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日本株・時価総額1,000兆円超えの裏側、インフレと円安が映す経済の【見えない課題】

「日経平均株価が過去最高を更新!」

といったニュースを聞いて

「おお、日本経済って本当に強くなっているんだなぁ」

と思われる方もいらっしゃるかもしれません。

嬉しくなる気持ちはわかりますが・・・

だけど、そう素直に喜んでいいものでしょうか。


こんにちは。村田雅志です。

東証株価指数は8月18日、日経平均株価は同19日、それぞれ過去最高値を更新しました。日本株は(暑さに負けず)力強い上昇が続いています。

一方で、

「…でも、自分の生活は全然ラクにならない。むしろ物価高で苦しいんだけど…」

と強く感じられている方も多いかもしれません。

その感覚は正しいと思います。

実は、華々しい株価の裏側で、日本経済の「見えない課題」が静かに進行しています。

今回のコラムでは、日本企業の株価上昇の「質」について、いくつかの視点から、私なりの考えをご紹介したいと思います。


日本企業全体の株式時価総額

日本取引所グループは、東京証券取引所(東証)など同グループに属する全ての市場の株式時価総額の合計(以下、日本株・時価総額)を公表しています。

先月末(2025年7月末)時点の日本株・時価総額は1,042兆円と過去最高を更新しました。おそらく今月はさらに高い水準になると思います。

日本株・時価総額は、2023年初めから2024年初めにかけてグングン伸びました。その後、いったん伸び止んでいましたが、2025年3月から再び増加トレンドになっています。

【数字のマジック】インフレというハリボテ効果

日本株・時価総額は好調に伸びていますが、今の日本経済はインフレが進んでいることを忘れてはなりません。時価総額や株価は、企業の「値段」です。経済全体がインフレの時は、多くの品目の値段が上がるわけですから、たとえ企業の「中身」が変わらなくても、時価総額や株価(値段)が上がっても不思議ではありません。

そこで、消費者物価指数(CPI)を使って、物価変動を考慮した日本株・時価総額(実質値)の推移を確認してみました。すると、インフレが定着し始めた2022年以降、日本株・時価総額の実質値は、物価変動を考慮しない日本株・時価総額(名目値)に追いついていないことが分かります。

2025年7月時点では、名目値が1,042兆円であるのに対し、実質値は931兆円しかありません。

このことは、日本株・時価総額が増えた要因の一部は、物価高という「ハリボテ効果」であることを意味します。

【世界のモノサシ】海外から見れば、日本株の価値は”3年前"と同じ

日本では、インフレとともに円安も進みました。そこで次に、日本株・時価総額を円建てではなく「ドル建て」で確認しました。

下のグラフは、日本株・時価総額を円建てとドル建てで比べたものです。グラフをご覧いただければわかるように、ドル建てで見た日本株・時価総額(113)は、名目値(146)から大きく下回っていることがわかります。両者の乖離は、物価変動を考慮した実質値と名目値の比較よりも大きいこともわかります。

単位が「円」と「ドル」で異なるため、グラフでは2022年1月を100とした指数で両者を比較

ドル建てで見た日本株・時価総額は、円建てで過去最高を更新した2025年7月時点でも2021年9月とほぼ同水準です。

言い換えると、日本株・時価総額は、(円建てでは)すごく増えたように思えたかもしれませんが、ドル建てではようやく元に戻っただけと言えます。国際的な視点では、日本株の金銭価値は「安いまま」とも言えます。

日本企業の課題:株価上昇は「本質的な力」を示している?

日本株・時価総額における名目値と実質値・ドル建てのズレは、日本企業の「質」を映したもののように感じています。

多くの企業がインフレや円安という追い風に頼りすぎて、自力で稼ぐ力(生産性の向上やイノベーション)が追いついていないのです。

また、日本企業の利益は拡大していますが、これは国内の需要拡大によるものではなく、円安やコストカットに頼っている可能性も考えられます。

日本の製造業が円安で輸出が楽になっても、ITや新技術分野の遅れが目立つ、といった批判を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれません。

海外投資家から見ると、日本企業は「安売り」状態のままとも言えます。これは海外による日本企業の買収リスクが高いままであるだけでなく、グローバルでの日本企業の競争力の低下をも意味します。

私たちは、「見た目の利益」に騙されず、その企業が本当に新しい価値を生み出せているのか、その本質を見抜く目が必要です。

日本経済の示唆:成長エンジンの不在と不安定さ

こうした現象は、日本経済全体の課題を物語っています。

今の日本経済を人に例えるなら、

貧弱だったが、体重は増えたぜ!と喜んでいるものの、身体についているのは脂肪ばかりで、筋肉(実質的な経済力)は増えていない

状態に思えます。

筋トレが必要

物価変動を考慮した実質価値の伸び悩みは、国内の経済循環が弱いことを示しています。

日本株・時価総額が1,000兆円超えても、ドル建てで停滞するのは、世界から見た日本の資産価値が増えておらず、円安が時価総額を嵩上げしている面が大きいためです。

これは日本経済に力強い成長エンジンがなく、為替といった「外部要因」で振り回されてしまう不安定な状態にあることを示唆しています。

まとめ:名目成長の先を見据えよう

日本株・時価総額が1,000兆円を超えたものの、実質値やドル建て値では弱いのは、インフレや円安で日本株が「嵩上げ」された状態にあることを示しています。

日本企業の稼ぐ力が、見た目ほど強くないという現実において、予期せぬ経済ショックが、日本株高が砂上の楼閣だったことを明らかにするかもしれません。

私たちは、見た目だけに踊らされず、真の価値を見極める目を磨いていく必要があります。


最後までお読みいただき、ありがとうございました。

私のnoteでは、今後も、こうした経済の大きな潮流を読み解き、皆さんと共に未来を考えるヒントを提供していきたいと思います。

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また次のコラムでお会いしましょう。

村田雅志(むらた・まさし)


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