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🌠過去と未来を繋ぐ者たち 6

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 第6章:空の声を聞ける者


 焚き火は、小さく、しかし絶えることなく静かに燃え続けていた。

 乾いた薪がぱちりと弾けるたび、オレンジ色の火の粉が夜空の深淵へと舞い上がり、瞬く間に星の欠片に混じって消えていく。

 ここは――三人が「時の裂け目」へと足を踏み入れることを決断した、あの運命の夜。

 再生を始めたオーロラランドの森の片隅で、レオン、ホズミ、アルジェリーナは言葉少なに炎を囲んでいた。周囲には夜露を含んだ土の匂いと、新芽が放つ清々しい香りが漂っている。風は止まることなく、三人の間をゆっくりと、何かを確かめるように流れていた。

「……なあ」

 沈黙を破ったのは、レオンだった。焚き火の揺らめきを見つめたまま、手元の小枝で灰をいじっている。何気ない調子だったが、その声の芯には、戦士特有の鋭い確信が宿っていた。

「お前、アルの娘だろ」

 その言葉が投げかけられた瞬間、アルジェリーナの肩が、ぴくりと大きく揺れた。彼女は膝を抱えたまま、横目でレオンを鋭く睨む。

「風だ。それに、気配だな」

 レオンは顔を上げず、短く答えた。

「似てるんだよ。
不器用な立ち方も、一度決めたら動かねぇ目の据わり方も。
……何より、何も語らずに一人で全部背負おうとしてる、その黙ってる時の“背中”が、あいつにそっくりだ」

 ホズミもまた、星図の石を慈しむように撫でながら、静かに頷いた。

「わたくしたちは、虹の橋を架ける旅の途中で、高潔なペガサスの魂、ルア様に出会いました。
その方は最期に仰ったのです。
ご自身は、かつて火山で自らの命を賭けてわたくしたちを守ってくださった、大鷲アルフレッドの魂なのだと」

 焚き火の炎が、まるで誰かの溜息に押されたかのように、ふわりと大きく揺れた。アルジェリーナは、爆ぜる薪の音に沈黙を埋め、やがて自分自身に言い聞かせるように呟いた。

「……やっぱり、そうだったんだ。
風がさ……少し前から、あたいの知ってる声で、耳元でずっと囁くんだ。
『迷うな』とか、『立ち止まるな』とか」

 周囲の風がにわかに勢いを増し、焚き火の炎が一瞬だけ垂直に引き伸ばされる。

「でも、あいつ、絶対に『飛べ』とは言わねぇんだよ。
   ……それが逆に、腹立ってさ」

 レオンは、薪をくべる手を止め静かに問うた。

「本当は、飛べるんだろ」

「ああ」

 迷いのない、即答だった。

「羽根は動く。風も読める。
その気になれば、今すぐにでもあの星の向こうまで行けるさ。

……でも、飛ばねぇよ。

あたいは、飛ばないと決めたんだ。
父ちゃんが翼を焼かれて、それでも泥を這って、最後まであたいを守り抜いたのを知ってるから。
あたいは、父ちゃんが最後に選んだ『地を歩く強さ』を、あたいの翼で証明したいんだ」

 その瞬間、風の流れが物理的な法則を無視して一点へと収束した。意志を持った「大気の渦」が三人の間を駆け抜け、アルジェリーナの瞳が驚愕に見開かれる。

「……来た。今、来てる。そこに……!」

 胸元の星図の石が、澄んだ紫色の輝きを放ち始める。風は耳で聞く音にはならなかったが、アルジェリーナの魂にははっきりとした言葉となって届いていた。

(聞け、我が娘よ。
しっかりと地に立て。
お前の翼は、現実から逃げるための道具じゃない。
重力に抗い、大切な者を守り抜くための、心の盾だ)

 アルジェリーナの胸が、万感の思いで締めつけられる。

(ホズミが持つ星図の石には、彼らが集めた七つの光の記憶が刻まれている。それは断絶された過去と、未だ見ぬ未来を繋ぎ合わせる唯一無二の“鍵”だ。共に歩む者たちと、自分自身の選択を信じろ)

 風の勢いがやわらかな抱擁へと変わり、やがてただの夜風へと戻っていった。アルジェリーナはしばらく天を仰いだまま動くことができず、震える拳を強く握りしめた。

「……父ちゃんはさ。
翼を奪われても、最期の瞬間まで空を恨まなかったよ」

 レオンが立ち上がり、彼女の肩を大きな手で叩いた。

「だから、お前にも空を恨ませたくねぇんだろ。あいつらしいやり方だ」

 アルジェリーナは乱暴に涙を拭い、鼻で笑った。

「……ほんと、どこまでもめんどくせぇ父ちゃんだよ」

 ホズミは、温かさを取り戻した星図の石を大切に抱きしめ、二人を見つめた。

「……なら、わたくしが全力で祈ります。
過去のエルダ様が救えなかったものを。
未来のわたくしたちが失ったものを。そのすべてを繋ぎ直すために」

 三人の視線は、夜の闇の向こう、異様な静寂を湛える「時の裂け目」へと向けられた。風は、確かに彼らの背を押していた。進め、と。その翼と、その足で、新しい虹を架けろ、と。


ついに明かされたアルジェリーナの出生。

まぁ、レオンとホズミは気づいていたみたですけどね〜(笑)

さて、次回は…

わし(ムヒ)の持つnoteだけが知っている😁

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