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発表”私の芥川賞”【芥川賞候補作全部読む】

第168回芥川龍之介賞の発表は1/19。

芥川賞はもっとも優れた純文学におくられるもっとも有名な文学賞(対象は主に新人〜新鋭作家)。その芥川賞の発表まであと1週間。小説ファン、純文学ファンにとって一番楽しい1週間です。

その候補作5冊を全部読んだので、今回の受賞作を予想していきます。
候補作から感じたことをベースにした超個人的な”私の芥川受賞”を紹介します。

第168回芥川賞受賞作(予想)
①安堂ホセ(28)「ジャクソンひとり」(文芸冬号)

このnoteでは、書評を中心に読書に関する記事を発信しています。ぐちゃぐちゃになった頭の中を読書で整理してみると、それだけで人生がラクになります。人生をラクにする1冊を紹介するnoteです。

①「ジャクソンひとり」(著:安堂ホセ)

読み終えた瞬間にこれで決まり。これが今回の芥川賞だと思いました。

ジャクソンは都内のジムで整体師をしている<アフリカのどこかの国と日本とのハーフ>のブラックミックスだ。

ココアを混ぜたような色の肌、パッチリした目、黒豹のような長い手脚。
「ゲイかもしれない」と噂されるブラックミックス。それがジャクソン。

ブラックミックスが日本でマイノリティというのはわかる。でもそれに対するマジョリティがなんであるのかがつかみにくく、それがとてもリアル。ジャクソン達の苦しみが丁寧に感覚としても描かれている分、「純ジャパ」という属性的なマジョリティの手応えのなさがリアルだ。

「マイノリティ対マジョリティ」というわかりやすい対立軸があるわけじゃなく、そこに人間がいる分だけのそれぞれの対立軸がある。それが場面場面で常に揺れ動き変化していく。

その対立軸の複雑さ、移り変わりをたくみに利用していくブラックミックスのジャクソンたちはとてもクールだ。

やりたいことがあるわけじゃなくて、やる気もあるわけじゃない。どうせわかりやすいことしかみんな理解しようとしないし、できない。現実はもうどうしようないクソなのかもしれない。

それでもその現実をそのままハックしていく。人生はゲームではないけどその中にゲームをつくりだしていくような感覚。

重いテーマを扱いながらも、クールさも感じる作品。このどうしようもない状況の中でも心地よさはつくれるかもしれないという気にさせる一冊。

(あらすじは次の記事を見てください♪)

その他の候補作に関しても書いていきます。

②「グレイスレス」(著:鈴木涼美)

今後も何度も読みたくなるのはこの1冊。

主人公はアダルトビデオ業界で化粧師として一時間経たずに崩れ落ちるメイクを若い女優に施していく。崩れれば崩れるほどカメラを回す者は喜び、ビデオ、女優は売れていく。その女優の顔をもっとも近くで見守る存在だ。

「たまにはデートくらいしてくればいいのに」と、
都心から車で1時間半もかかる森の中にある建築家につくらせた西洋建築の家で一緒に住む祖母から、

「同じ場所にいるとその狭い世界が唯一だと思うようになる」と、
英国で数人の恋人と目眩く恋愛を楽しんだ後、スコットランドで別れた父を恋人にしている母から、愛情なのかなんなのかよくわからない言葉を貰う。

ひとりの女性として、自分の人生を楽しんでいる血が繋がった肉親と、
男の欲望を満たすことで成立している世界で生きるAV女優たちとの間で、
特に反発することもなく肯定することもなく、ただただそこにいる。

やりたいことも、なりたいものも特にない。
だから白と黒の両極の間で、グレーな心地よさを感じられる。

でもいつか終わりがくる。
それだからかこのグレーな感覚がより贅沢に感じるのかもしれない。

それを味わいたくて何度も何度も読みたくなるような1冊。

(あらすじは次の記事を見てください♪)

③「開墾地」(著:グレゴリー・ケズナジャット)

溢れんばかりの情報が頭の中を駆け巡る今の時代の、心地いい静寂を感じる1冊。

母語から抜け出したい。
それは故郷、母から抜け出したいことなのか?

ラッセルは留学先の日本から故郷のアメリカ南部サウスカロライナに一時帰国で戻った。来年の春には大学院を卒業する。日本に残るか?それとも米国に帰るか?それを選ぶことになる。

キリギリスの鳴き声で目が覚め実家にいることに気付く。いや、キリギリスじゃなくて"Katydid"だ。母は子供の頃にすでに出ていき血が繋がっていない父が一人でいる実家にいることに気付く。

父は留学で来たアメリカに定住したイラン人だ。その父と一緒に過ごす、10日間ほどの話。

物心がついたときから頭の中を駆け巡っている母語。それがいつしか頭の中をジャックしている。ノイズとなってストレスとなっている。

父はやはり完璧な英語の使い手ではない。父と地元の人間、例えばスーパーマーケットやホームセンターの店員とのやりとりから気づいていた。子供の頃から。

父が聴いているイランの音楽、イランの家族と電話をする時に話すペルシャ語はわからない。だからそれを心地よく感じるのかもしれない。

音のひとつひとつに意味を求めない。その心地よさを感じる一冊。

④「この世の喜びを」(著:井戸川射子)

子育てを終えた女性の「あなた」が主人公。

あなたは近所のショッピングモールで働いていて、そのフードコートに夜遅くまでへばりつくように座っている少女がいることに気づいていた。その少女と仲良くなるが、最後はなぜか口をきかなくなる。

コミュニケーションで大事なのは、自分の役割と自分が使うその場に応じたテクニカルタームを間違えないこと。暗黙の中で合意された"範囲”の中にいることだ。

それができていることが共感ということか? そこを越えてでもあなたは少女に伝えたいことがある。この世の喜びだ。

あまり読み慣れない難しい作品。でもとてもいい作品でした。

(あらすじは次の記事を見てください♪)

⑤「荒地の家族」(著:佐藤厚志)

震災から約10年が過ぎた。

祐治は被災地で変わらず植木職人と生きている。祐治の妻晴海は震災の2年後に病気でこの世を去り、再婚相手の知加子は赤子を流産で失うと一方的に祐治の元から去っていく。10年の間に二人の母を失った息子の啓太とのコミュニケーションの仕方も次第に失っていく。

祐治は「耐える人」だ。学校卒業に入社した会社では当たり前だった暴力にも耐え続け、独立した今も耐え続ける。

失ったものを耐えることで埋める。

祐治のような耐える人がいるから世の中が成り立っているのかもと思わさせてくれる作品でした。

(あらすじは次の記事を見てください♪)

今っぽさ = 心地よさとしました。
その今っぽい心地よさを感じたのは、「ジャクソンひとり」、「グレイスレス」と「開墾地」の3冊。

特に「ジャクソンひとり」はジャパニーズヒップホップってこれじゃないのか?そんな息吹を感じた。オススメです。

とはいえ本番の芥川賞発表は1/19。残りも楽しんでいきます♪

*プロフィール記事


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