていく。
その時だった。
――ぽこっ。
小さな音が、水の底から聞こえた。
「……今、音しなかった?」
アルジェリーナが首をかしげる。
――ぽこ、ぽこ。
今度は、はっきりと。
水面の一部がふくらみ、泡が浮かび上がった。
「何かが、出てきてるな」
レオンは、水たまりの中央を指さした。
底のほうから、かすかに揺れる影が見える。
何かが、内側から押し上げているようだった。
「温かい……?」
ホズミが、水に指先を浸す。
確かに、他の場所より少しだけ温度が高い。
「何かつまってるのかもしれない」
レオンはそう言って、立ち上がった。
「流れ道を作ってやれば、落ち着くんじゃないか」
「危なくありませんか」
ホズミは迷いながらも、水の底を見つめる。
「少し、確かめるだけだ」
水たまりは深くない。
底まで、せいぜい1メートルほど。
三人は息を整えると、水の底へ向かって体を沈めた。
レオンは重石のように真っ直ぐ沈み、ホズミはおずおずと水を掻く。
アルジェリーナは、大きな翼が浮力に邪魔されて、水面で激しく足をバタつかせながらようやく潜り込んだ。
ゆらゆらと揺れる光の下、三人は顔を見合わせ、底に横たわる岩の割れ目に手をかけた。
そこには、小さな割れ目があった。
岩と岩のすき間から、泡とともに水が押し出されている。
「ここだ」
ホズミが慎重に流れを見極めながら手をのばし、
アルジェリーナが羽根で砂を払い、
レオンが割れ目の石を力任せに引き抜いた、その時だ。
――ミシッ。
岩の奥で、何かが裂けるような乾いた音が響いた。
次の瞬間、底から巨大な拳に突き上げられたかのような衝撃が走り、冷たかった水が急にぬるんで、三人の体を水面へと弾き飛ばした。
「わっ……!」
「ごほっ、ごほっ……!」
顔を出した三人の目の前で、水面が生き物のように盛り上がり、渦を巻き始めた。
水たまりは、みるみる大きくなっていった。
さっきまで数歩ほどだった水たまりが辺り一面に広がっている。
「止まらない……!」
ホズミの声が震える。
「石を戻そう!」
だが、流れはすでに強くなっていた。
水は新しい道を見つけ、地面の下から、次々と湧き出してくる。
ぽこぽこ、という音は、
ゴウー、という低い響きに変わっていった。
「走れ! 飲み込まれるぞ!」
レオンが二人の背中を押し、ぬかるみ始めた地面を蹴った。
振り返ると、さっきまで穏やかだった水たまりは、周囲の土を飲み込みながら猛烈な勢いで領域を広げている。
「……重い。
水の音が、さっきまでと全然違うよ」
アルジェリーナが濡れた翼を重そうに振るいながら、必死に斜面を駆け上がる。
「わたくしたち……」
ホズミは喉を鳴らしながら、足元まで迫る巨大な鏡のような水面を見つめた。
「触れてはいけないものに、触れたのかもしれません」
水は、止まる気配を見せなかった。
むしろ、集まり、広がり、重さを増していく。
レオンは答えなかった…
助けたかっただけだ。
流れを整えたかっただけだ。
だが、水はもう、三人の思いとは別の速さで動き始めていた。
地面の下で、何かが目を覚ましたように。
その夜。
遠くで、雷にも似た音が、低く幾重にも重なりあって響いた。
この世界に来てからの三人は何故か上手く行きませんね〜
わし(ムヒ)の持つnoteかだけが知っている😁
次回はこちら
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