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【スタグフレーション警鐘】日本経済の低迷と円安継続のメカニズムとは

こんにちは、村田雅志です。

前回の記事

【利上げできない日銀】が招くリスク、スタグフレーション時代の「資産格差拡大」への備え
https://note.com/muratamasashi/n/na880c33b17f1

では数多くの方から「高評価」をいただきありがとうございました。大変励みになりました。

さて、前回の記事でスタグフレーションの兆候について触れましたが、そもそも

・なぜ日本経済は回復しにくいのか。
・なぜ円安がいつまでも続くのか。

という2つの疑問を抱く方も多いようです。

今後、日本がスタグフレーションに陥るのか否かを考える上では、この2つの疑問を整理することが必要のように思えます。


スタグフレーションの振り返り:現在の状況を簡単に

前回お伝えしたように、スタグフレーションは景気悪化とインフレの同時進行を指します。

日本の実質GDP成長率は、2025年第1四半期に前期比年率-0.2%とマイナスに転じました。一方、5月の消費者物価指数(CPI)は前年比3.5%の上昇。そして5月の実質賃金は前年比2.9%減と5ヶ月連続の減少です。

短期的かもしれませんが、今の日本はまさに景気悪化とインフレの同時進行、つまりスタグフレーションに陥っている、と言えなくもない状況です。

なぜ日本の景気は回復しにくいのか

おそらく多くの方は、日本の景気が「ずっと」回復していない、という感覚をお持ちになっているのではないでしょうか。たしかに外国に比べて日本の経済成長率は低いですし、賃金・給与が増えたという実感を持つ方も少ないようです。

日本で景気が力強く回復できていない理由は、循環要因(短期的な経済変動、例: 賃金や物価の上下動)と構造要因(長期的な経済基盤、例: 人口構造や政策の根本問題)という2つの要因が原因とされています。

循環要因:短期的な経済変動

循環要因とは、短期的な経済変動に関連する要因のことで、賃金、物価、外需などが挙げられます。

さきほど述べたように、賃金の上昇はインフレに追いつかず、実質的な購買力が低下し、消費が抑制されています。また物価の高止まりが家計負担を増大させ、内需の回復を妨げています。

さらに外需は、米中貿易摩擦やグローバル経済の減速により弱含み、輸出依存の日本経済に打撃を与えています。

構造要因:長期的な基盤

構造要因とは、長期的な基盤に関連する要因のことです。

経済の根本構造に起因する人口・政府債務・経済政策は、いずれも日本の景気回復を妨げています。

多くの方がご存じのように、日本では少子高齢化が進んでおり、労働力人口が増えにくく、人手不足が深刻化しています。人手不足は供給力の制約となり経済成長率を抑えます。

政府債務は拡大の一途で、財政の柔軟性が低下しています。金利上昇リスクが高まる中で債務負担が増大し、長期的な経済安定を脅かしています。

経済政策は、主に金融政策と財政政策に分かれます。金融政策を担う日本銀行は、トランプ関税などを理由に追加利上げに慎重でインフレを抑制できていません。

財政政策では、以前のような大規模な公共工事が見送られ、道路や水道といった社会インフラの老朽化が続いたままです。デジタル化や生産性向上の取り組みも進んでおらず経済の効率性が低下しているとの指摘もあります。

なぜ円安がいつまでも続くのか

日本のインフレ圧力を高める要因となっている円安はいつまでも続いています。円安が続く理由は、国内要因と国外要因に分けて考えることができます。

国内要因:低金利、財政赤字、貿易赤字

国内では日銀の低金利政策が続いている点が大きいでしょう。日本の政策金利は0.5%前後で据え置かれたままで、米国の政策金利(4.25~4.50%台)との差が縮まりません。日本と米国との金利差がこれだけ大きいと、円を売りドルを買う流れが止まらないのも不思議ではありません。一般にマネーは金利の高い国に流れるため、この金利差は円安の根強い要因となっています。

また財政赤字が縮小する気配も見られません。インフレの進展で2025年度の税収は見通しを上振れるとみられていますが、日本では与野党ともに税収の上振れ分を減税や給付金支給の財源とする姿勢が強く、これではいつまで経っても財政赤字は減りません。

貿易収支も赤字のままです。本来であれば円安によって貿易収支が黒字の方向に向かうはずですが、日本の生産拠点が海外に移転してしまったこともあって、円安になっても輸出額が増えにくくなっています。貿易赤字が続くことで円安も続くという図式は維持されています。

国外要因:金利差、不確実性、リスク選好

円安が続くのは国内要因だけでなく、国外要因にもあります。上記の金利差は、各国の金融政策の違いから生じています。米国はインフレ抑制のために政策金利を大幅に引き上げてきました。一方、日本は長らく低金利政策を維持しており、日米金利差が拡大してしまいました。今でこそ米国の利下げ期待が高まっているものの、利下げが大幅にならない限り、一定の金利差は残り続けます。

世界経済・地政学リスクの先行き不確実性も円安を促します。以前ですと、国際情勢の不確実性が高まると「安全資産」とされた円が買われる傾向がありましたが、近年はドルへの資金シフトが優勢となり、円は売られやすくなっています。

さらに、世界的に株式などリスク資産への投資が活発化すると、円などの低金利通貨は売られる傾向が強まります。

スタグフレーションの可能性

現在の日本経済は、スタグフレーションに陥るリスク要因と、それを抑制する要因が綱引きをしている状態と言えます。

スタグフレーションのリスクが指摘される主な理由は、以下の通りです。

コストプッシュ型インフレの長期化

コストプッシュ型インフレとは、原材料や輸入価格の高騰などの供給側コスト上昇が原因で起こる「悪いインフレ」のことです。需要の増加ではなく、企業の負担が増すため景気を悪化させやすいものとされています。

現在の物価上昇は、旺盛な需要が牽引する「良いインフレ」ではなく、円安による輸入物価の上昇や、ウクライナや中東情勢などを背景とした資源・穀物価格の高騰が主な要因です。これは企業のコストを圧迫し、製品やサービス価格に転嫁されることで、景気を冷え込ませる「悪いインフレ」につながる可能性があります。

実質賃金の低迷と個人消費の伸び悩み


春闘では高い賃上げ率が実現しましたが、それを上回るペースで物価が上昇しているため、賃金の購買力を示す実質賃金は依然としてマイナスのままです。これにより家計の負担が増し、日本経済の約6割を占める個人消費が伸び悩むことで、景気停滞を招く恐れがあります。

企業の収益圧迫


コスト上昇分を十分に価格転嫁できない企業は収益が悪化します。これは将来の設備投資や賃上げの原資を削ぐことになり、経済の活力を長期的に低下させる要因となり得ます。

スタグフレーションを止める要因

一方で、日本が本格的なスタグフレーションに陥る可能性は低いとする見方もあります。

安定した雇用環境


日本の失業率は歴史的に低い水準で推移しており、人手不足感は依然として強い状況です。雇用環境の安定は景気が急激に悪化する可能性を抑制する要因となります。

根強いデフレマインド


長年のデフレを経験した日本では、企業も消費者も価格や賃金の上昇に対して慎重な姿勢が根付いています。これにより欧米で見られるような賃金と物価が相互に急上昇し続ける「賃金・物価スパイラル」(賃金上昇が価格上昇を引き起こし、それがさらに賃金を押し上げる悪循環)は発生しにくいと考えられています。

政府・日本銀行の政策対応

政府による物価高対策や、日本銀行による金融政策の舵取りが、景気と物価のバランスを保つ方向に作用することへの期待もあります。

結論として、日本経済は「コストプッシュ型インフレ」と「実質賃金の低迷」というスタグフレーションの入り口に立たされているものの、本格的な景気後退と制御不能なインフレが併発する可能性は(現時点で)高いとは言えない状況です。今後の国際情勢、為替の動向、そして国内の賃金上昇の持続性が鍵を握ります。

(免責事項: 本コラムは一般的な情報提供を目的としており、投資助言ではありません。データは2025年7月時点のものです。)

村田雅志(むらた・まさし)


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