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何故和歌を題材に物語を書いているのか。

理由をうまくは説明できない。
いまだに自分でもよくわかっていない。

最初は詩吟だった。
リミックス素材として、百人一首に触れた。
「秋の田の」──それだけのことだったはずなのに、
なぜか、そこから離れられなくなった。

何が心に引っかかったのかは今もはっきりしない。
ただ、考えていると落ち着く。
あの短い詩の中に、人の生活とか、言えなかったこととか、
見えないまま残ってしまった気持ちが、静かに眠っている気がする。

私はもともと、刺激のある世界に惹かれていた。
サイバーパンク、激しい音楽、AI、加速する情報。
刺激があり続けることが当たり前の場所にいた。
よりによって、一番好きな作家はチャールズ・ブコウスキー…

だが和歌をの事を考えていると、
なぜか心がすっと軽くなる瞬間がある。
それが気持ちよくて、また考えて、また書いて、
気づいたら『和歌はまだ、泣いている』という連作小説を書いていた。

私は、自分の気持ちを説明するのが苦手だ。
特に、大事なことほど、
うまく言えなくなる。
で、言わないままになる。

何かが自分の中に引っかかったまま、
言葉にしきれないまま、
完全に流れないで蓄積されていく。

その心のわだかまりを和歌は、
洗い流してくれるような何かを持っている。

「なぜ書いているのか?」と聞かれたら、
たぶんこう答えると思う。

心が軽くなるような感じが、すごく気持ちいいから。

だから、
なんか疲れたなとか、
ひとりだなって感じるときがあったら、
『和歌はまだ、泣いている』を読んでみてほしい。

大きなことは言えないけど、
そこには、千年以上も前からの普遍的な気持ちが
そっと置いてある。


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