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早大・遠藤典子教授、帝京大・辻広雅文教授は疑惑にどう答えたのか? 帝京大学は「調査の必要性なし」と判断したのか?


研究不正疑惑と大学への告発


大学教授の実名を挙げ、「研究活動上の不正行為」があったのではないかと「note」で指摘したが、その後の経緯については報告していなかった。問題を指摘した記事のタイトルは以下の2本で、クリックして目次だけでも見てほしい。(敬称略)

「社外取締役の女王」早大・遠藤典子教授と、夫の帝京大・辻広雅文教授を生み出した  ダイヤモンド社の奇怪な無軌道経営

文春が「美魔女」と呼んだ「社外取締役の女王」 早大・遠藤典子教授のウソを暴く! 彼女が「怪文書」と誹謗した「意見・要望書」を一挙公開

後者の記事では、関係者に疑惑を指摘する文書や「週刊文春」の記事を2026年2月に送付したことを書いた。その後、いくつかの動きがあったため、現時点での反応を報告したい。

「研究活動上の不正行為」に関わっていたのでは、と指摘した大学教授は2人。早稲田大学研究院の遠藤典子教授(元・週刊ダイヤモンド副編集長)と、帝京大学の辻広雅文教授(元・週刊ダイヤモンド編集長、ダイヤモンド社取締役)で、2人は夫婦という関係である。

「研究活動上の不正行為」には、盗用、捏造ねつぞう、改ざん、不適切なオーサーシップ(著者資格のない人を著者に入れる、逆に貢献した人を外すこと)、研究費の不正使用、二重投稿(同じ内容の論文を複数の雑誌に投稿すること)、利益相反(私的利益と公的立場が衝突する状態)の隠蔽いんぺいも含まれる。

大学や研究機関では、企業から資金提供を受けた研究者が、その企業に関する研究成果を発表する際、利益相反を申告する必要がある。第三者が研究の公正性を判断できるようにするためである。

このうち、不適切なオーサーシップの1つである「ゴースト・オーサーシップ」(著者として記載されるべき人物を著者に含めない行為)に該当するのではないかとの疑義を訴えた。

辻広雅文教授への接触と拒否回答

文書と「週刊文春」の記事を送付した相手は、遠藤氏が博士論文を提出した京都大学大学院、教授として勤務した慶応義塾大学、現在所属する早稲田大学研究院である。さらに、辻広氏が教授を務める帝京大学。これらの大学の総長や学長、コンプライアンス関連部署の責任者にも送付した。

さらに、遠藤氏が社外取締役を務めるNTT、阪急阪神ホールディングス、アインホールディングス、VLCセキュリティ(旧・バルクホールディングス)、ジャパンエレベーターサービスホールディングスと、辻広氏が社外取締役になっている西武ホールディングスの経営トップやコンプライアンス関連部署の責任者である。

京都大学から「京都大学では、不適切なオーサーシップに係る告発については客観的証拠が示されているもののみを受付けることとしています」との回答を2026年3月に簡易書留で受け取り、その後、文書のやり取りを行ない、客観的証拠を提出するため、帝京大学の辻広雅文教授に連絡をした。

帝京大学とのメールの交換と、辻広教授に連絡した経緯は、以下の帝京大学の辻広教授と、帝京大学理事長・学長および副学長に宛てたメールに記しているので、経緯を追ってほしい。大学へのメールでは「辻広」を「辻廣」と表記し、引用部分が長いので、中見出しを入れている。

辻広教授、帝京大学理事長・学長、副学長へのメール

以下、引用。

                       2026年6月1日
辻広雅文様
cc
帝京大学 理事長・学長
冲永佳史様
帝京大学 副学長
冲永寛子様

いつも大変お世話になっております。

辻広さんから5月13日付で、以下のメールを受け取りました。

前原様
当方には、貴殿とお目にかかる理由も、ご質問にお答えする理由もないので、お断りします。
今後は大学へのご連絡はなさらないようにお願いします。
                             辻廣

メールを頂戴して3週間近く経ちましたが、帝京大学から何の連絡もないので、大学としても「問題なし」と判断されたのだと思い、筆を執りました。

今年(2026年)2月16日、京都大学総長の湊長博先生宛てに、京都大学大学院の院生であった遠藤典子さん(現在、早稲田大学研究院教授で、NTTなど5社の社外取締役)が大学院に提出した論文『原子力損害賠償制度の研究』に「不適切なオーサーシップ」、研究上の不正があったのではないか、と指摘する文書を送りました。

同年3月10日付で、京都大学学務部教務企画課(4月1日付で学務部学務課に名称変更)から「京都大学では、不適切なオーサーシップに係る告発については客観的証拠が示されているもののみを受付けることとしています」との回答を簡易書留で受け取りました。

そこで、3月16日付で、以下の文書と、岩波書店から遠藤さんが出版した書籍『原子力損害賠償制度の研究』の初稿ゲラの1~15ページ分のコピーを同封して、学務部教務企画課に簡易書留で送付しました。

客観的証拠を提出し、調査、確認を進める手立てについてもご提案したいと存じます。
 
客観的証拠は、岩波書店から出版された『原子力損害賠償制度の研究』の初稿です。初稿に書かれている筆跡は夫である辻広雅文氏(元・週刊ダイヤモンド編集長、ダイヤモンド社取締役、現・帝京大学教授、西武ホールディングス社外取締役)のもの。
 
遠藤典子氏と辻広雅文氏は一緒に取材に行き、校正を辻広氏が行なっており、事実確認もダイヤモンド社のデスクから辻広氏が取材先に電話してチェックしていました。また、取材のアポイントを辻広氏も行なっています。
 
取材に同行していた事実、辻広氏がダイヤモンド社の社内で校正していた事実、電話で確認していた事実を証言できる人物を知っています。
 
遠藤氏、辻広氏が一緒に取材にきたと証言している1人は○○○○
(氏名、会社名、会社の住所、電話番号を記載していますが、ここでは省略)
 
論文を審査する上で、多くの証言が必要な場合、ご連絡いただければ証言者を紹介いたします。
 
岩波書店の『原子力損害賠償制度の研究』と、京都大学に提出した論文『原子力損害賠償制度の研究』は同時期に取材、執筆し、岩波書店から出版した本のほうが先に完成しています。岩波書店の『原子力損害賠償制度の研究』に関して、辻広氏は共同研究者、共同執筆者と言える貢献をしています。
 
同書の「あとがき」に、滋賀大学学長の佐和隆光氏(当時。故人)、京都大学大学院教授の手塚哲央氏、東京大学公共政策大学院教授の藤原帰一氏の3人の大学教授の名前を出して、遠藤氏は謝意を述べていますが、「辻広雅文氏」の名前は出てきません。辻広雅文氏の存在を隠したかったのかもしれません。
 
遠藤典子氏は「校正をしてもらっただけ」と弁明するかもしれませんが、以下の点について調査、確認していただけないでしょうか。
 
送付した岩波書店の『原子力損害賠償制度の研究』の初稿が、本物かどうか岩波書店に確認してください。
岩波書店の『原子力損害賠償制度の研究』の編集者 ○○○(編集担当者の名前を記し、会社の住所、電話番号を記載していますが、ここでは省略)
 
岩波書店の『原子力損害賠償制度の研究』の初稿の筆跡が遠藤典子氏のものなのかどうか。
違うのなら、誰の筆跡か。
 
辻広雅文氏の書いたものを提出してもらい、筆跡鑑定を行なってください。
 
岩波書店の『原子力損害賠償制度の研究』と、京都大学大学院に提出した論文『原子力損害賠償制度の研究』の章立て、内容を比較してください。
 
岩波書店の本の初稿の修正が、実際の本の内容にどのように反映されているか、ご確認ください。
 
『原子力損害賠償制度の研究』の取材に当たって、辻広氏が同行したことがあるのかどうか。その際、辻広氏が取材相手に質問しなかったかどうか。取材先へのアポイントを辻広氏が行なったことがあるかどうか。
 
同著の校正時に、辻広氏が事実確認、追加の取材を行なったかどうか。
 
原稿段階で、辻広氏が加筆、執筆したかどうか。
 
文部科学省や京都大学が掲げる「不適切なオーサーシップ」「ゴースト・オーサーシップ」について知っていたかどうか。
 
共同執筆者として、辻広雅文氏の名前を入れなかったのはどういう理由からか。

遠藤典子氏の研究姿勢を高く評価

 
岩波書店から出版した『原子力損害賠償制度の研究』が大仏次郎論壇賞を受賞し、高い評価を受けていますが、そうした評価の中で以下のようなコメントがあります。
 
「政策担当者のヒアリングを始め、仕事と並行して学んでいた大学院の博士論文として、公共政策研究の手法で、2年半をかけてこの問題に迫った」(朝日新聞記者)
 
「ジャーナリストとして阪神大震災を経験し、その後東日本大震災を経て研究の道に入ったという、その飽くなき研究動機にまず感銘を受けた。未曾有の危機に学問に何ができるかという反語的問いが繰り返されるなか、現場に起きていることを解明するためにこそ追求すべき研究があること、そのように動機づけられた研究が象牙の塔のなかで高い評価を受けて学術的高みまで至ることができることを、博士論文をもとにかかれた本書はよく示している」(千葉大学教授・酒井啓子氏)
 
研究動機や研究姿勢が「感銘を受ける」ほど高く評価されていますが、果たして実態がどうであったのか、検証する必要があると思います。
 
岩波書店の書籍や京都大学大学院の論文を書くに当たって、フォルマ社に出向していた事実(実際は幽霊出向、偽装出向であった)を、京都大学としては「研究姿勢に問題はない」と考えているのでしょうか。
 
フォルマ社への出向は、労働を提供していないで、ダイヤモンド社から給与を詐取した違法行為であり、それを認めた鹿谷史明社長(当時)、辻広雅文取締役(当時)は背任行為を犯しています。コンプライアンス上、問題はないのか。
 
フォルマ社代表の○○○○氏は「遠藤氏は幽霊社員だった」「出向と言うことだったが、論文を書くための方便。利用されただけだった」と証言しており、「奇妙な出向」の実態について確認してください。
(フォルマ社の所在地、電話番号を記載していますが、ここでは省略)
 
フォルマ社への出向の半年後、遠藤氏は株式会社E4ストラテジーズを設立し、NTTから1000万円という巨額な報酬を受け取っています。2020年発売の週刊文春(1月23日号)で、「出向後はF社の就業規則に従い、F社社長了承のもとでE4社を設立しました」と遠藤氏は文書で答えていますが、この証言が事実かどうか、F社社長の○○○○氏に確認してください。
 
どのような情報、サービスを提供して、1000万円という巨額な報酬を受け取ったのか。その業務にコンプライアンス上、問題はなかったのか。
 
会社の設立は、本来、ダイヤモンド社に報告し、許可を得るべきであるのに、なぜしなかったのか。E4ストラテジーズを設立していた事実を、辻広氏は知っていたのかどうか、確認してください。
 
この問題が発覚した直後、辻広氏はダイヤモンド社を辞め、鹿谷史明社長は減俸処分となっています。E4ストラテジーズの設立やNTTからの巨額な報酬に問題がなかったなら、辻広氏が急きょ辞める必要はなかったし、鹿谷社長は減俸処分にならなかったのではないか。遠藤氏に見解を聞いてください。
 
『原子力損害賠償制度の研究』と京都大学大学院の論文の取材、執筆、校正、確認や、E4ストラテジーズの設立、NTTからの巨額な報酬、辻広氏がダイヤモンド社を辞めた事情について、辻広雅文氏にもヒアリングを行なってください。
 
遠藤氏の行為が、京都大学が掲げる「不適切なオーサーシップ」に該当するのかどうか、ご検討ください。そして、その結果を教えていただければ幸いです。
 
私は、京都大学で起きたセクハラ・性犯罪事件について興味を持ち、小野和子編著『京大・矢野事件  キャンパス・セクハラ裁判の問うたもの』や甲野乙子著『悔やむことも恥じることもなく  京大・矢野教授事件の告発』を読みましたが、京都大学の一部の教授、職員の方々は事実の解明に真剣に取り組み、問題の追及に力を尽くされました。
 
昨今、性加害問題、セクハラ問題が取り沙汰されていますが、京都大学では早い段階でこの問題に向き合い、当時、京大教授だった小野和子氏編・著の『京大・矢野事件』では、裁判の経緯や貴重な証言と資料が盛り込まれ、現在も参考になる著書です。
 
京都大学が「不適切なオーサーシップ」問題に真摯に対処し、自浄能力を発揮されることを期待しています。

京都大学と研究不正でやり取り

この文書に対し、京都大学からの回答は以下のようなものでした(3月25日付)。

貴殿方からの令和8年3月16日付文書を受信いたしました。
本学の博士学位授与に関わる学位論文における不適切なオーサーシップの表示の疑いに係る客観的証拠については、単に存在を示すだけではなく、貴殿方からご提出くださいますようお願いいたします。     以上                                                 

 そこで、以下の文書を3月31日にメールで送信しました。

「本学の博士学位授与に関わる学位論文における不適切なオーサーシップの表示の疑いに係る客観的証拠については、単に存在を示すだけではなく、貴殿方からご提出くださいますようお願いいたします」とありますが、以下のような文書類は「客観的証拠」と言えるでしょうか。
 遠藤典子氏の夫、辻広雅文氏(現・帝京大学教授、西武ホールディングス社外取締役)が書いた文書と直筆のサイン。
 文書の内容は、以下のようなものです。
・岩波書店から出版された『原子力損害賠償制度の研究』の初稿の1ページから15ページの文書は本物であり、書き込みの筆跡は辻広氏のものであること
・岩波書店の『原子力損害賠償制度の研究』と、京都大学大学院に提出した論文『原子力損害賠償制度の研究』に関する取材の依頼、取材の同行、取材、原稿の執筆、校正、内容確認の電話に辻広氏が関わったこと
 この他、「客観的証拠」として提出すべき書類があれば、ご教示ください。

これに対して、京都大学は4月3日付のメールで以下のように回答。

「遠藤典子氏の夫、辻広雅文氏(現・帝京大学教授、西武ホールディングス社外取締役)が書いた文書と直筆のサイン」が「客観的証拠」と言えるかとのお問い合わせにつきましては、直筆サインがなされた当該文書を拝見していないため、回答いたしかねます。 
また、「客観的証拠」として提出すべき書類に関するお問い合わせにつきましても、どのような書類を提出されるかは貴殿方においてご判断いただく必要がございますので、本学が回答できるものではございません。

こうした回答を得て、もっとも客観的証拠となるのが、私が京都大学に送付した岩波書店の初稿ゲラが本物であり、書籍の出版に辻広さんが関わったという辻広さん自身の証言であると考えました。そのため、辻広さんに直接会ってお話を聞くため、帝京大学に連絡した次第です。

お目にかかっていろいろ話を伺い、以下のような文書を辻広さんに作成していただき、京都大学に提出する予定でした。

               陳述書
                 作成日を記す   年  月  日
 私は、以下の事実について陳述する。
1、岩波書店から2013年9月に出版された遠藤典子氏の著書『原子力損害賠償制度の研究』の初稿のコピー、1ページから15ページの文書の内容は本物であり、書き込みの筆跡は私自身のものであること。 
2、岩波書店から出版された遠藤典子氏の著書『原子力損害賠償制度の研究』と、遠藤氏が京都大学大学院に提出した論文『原子力損害賠償制度の研究』に関する取材の依頼、取材の同行、取材、原稿の執筆、校正、内容の確認(取材先への電話など)に私も関わっていたこと。 
上記の通り、事実を陳述する。
(以下、自筆で文字を記す)
氏名(フルネーム)      押印 or 拇印
住所
生年月日(または年齢)

ところが、「当方には、貴殿とお目にかかる理由も、ご質問にお答えする理由もないので、お断りします」との回答でした。こうした対応では、遠藤さんの不正の疑惑は晴れません。上記のような陳述書の内容が事実に反すると言うのなら、その旨の文書を頂戴したいと存じます。

一般的に、疑惑に「答えられない」と言い続けたからといって、それで潔白が証明されたわけではありません。2020年の週刊文春(1月23日号)の特集「安倍官邸が指名 カジノ管理委員 遠藤典子氏に『夫婦で背任』告発 カジノ業者を審査・監督する『美魔女』に疑惑」で、辻広さんは週刊文春に以下のように文書で回答しています。

私は新たに学究生活に進むべく、一四年三月末にダイヤ社を円満退社致しました。ダイヤ社在籍時代のことにつきましては守秘義務がございますのでお答えしかねます。


文春は、辻広さんの回答を紹介した後、「“円満退社”を強調し、E4社(E4ストラテジーズ。遠藤さんがフォルマ社に出向中、設立した会社)が問題視されたことには守秘義務を盾に答えない」と記した後で、ダイヤモンド社社長の鹿谷史明氏が減俸処分になった事実を指摘し、「遠藤氏が設立したE4社に重大な問題があったことは明らかだ」と追及の手を緩めていません。

出版社内部で何が起きていたのか

だが、この「円満退社致しました」という発言や、遠藤さんの「苦しい釈明」だけが世の中に知れ渡り、遠藤さんや辻広さんの説明で、「2人に問題はない」という状況がまかり通っています。

帝京大学の理事長・学長や副学長は、円満退社なのに、なぜ社長の鹿谷氏が減俸処分になったのか、その理由を辻広さんに糾したのでしょうか。

この問題が噴出したのは2014年2月で、遠藤さんがダイヤモンド社を退職した2カ月後のこと。退職までの半年間、遠藤さんの出向問題や原稿チェック問題、副編集長への昇進問題が、ダイヤモンド社労働組合とダイヤモンド社経営陣の間で議論になっていました。

鹿谷史明社長は、遠藤さんの出向によって、ダイヤモンド社の利益は「1銭も毀損していない」と豪語していました。労働組合からの質問状への回答を、遠藤さんが退職した2013年12月末まで引き延ばして問題追及をかわし、退職がスムーズにいくようにするなど、姑息な手段を採っています。

遠藤さんが設立した株式会社、E4ストラテジーズの存在とNTTから1000万円の金銭を受け取った情報を入手した人物(ダイヤモンド社社員)と労働組合の委員長は、鹿谷社長をはじめ経営陣に「遠藤・辻広問題」について追及しました。

鹿谷社長は「会社が潰れるから」と泣きついて、情報をオープンにしないように要請。社員、組合員だけでなく、組合の執行委員(委員長、副委員長、書記長以外の執行委員)にも情報を伏せるよう働きかけ、隠蔽を図りました。

偽装出向で2年半に渡り、労働を提供していない遠藤さんに給与や社会保険料を支払い、その間、岩波書店から出版した書籍と京都大学大学院の博士論文を書いていた遠藤さんが「競業避止義務」に違反する会社を秘かに設立していた事実、NTTから1000万円の金銭を受け取っていた事実。

経済誌「週刊ダイヤモンド」を発行し、企業を批判することに遠慮容赦のないダイヤモンド社で起きたことで、こうした事実が公になれば、世間の大きな話題になることが予想されました。

私は、この問題に当初から関わっていて、「会社が潰れる」というのは脅しに過ぎず、経営者の保身のためであると主張し、問題を洗いざらい公表することを求めました。しかし、組合員の生活を守らないといけないと判断した組合委員長は、「一部の情報は伝えていいが、核心部分は極秘扱いにしてほしい」という経営側からの要望を聞き入れました。

結局、社員、組合員、役付ではない組合執行委員にも事実を隠したまま、現在に至っています。組合委員長は、遠藤さん、辻広さんの所業に涙を流して悔しがりました。辻広さんが主張する「円満退社」とは、あまりにもかけ離れた事態がダイヤモンド社の社内では起きていたのです。

辻広さんも、急きょ退社せざるを得なくなり、あたふたとしたのでしょう。会社の机の引き出しの奥の隙間には、出向中の遠藤さんと取材したと思われる領収書が挟まっていました。

また、遠藤さんの原稿に手を入れる行為や、内容の確認を会社のデスクから取材先に電話することが問題だという認識が、2人にはなかったのかもしれません。岩波書店から出版された遠藤さんの書籍の初稿ゲラが、無造作に残されていました。

管理職昇進問題など、歪められた人事

遠藤さんが週刊ダイヤモンドの記者であったとき、記者を評価する管理職会議で、私は、遠藤さんの原稿を、週刊ダイヤモンド編集長から販売部門の責任者に異動していた辻広さんが書き直していると指摘しました。

ダイヤモンド社では社員の査定は行なわれず、部署間、男女間、個人間の差別もなく、年齢で給与が決まっていました。しかし、経営陣は人事制度を変革して査定を導入し、給与と待遇に差を付け始めました。そうした最中、遠藤さんの原稿チェック問題があったので、人事の公平性、評価の透明性の観点から、問題を指摘しました。

社員への評価に差を付ける制度を導入し、評価によって給与、待遇が変わる「査定」する状況下、編集部の管理職(編集長と副編集長)の目が届かないところで、原稿を書き直す行為は公正な評価を歪めると主張しましたが、当時の編集長、湯谷昇羊さんは、他人に原稿を書き直してもらうなんてことは、記者のプライドからしてあり得ない、と問題にしませんでした。

遠藤さんの副編集長への昇進時にも問題が起きました。これまでの慣例とは異なる形(従来は、副編集長がそれぞれ副編集長に推したい候補者を提案し、各候補者の仕事の状況、適性、コミュニケーション力などをプレゼンテーションし、全員で議論し合って、副編集長に昇進させたい候補者を決めていました)で、湯谷さんが一方的に遠藤さんを副編集長に昇進させたいと発言したのです。このときも、私は、原稿の書き直しの件を含め、いくつかの問題点を指摘し、遠藤さんの昇進に反対しました。

反対を表明した副編集長は私を含め3人いましたが、新たな人事制度を4月から導入する直前の3月に、遠藤さんの副編集長昇進を決めてしまいました。新制度が導入されると、評価制度の累積点から、遠藤さんは昇進できなかったため、湯谷さんと、取締役であった辻広さん、鹿谷社長ら経営陣は強引に人事を進めました。

社長の人事にも口出しできる、ましてや管理職の人事も思い通りにできるという「いびつな構造」が、ダイヤモンド社の経営を支配していました。そのため、偽装出向、幽霊出向と呼ばれる人事も断行できるのです。私は、辻広さん、遠藤さん、湯谷さん、鹿谷さんの関係を「黒い糸で結ばれた関係」と理解しています。

遠藤さんや辻広さんにとって、一緒に取材に行き、共同作業で原稿を書くことが当たり前になっていたのだと思います。しかし、学問の世界では「論文における不適切なオーサーシップ」問題が厳然と存在します。共同作業で論文を書けば、共同執筆者にしなければいけません。重要な貢献をした人を著者から外す「ゴースト・オーサーシップ」は不正であり、不正は遠藤さんだけでなく、関わった辻広さんも「不適切」と判断されます。

辻広さんは、週刊文春の取材のときも対面での取材を受け入れず、今回も、会うこと、話すことを拒否しました。会うことによってボロが出ることを恐れているのでしょう。

遠藤さんが週刊ダイヤモンドの記者であり、週刊誌の管理職会議で原稿チェック問題を指摘した後、私は辻広さんと2人だけで会いました。原稿書き直し問題を追及したとき、辻広さんは「家に遠藤の原稿があって、たまたま見たことがあるかもしれない」と答えました。

複数の社員から、会社で原稿をチェックしているという証言を得ていましたが、「たまたま見た」と答えて、軽くあしらっておけばやり過ごせると考えたのかもしれません。

辻広さんはダイヤモンド社社員と業務中に同行して外出した際、遠藤さんの原稿に手を入れており、社員から「それはまずいんじゃないですか」と指摘されています。「たまたま」ではありません。会社のデスクやさまざまな場所で、堂々と原稿チェックしていたことを忘れたのでしょうか。

平気でウソを付く人が政策に関与したら

辻広さんに会った後、遠藤さんとも2人で話をし、原稿チェック問題について糾しました。遠藤さんは「私ら夫婦、仲が悪いので、そんなことするわけない」と自信たっぷりに答えていました。保身のため、自分の利益のために、平気でウソを付く人がいるのだと、しみじみ感じたものです。

小さなウソを付く辻広さんや、平気でウソを付く遠藤さんが、教育の現場で若い人々を指導している現実、社外取締役に就任して、会社の不正、コンプライアンス(法令遵守)、コーポレートガバナンス(企業統治)問題に関して発言していることに違和感を覚えます。

特に、遠藤さんは原子力、金融、防衛、半導体、宇宙などの政府の委員会のメンバーに就任しています。平気でウソを付く人が、国の政策を左右することに関わっている現実に危機感を持たざるを得ません。

巨大な権限を持つ「カジノ管理委員会」の委員に、安倍晋三内閣の官邸によって遠藤さんは指名されましたが、週刊文春の特集記事があったためか、短期間で辞めています。だが、その後も、数々の委員に就任しており、政治家や行政府の要人に、遠藤さんの言動は気に入られているようです。

国をよりよい方向に持って行くために、辻広さんには真実、事実を語っていただきたいと思います。帝京大学の理事長・学長、副学長を含めた席で、お話を伺えないでしょうか。

帝京大学内で協議して、再度の回答をお待ちしています。また、私の認識に、事実と相違する部分があればご指摘ください。

以上、引用。

帝京大学から連絡がなかったので、6月10日、以下のメールを広報担当者に送付した。                      

                       2026年6月10日
帝京大学 広報ご担当御中
6月1日に辻廣雅文教授に関するメールをお送りし、10日目を迎えました。
その後、連絡を頂戴していないのですが、現在、大学内で何か検討中ということなのでしょうか。検討中であれば、その旨、ご連絡いただければと存じます。
辻廣雅文氏のこれまでの行動に問題はない、帝京大学では「何ら問題なし」と判断し、関係者へのヒアリングなども必要がないとお考えならば、連絡いただかなくて結構です。
現状についてお聞かせいただければ幸いです。
お忙しいところ申し訳ありません。

メールを送信して1週間余り経ったが、現時点で大学から回答がないため、私は、帝京大学が調査の必要性を認めていない可能性があると受け止めている。ここで、帝京大学での研究上の不正や、広報活動に対する姿勢について、いくつかの事実を記しておきたい。

帝京大学は、過去10年間で「研究活動上の不正行為」(研究不正)を2件、公表しているが、大学として「不正の開示」に積極的ではない。

2018(平成30)年9月、帝京大学は、文学部教員(当時)の3本の論文について、「研究活動における特定不正行為」の「盗用」と認定した。盗用とは、他人の文章、考え、データなどを適切な引用表示をしないで、自分のものとして使う行為である。

研究不正をめぐる大学の姿勢

盗用した教員はすでに依願退職していたため、帝京大学は懲戒処分を行なわず、処分等の詳細を非公開とした。氏名だけでなく、教授なのか、准教授なのか、助教なのか、役職も公表していない。

盗用認定が1本の論文ではなく複数本に及ぶ場合、継続的な不正が疑われる。にもかかわらず、著者名、論文名、盗用内容が公開されなかったため、現在でも学術データベースや報道記事から問題の実態を検証、解明できない状況に陥っている。

「帝京大学教員の研究活動上の不正行為の認定について(概要)」

https://www.teikyo-u.ac.jp/application/files/3915/8753/4564/news_20180921.pdf

2件目の研究不正を公表したのは2023(令和5)年10月。帝京大学は理工学部教授が執筆した書籍での研究不正を明らかにした。2023年3月に発行した書籍の分担執筆部分で、他の文献を引用していながら適切に記載しておらず、引用の程度が著しく多く、盗用と認定すべきものと判断した。

対象となった書籍は共同執筆者がいるにもかかわらず、出版社によって絶版となり、在庫分も回収、廃棄されるという大きな騒動になった。

帝京大学では、この盗用の発生要因を分析し、再発防止策についても以下のように言及している。

学内で教授という要職にあって学生の研究を指導する立場にありながら、書籍の執筆における基本的な確認手続きを怠り、研究倫理意識が希薄であった。原著論文等とは異なる「教科書の執筆」というところで研究倫理意識が抜け落ちたが、不正の指摘を受けてすぐに自分の非を認めている。
今回の事案は学内で教授会等を通じて論文を執筆する学生を含めた全員に周知し、同様の不正が起こらないように徹底する。また、本学では研究不正防止に関して独自教材による学内研修を毎年実施し全教員が受講しているが、当該研修の内容に本事案の内容を盛り込んで注意喚起する。

企業、大学、官公庁などの組織は、社員や職員など、所属している者が規則違反や不正行為を行なった場合に、懲戒ちょうかい処分を行なう。

処分の内容は組織によって異なるが、軽い順に、戒告かいこく(注意、警告する処分)、譴責けんせき(文書や口頭で注意して反省を促し、場合によっては始末書の提出を求める)、減給(一定期間、給与を減額する)、出勤停止(一定期間の就労を禁止する)、降格(役職や職位を下げる)、諭旨ゆし退職(自主退職を勧告する)、懲戒解雇(最も重い処分で、解雇する)となっている。

ちなみにダイヤモンド社では戒告は懲戒処分に入っておらず、最も軽いのが譴責(けん責)である。

帝京大学は、理工学部教授に「けん責」処分を行なっているが、氏名、盗用箇所は公表せず、その後の教授の進退についても明らかにしていない。

「本学教員の研究不正行為に関する調査結果について」

https://www.teikyo-u.ac.jp/application/files/8116/9881/6295/news_20231030.pdf?utm_source=chatgpt.com

他の大学では、研究不正が行なわれた場合、氏名、役職名、論文名などを公表するケースが多い。文部科学省の「研究活動における不正行為への対応等に関するガイドライン」に基づき、大学には研究の信頼性を回復する責任があり、盗用、捏造、改ざんなどの不正が行なわれた研究成果が、そのまま世の中に「垂れ流し」状態となっては、社会に混乱を招くおそれがある。

不正の公表が重要とされる理由は、主に4つある。
1つは「研究成果の信頼性を回復するため」。不正論文が特定されなければ、他の研究者が引用したり、その説が世の中に拡散する可能性がある。そのため、誰の論文か、どの論文か、どの箇所か、どのデータが問題かを明らかにする必要がある。

2点目は「研究者、学界、学術界全体への警告、不正の抑止効果」。不正が発覚しても公にならず、隠されるのであれば抑止力にならない。氏名、不正行為の公表は研究倫理の遵守を促す効果がある。

3つ目は「内部告発者保護と透明性」。不正があったことを公表しない、あるいは不正の内容が分からないようにした場合、内部告発者をあぶり出し、不利益を与えるといった「犯人捜し」を行なう行為を抑止できない。問題を犯した人物の周囲の者が異動になったり、不利益を被った場合、あの研究不正に関係する動きではないか、と想像できるが、問題を起こした人物が明らかでなければ、そうした類推ができない。

調査の過程や結論を公開することで、問題を闇にほうむることができなくなる。また「大学の名誉のために隠蔽したのでは」「大学が身内をかばったのではないか」といった疑念を持たれない効果もある。

4つ目は「公的研究費や補助金などへの説明責任」。税金による研究費で大学の研究が行なわれることも多く、国公立、私立を問わず大学への助成に税金が使われている。研究費の助成を受けた研究で不正があった場合、社会に対する説明責任が生じ、研究助成金を返還する必要がある。不正の内容を明かさないで、研究助成金を返さないこともありうる。

研究上の不正は隠すのではなく、積極的に公表する責務があり、京都大学では、研究不正(盗用、捏造、改ざんなど)が認定された場合、原則として詳細に情報を公開している。

京都大学が公開する主な項目は、不正行為を行なった者の氏名、所属部局と役職名(教授、准教授、研究員など)、不正行為の内容(盗用、捏造、改ざんなど)、対象となった論文名、掲載された学術誌名、不正の具体的手法、不正が認定された記述・図表・データ、調査委員会の認定理由、再発防止策など。

京都大学の研究不正行為の情報開示に比べると、帝京大学はあまりにも消極的で、公表が重要とされる理由への理解度が低いように思われる。

大学ランキングと広報戦略

情報を公開するという点で、帝京大学はご都合主義的な対応をしていると感じさせる部分も見受けられる。自らの宣伝、高評価になるときはアピールするが、不都合な情報になると、明示しないといったケースだ。その1つの例として、大学の評価ランキングの実績開示が挙げられる。

世界の大学を総合的に評価する調査の中で、権威があるとされているのが「THE (Times Higher Education)世界大学ランキング」だ。イギリスの高等教育専門誌・評価機関である Times Higher Education(THE)が毎年発表する世界大学ランキングで、2026年版では、世界115の国と地域の2191大学がランキングの対象になっている。

2023年版までは13の指標であったが、2024年版以降、18の指標で教育環境、研究環境、研究の質、産学連携、国際性を評価してランク付けを行なっている。旧方式(2023年版まで)では、論文引用数の比重が非常に大きく、「研究力ランキング」という色彩が強かった。

帝京大学は、2018年9月発表の「THE世界大学ランキング2019年版」で、世界で401~500位になったこと、国内7位タイ、私立大学1位タイであったと発表。順位帯(401~500位)に多数の大学が存在するが、細かな順位は公表していないので、「タイ」という表記が使われる。

帝京大学が2018年9月27日に公表した公式資料

その後、帝京大学は順位を落とし、2025年10月9日に公表された「THE世界大学ランキング2026年版」について、以下のように広報している。

今回は115の国と地域から2191大学が掲載され、本学はランクインした国内大学115大学中、52位タイとなりました。

帝京大学が2025年10月14日に公表した公式資料

「私立1位タイ」になったときはPDFで公表し、私立2位タイ、私立5位タイであった「2022年版」までは公表しているが、「2023年版」で世界1201~1500位、それ以降は「1501+位」と順位は下がっており、国内での私立順位を掲載していない。

「2026年版」では「1501+位」に入っている私立大学が30校近くあるので、私立校順位は公表されていないが、「13~42位の範囲内」ということになる。私立1位タイからは、大きく後退している。

ここで、帝京大学の歴史と、帝京大学の経営の中枢にどのような人々がいるのか触れておこう。

帝京大学のルーツは、1931(昭和6)年に設立された帝京商業学校までさかのぼり、設立者は政治家で教育者の冲永荘兵衛おきなが しょうべえ。戦時中の1943年、帝京中学校(現在の帝京大学中学校・高等学校)を創設して、理事長・校長に就任し、幼稚園、高等学校、短期大学などを設立し、私立学校経営を推し進めた。「帝京」は、「みかどのいる都に存在する学校」という意味だという。

冲永家と帝京グループの構造

荘兵衛の長男、冲永荘一しょういちは東京大学医学部を卒業し、33歳の1966(昭和41)年、帝京大学を創設し、初代学長になった。

創設者一族の冲永家が帝京グループの学校法人の要職に就いており、荘一の次男、1973年生まれの冲永佳史よしひとは20歳で学校法人冲永学園理事長となり、2002(平成14)年、28歳で学校法人帝京大学理事長、帝京大学(本部所在地は東京都板橋区)学長に就任。

佳史の妻、冲永寛子ひろこは東京大学医学部を卒業し、医師、大学教授となり、帝京大学副学長、学校法人帝京大学常務理事、帝京平成大学(東京都豊島区)学長、帝京短期大学(東京都渋谷区)理事長に就いている。

荘一の長男、冲永莊八しょうはちは、帝京科学大学(東京都足立区)学長、帝京学園短期大学(山梨県山梨市)理事長・学長に就き、莊八の妻の冲永隆子は、帝京科学大学副学長になっている。

荘一の妻で、佳史の母の冲永惠津子は、学校法人帝京安積学園(福島県郡山市にある帝京安積高等学校を運営)の理事長で、学校法人荘山学園(愛媛県松山市で幼保連携型認定こども園、三葉幼稚園を運営)の元理事長だ。冲永家の人々が帝京大学のグループの要職に就いていることが分かる。

一般的に、同族経営の企業や組織は権力の集中が起こり、独断専行といった運営になりがちだが、帝京大学では、「日本私立大学協会私立大学ガバナンス・コード<第2.0版>」や改正私立学校法に対応して、学校の運営体制を再構築している。

日本私立大学協会 私立大学ガバナンス・コード<第2.0版>

https://www.teikyo-u.ac.jp/application/files/9317/4288/0537/governancecode_01.pdf

大学でガバナンス(統治)問題が注目され、私立学校法の改正にまで発展したのは日本大学の騒動がきっかけだ。

日本大学では、医学部附属板橋病院の建替え工事や、大学の調達業務や各種サービスを提供する日大の子会社「日本大学事業部」、医学部関連取引などをめぐる不正事件で、田中英壽ひでとし理事長や井ノ口忠男理事の関与が指摘され、2021年に逮捕・起訴された。

田中理事長は「田中帝国」と呼ばれるほどの強大な権力を持ち、暴走を内部で止めることができなかった。日大の不祥事で問題視されたのは「理事長への権力集中」と「理事会や評議員会の形骸化、監視機能の欠如」であった。

日大に限らず、東京女子医科大学でも、理事長だった岩本絹子が不正支出問題を起こしており、私立学校の信頼回復が急務となった。文部科学省は、理事、評議員、監事、会計監査人の役割を明確にし、チェック機能が働く体制を目指して私立学校法の法改正を行ない、2025年4月に施行された。

法改正で大学のガバナンスにメス

理事会を牛耳る理事長が学校運営を思いのままにする組織統治(ガバナンス)体制から、理事会、評議員会(学校法人の経営を監督する機関)、監事、会計監査人(財務内容を外部から監査する専門家)が相互にチェックし、牽制する組織体に変えようという狙いがある。

法改正を受け、多くの私立学校が、理事会のメンバーと、評議員会のメンバーを兼務する体制を改め、「経営を監督する評議員会」に改革する動きが出てきた。

改正私立学校法では「理事選任機関を評議員会とする」「評議員の構成が特定関係者に偏らないようにする」「監事の独立性を強化する」ことが求められている。評議員会が理事を選任することになっており、評議員会のメンバーがどういう経歴の人物なのかが重要になってくる。

帝京大学では、冲永家による長期的な学校法人支配、理事長や学長などへの権限の集中、ガバナンスの実効性などについて、一部で問題視する見方もある。帝京大学が巨大な権力と金力を持つ、あまりにも大きな存在のためだ。

東洋経済新報社の情報サイト「東洋経済オンライン」は大学のランキングを発表しているが、学校法人(主に私立大学法人)の総資産ランキングを2026年5月に発表した。2024年度(2025年3月期)の総資産は以下のようになっている。

1位  日本大学  7855億円
2位  帝京大学  6718億円
3位  慶應義塾  5132億円

〈大学ランキング〉「総資産が多い私立大学」トップ200、最新集計2024年度のトップは日本大学、2位帝京大学https://toyokeizai.net/articles/-/943759

次いで「東洋経済オンライン」は大学の金融資産のランキングを発表した。

1位  帝京大学  4416億円
2位  川崎学園  4242億円
3位  日本大学  3457億円
4位  慶應義塾  2228億円

金融資産の定義は「現金預金+特定資産+有価証券」
1位の帝京大学の数字は帝京短期大学を含んだもの。学校法人帝京科学大学の金融資産は415億円。
学校法人川崎学園は、岡山県倉敷市に本部を置く医療系総合学園で、川崎医科大学、川崎医療福祉大学、川崎医療短期大学、川崎医科大学附属高等学校、専門学校川崎リハビリテーション学院などを運営している。川崎医療短期大学は岡山市に本部があるが、他はいずれも倉敷市。

〈大学ランキング〉「金融資産が多い私立大学」200、2024年度トップは帝京大学で4416億円、利息等161億円・利回り3.7%

帝京大学の金融資産は学校法人ベースで私立大学トップ。長短借入金はゼロ、学校債の発行もない。無借金経営であるため、銀行からとやかく言われることもない。10年前の2016年3月期に対し、金融資産は1388億円増加し、総資産は984億円増えている。

私立トップの帝京大学のガバナンスに注目

企業であれば、銀行のチェック、株主のチェック、社外取締役を含めた取締役のチェック、労働組合や従業員のチェック、ユーザーや消費者のチェックなどの監視機能が働く。

とは言え、理想と現実はかけ離れており、企業の不祥事は絶えない。社外取締役も、名誉職、高額な収入が得られる「お得なポジション」というケースが多く、求められている機能を果たしていない。

学校経営の場合、評議員会のメンバーの過半数を確保すれば、経営トップへの厳しい監視機能は発揮されにくい。懇意にしている大学関係者や親戚を評議員にすれば安泰ということになる。

金融資産を増やし、順調な成長路線を続けている経営者に対して、回りが物申すことは難しそうだが、日本私立大学協会の「点検結果報告書」は帝京大学に対して、自主・自立性の確保、公共性・社会性の確保、安定性・継続性の確保、透明性・信頼性の確保で、いずれも遵守状況に○が並んでいる。

https://www.teikyo-u.ac.jp/application/files/9017/5625/3141/governancecode_02.pdf

帝京大学自身も、2024年6月に「帝京大学 運営指針 (帝京大学版 ガバナンス・コード) 【第1.1版】」を作成し、「第3章 業務運営におけるガバナンス(各業務分野のガバナンス強化と連携)」で「権限・役割の明確化」をし、「第4章 法人運営のチェック機能(有効性・効率性・コンプライアンス検証)」でチェック機能の充実を図っていく、と謳っている。

https://www.teikyo-u.ac.jp/application/files/7317/1740/0387/governancecode_01.pdf?utm_source=chatgpt.com

ただ、経営が好調であるが故に、好事魔多しという事態に陥ることもある。借入金を返済し、労働組合の力をぎ、経営者が株式の持ち分を増やして巨大な権力を握り、経営をほしいままにしている企業もある。

その典型が出版社のダイヤモンド社で、そこでルールを逸脱した行為をしていたのが辻広雅文氏であり、遠藤典子氏である。

帝京大学では、大学内の不正や理不尽な事柄に関して、理事、評議員、監事などが問題をズバズバと指摘する体制ができているのか。帝京大学では、自由闊達に議論する体制になっているのか。学生や父兄を含めた大学関係者、文部科学省、社会、メディアはじっくりウォッチする必要がある。

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