また反物を増やしてしまった話 〜ため反が増える一方で、それでも買う理由〜
はじめに
今日、磐田市のアミューズ豊田で開催されていた「綿の産地フェア」に行ってきた。
そして案の定というべきか、反物を買って帰ってきた。
紺色の浴衣地が一反。そして絹の紬地を二反。合計三反である。
こうして文章にすると改めて思う。
私は着物を作るスピードより、反物を買うスピードの方が明らかに速い。
着物好きの間では、仕立てていない反物が溜まっていく状態を「ため反」などと言ったりするが、まさに今の私はその状態だ。
家にはまだ手を付けられていない反物がある。
それなのにまた買ってしまった。
今日はそんな話を書いてみようと思う。
気付けば増えていく「ため反」
和裁をする人なら、一度は経験があるのではないだろうか。
反物を買った時には、
「次はこれを縫おう」
と思っている。
ところが現実はそう簡単ではない。
仕事がある。
家事もある。
休みの日は疲れて寝てしまうこともある。
縫い始めれば楽しいのだが、裁断して印を付けて縫い進めていくにはそれなりの時間が必要だ。
一方で、反物との出会いは突然やってくる。
産地フェア。
骨董市。
呉服屋のワゴン。
リサイクル店。
「今買わなかったら次は無いかもしれない」
そう思うとつい手が伸びる。
結果として、作る速度よりも買う速度が上回る。
今日もまさにそうだった。
本当なら家にある反物を先に仕立ててから次を買うべきなのかもしれない。
しかし会場で反物を眺めていると、そんな理性はどこかへ飛んでいく。
これは着物好きの持病のようなものだと思っている。
今日買った三反
今回買ったのは紺色の浴衣地と、絹の紬地二反だ。
紺色の浴衣地は、やはり浴衣らしい落ち着きがある。
最近はカラフルな浴衣も多いが、私は昔ながらの紺地を見ると安心する。
夏祭りや花火大会だけでなく、普段着としても着やすそうだ。
そして紬地。
綿のフェアだけど、絹もあって気に入ったからつい買ってしまった。
今まで綿しか仕立てたことがないのだけど、絹の仕立てはどんな感じなのだろう?
着物好きにとって反物は単なる布ではない。
未来の着物であり、未来の楽しみでもある。
完成品を買う楽しさとは少し違う。
「いつか自分の手で形にする」
という期待まで含めて反物なのだと思う。
だからつい増えてしまう。
分かっていても増えてしまう。
それでも買う理由
ここまで読むと、
「反物が溜まるなら買わなければいいのでは?」
と思う人もいるかもしれない。
確かにその通りだ。
しかし私は遠州地方で育ち、この地域の織物文化に触れながら暮らしてきた。
浜松や磐田を含む遠州地域は、昔から織物産業が盛んな土地だった。
今では工場の数も減り、職人も高齢化している。
機械が止まれば終わり。
技術を継ぐ人がいなければ終わり。
そういう話も少なくない。
もちろん私一人が反物を数反買ったところで、大きな変化が起きるわけではない。
それでも何もしないよりは良いと思っている。
地元の野菜を買う。
地元の店で食事をする。
それと同じ感覚で、地元の織物を買う。
文化は「残してほしい」と言うだけでは残らない。
誰かが使い、お金を払い、次の世代へ繋がっていくことで残っていく。
だから私は、多少ため反が増えたとしても、好きな反物に出会った時にはできる範囲で買いたいと思っている。
おわりに
そんなわけで今日も反物が三反増えた。
家にある反物の山を見れば、
「先に縫え」
という声が聞こえてきそうである。
それはその通りだ。
反論できない。
ただ、反物を眺めながら次は何を作ろうかと考える時間もまた楽しい。
そして遠州の織物文化が少しでも長く続いてほしいとも思っている。
ため反は決して自慢できるものではない。
むしろ着物好きの困った習性かもしれない。
それでも私は、これからも気に入った反物に出会ったら悩みながら買うのだろう。
その代わり、少しずつでも針を進めていこうと思う。
まずは今日買った三反が、本当に「ため反」のまま終わらないように。
最後まで読んでくれてありがとう。
家にはまだまだ「ため反」が眠っているので、和裁や木綿着物の話はこれからも続いていくと思う。
他にも遠州木綿や着物、茶道のことなど、好き勝手に書いているので、興味があれば他の記事も読んでもらえたら嬉しい。
