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今日のジャズ: 6月22日、1956年@ニュージャージーRVG “St. Thomas”by Sonny Rollins

June 22, 1956 “St. Thomas”
by Sonny Rollins, Tommy Flanagan, Doug Watkins & Max Roach at Van Gelder Studio in Hackensack for Prestige (Saxophone Colossus)

巨匠ソニーロリンズの名作は多数ですが、極め付けを一枚選ぶなら、名曲・名演奏・名録音盤でもあり、録音から65年以上経っても廃れることの無く聴き続けられている、取り上げるのも恐れ多いこの怪作かと思います。

卓越した何処に向かうか分からないスリリングなメロディーをアドリブで朗らかに唄いあげるロリンズを名伴奏者が脇を固め、名録音技術者のルディバンゲルダーが録音するという、外れようのない布陣です。

プレスティッジレーベルでのロリンズは、5月24日紹介曲から約一ヶ月後と短いインターバルでの録音です。両作共にゲルダーが手掛けていますが、前作のいわゆるブルーノート的な中音厚めのゴリゴリ系だけの音ではなく、こちらは音域レンジがより広く、特にサックスとドラムの解像度が高い、高音域のキレが際立つ録音となっています。この差は当時進化の著しい録音機器によるものか、探究心に溢れるゲルダーの手腕によるものなのでしょうか。

名人ドラマーのマックスローチによる踊りたくなるように楽しく弾む鮮明度の高いリズムを、どれだけ表現できるか、特に35秒で刻まれるシンバルの「チン、チーン」が如何に美しく飛沫を上げる金属音を表現するか、がオーディオ的には再生機器の実力判断の一つの基準になります。

ロリンズの天性のユーモアに追随するように随所に飛び出す、ローチによる演奏者と聴衆をくすぐるような祭囃子のような賑やかな太鼓、そのソロでも2:46からの「頑張って叩いてます」的なパフォーマンスを経ての3:02からスネアドラムのスネアワイヤーを外し、更にギアを入れて縦横無尽に叩きまくるような展開も計算したものかどうか分かりませんが、とにかく素晴らしい演奏です。

スネアドラムの底面にあるスネアワイヤ

素晴らしいこのドラムソロに感銘を受けたのか、ほぼコピーをしている演奏がありますので、併せて紹介しておきます。本作から約1年後、ベースの巨人チャールズミンガスのピアノトリオ作品におけるダニーリッチモンドの演奏です。以下音源の2:20過ぎからお楽しみください。ローチと共演歴のあるミンガスが、茶目っ気でリッチモンドに真似させたのでは、なんて想像が膨らみます。

西インド諸島のセントトーマス島にルーツを持つロリンズは、カリプソ音楽との組み合わせで、水を得た魚のようにユーモアに溢れるフレーズを織り交ぜた演奏を繰り広げています。そこに、ポリリズムを巧みに操るローチと端正なピアノのトミーフラナガンのリズム感が交わって、ダグワトキンスのほんの僅かに遅れる特徴のある後ノリベースが粘りのある微妙なテンポを生み出して味わいを付け加えているのかと思います。

ドラムソロの後のバンド全体の更なる疾走感がたまりません。4:42からのロリンズによる「テレラリラロ」の、これでもかの繰り返しも全く飽きる事がなく、その後のフラナガンのピアノソロでも引用され、メンバー全員がやり切った充実感のある幕切れです。何というドラマなのでしょうか。

約四年後の6月16日紹介曲とピアノとベースが同じなので、ピアノの伴奏やソロの間合いの取り方やベースの後ノリ感において共通項が見出せます。そこでは、玄人好みのドラマー、アートテイラーと本曲のマックスローチの比較が出来ますが、リズムの刻み方と遊びの入れ方がDNAの異なる部分で、心地とキレの良いユーモアな要素を含むマックスローチに対して、アートテイラーは実直で安定感があり太くて重い印象です。レーベルも録音エンジニアも6月16日紹介曲と同様ではありますが、スタジオが移設後で異なるため、同じテナーといえども音を拾うマイクから異なる空間を感じられるのが分かります。

アルバムジャケットは、トムハンナンという後にブックカバーデザイナーに転身するアーティストによるものです。プレスティッジの初期の作品を手掛けたうちの一つが本作と5月24日紹介作品です。

このハンナンの手掛けたマイルスの名盤もあります。

最後に、この時期(本作の9ヶ月後)の神がかっているロリンズの西海岸拠点コンテンポラリーレーベルでのトリオの名作もどうぞ。これもまた時を経ても、まるで廃れていない、録音品質も絶品の名盤です。

ロリンズの旋律のように遊び心に溢れる素敵な一日をお過ごしください。

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