三題噺ショートショート_初優勝
落語家もすなる三題噺といふものを、コジも、してみむとてするなり。
企画もの、大の苦手なのである。
どんな親しい人の企画ものでも、なかなか素直には乗れない。
私は、「ルール」とか「決まり事」とか「期限」とか「締め切り」とかという制限事項が世の中で一番嫌いなのだ。
いくつになろうが、きかん坊の悪ガキ。それが、私、kojuroだからである。
え?落語?三題噺?ヤスさん?

心の中の、リトルkojuroが、ボソリと、呟いた。
コジ、別名、天の邪鬼四朗だろ。「もし書けなかったとしても、それはそれでOK。でも、やってみなきゃ、もったいない!」なんてこと言われたら、逆に書きたくなるんじゃないの?
なんのはなしですか。

わかったよ、書くよ。書く書く。書けば良いんでしょ、リトル。それで、気が済むのよね?
ブラックホールよりも重い重い腰を上げて、半ば自暴自棄に筆を執る。
さて。では、三題噺ショートショート「初優勝」まいりましょうか。

恭は、聞かん坊の悪ガキだった。
だが野球だけはピカイチで。最後の夏、決勝までコマを進めた。
前夜。
マネージャーの舞が大事にしている、シルバニアファミリーの「フレア・チョコレート」が盗まれたのだ。
部室のドアに脅迫状が貼り付けられた。
「勝つな」
舞は言い放った。
「勝つよ!」
結果は圧勝。全国制覇をも成し遂げた。
帰りのバスで、恭に舞が囁いた。
「六大学で優勝しよう。唯一、未経験の大学で」
恭は、小学生1年生から勉強をやり直した。来る日も来る日も、徐行運転だったが。
何度目の春だったろう。
舞に遅れて恭が入学。
だが勝てない。一歩も前進できない日々の繰り返し。
そして、最後の秋の最終戦。
同点の13回裏。フォークボールを、恭は掬い上げた。
レフトが追う、追う、追う。
フェンス際で少し屈んだように見えたが、見送った。
試合後、恭は言った。
「初優勝出来たのは、舞と公文式のお陰です」
破顔の舞の手には、戻ってきたフレアが、しっかりと握りしめられていた。

ヤスさんの三題噺企画の、そんなこんなを家内と語らおうとしてソファーに目をやると、家内が脚を指さしてニッコリと笑って言った。
そうなの?三題噺?落語の?ショートショートの?ヤスさんの?書いたの?また、下手くその?みんなに迷惑じゃん!じゃ、それにちなんで、マッサー(注1)三倍返しと参りましょうか。ぺぺペン、ペンッ!
……。
マッサージをすると、家内は上機嫌になる。
家内が上機嫌だと、我が家は平和である。
だから。
これで、いいのだ。

(注1)マッサーとは、マッサージのことである。家内のさっちゃんがそうやって、略して言うのである。さっちゃんへのマッサーは私の最重要の日課である。

