【棒寒天作りを見に、長野の茅野へ行った話】

子供の頃
おばあちゃんが作ってくれた、みかんの缶詰の寒天が大好きでした。
みかんの缶詰を缶汁ごとバットで固めただけの寒天なのですが
切り分けてもらうのがうれしくてうれしくて
みかんがたくさん入っている所を選んだものでした。
そんなわけで
夏になると寒天が食べたくなります。
そんな寒天好きが高じて
棒寒天を作っている所を見に行ったことがあります
20年くらい前の事です。
その話を書かせてください
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寒天には棒寒天と粉寒天があります。
文字通り
棒状になった寒天と粉状の寒天です。
粉寒天と言うのは、工場で作られるのですが
棒寒天は、自然の力を借りて作られる乾物です。
私は、どちらも見に行ったことがあるのですが
今回は棒寒天の話です。
作り方を簡単に書くと
天草という海藻を大鍋でドロドロに煮溶かして
固めたものを棒状に切って
すのこのようなものに並べて干すんです。
広い広いところに
ずらりと寒天が並べられた光景は
今思い出しても圧巻でした。
でも、寒天作りは、ここから。
ただ干すのとは違うんです
夜の冷気でそれを凍らせて
そのまま置いておいて日中の温度で溶かし
溶けたときに水分が抜ける。
凍る→溶けるを何度も繰り返して
中の不純物を流れ出させ、
そうやって乾燥させて出来上がったのが棒寒天。
私が書くと
その大変さとすごさが伝わりにくいと思いますが
これ、自然が相手ですから
寒天が凍るほど夜に冷え込み
それが溶けるくらい日中の温度が上がり
また、雨が降らないで乾燥している気候が続く土地でないと作れないので
どこでも作れるというわけではなく
茅野というのは、寒天を作るのに選ばれた土地なのです。
更に!!
この寒天作りって
(行ってみて、初めて知ったことなんだけれど)
ただ、凍らせながら水分を抜けばいいってもんではないんです。
実は、夜中の冷気で凍る時に
棒状の寒天の向きを変えながら凍らせる必要があるんです。
なんでかってと言うと
ただ凍らせただけだと、寒天が曲がってしまうからなんです。
ほら、売っている棒寒天って真っすぐじゃないですか
あんな風に仕上げるためには
下になる面を夜中に動かして、まっすぐに整える必要がある。
そこが、なんと手作業なんです!!
夜中の3時ごろ
外気はマイナス20度くらいになる中で
一つ一つ手作業で回転させていく!?
まつ毛も、鼻水も、服も、長靴も凍るとおっしゃっていました
すごい世界です。
多少曲がっても、良いじゃないかと思うのですが
そこは、プロです。
すごいです。
ちなみに、干す前の寒天を
専用の道具で搗いて細く切ったのが
ところてん。
たしかに、ところてんは色も黒く
もう少し磯の香りがします。
そこで、出来立てのところてんもごちそうになりましたが
(自分で突いて食べられらるように
お店の前に、寒天を作道具が置いてあるんです)
現地で食べるところてんは
一味も、ふた味も違う
磯の香りがして、コシの強いものでした
実は、私が茅野を訪れたのは
空前の寒天ブームが来ていた時でした
(2005年ごろです)
テレビや雑誌で、寒天の健康効果が話題になっており
健康を気にする人、ダイエットをしている人たちの間で
ものすごいことになっていました
寒天って棒寒天と粉寒天があって
寒天がダイエットに効くのなら
棒寒天でも、粉寒天でも
どちらを食べても同じだろうと思うんだけれど
その時のブームは、なぜか棒寒天だったのです。
(発端は、煮溶かした棒寒天にトマトを入れて固めたトマト寒天が
ダイエットに効く…みたいな事だったと思います)
結果、スーパーの棚から棒寒天がなくなり
スーパーを買いたい人が世の中にあふれました。
けれど、棒寒天って
自然が相手のものですから
生産量に限界があるし(そもそも冬にしか作れないし)
買いたい人が殺到しても、物はありません。
結果、棒寒天の値段が高騰して、
とんでもないことになっていました。
でも、
これほどたくさんの人が棒寒天を欲しがった事なんて
これまでの歴史の中でなかったんじゃないかと思うので
寒天を作っておられる皆さんは
さぞやうれしい悲鳴を上げておられるのではないかと
その時の私は、浅はかにもそんな風に思っていたのです。
でも、寒天を作っている方に話を聞いた時
現実はその逆だという事を知るのです。
皆さん悲痛な顔をされていたのを、今でも覚えています。
棒寒天と言うのはものすごく売れることもないけれど
和菓子屋さんなどから一定の需要はあり
絶妙な均衡で成り立っている世界なのです。
爆発的に売れると(それも一時的な需要で)
その均衡はあっという間に崩れ
質の悪い寒天が大量に市場に流れ込みます。
一般の人たちは、それがいいものか悪いものかの区別がつかないので
多くの人は粗悪品を手にし
結果、寒天に対するイメージを悪くし
その悪いイメージが拡散されていきます
私がお会いした時は、寒天ブームの絶頂期だったにもかかわらず
寒天を作っている人たちは、すでにそれを予測されていました。
そして、数年後
その通りのことが起こりました
原料の天草の高騰
粗悪品によりイメージダウン。
まじめに、コツコツ、
マイナス20度の中で、黙々と寒天を作り続けていた人がいることは
ブームの中で誰にも気づかれないままです。
そして、そうやってまじめにコツコツやってきた人が
割を食う。
やりきれない気持ちです。
そんなわけで
寒天好きとして
寒天の美味しさともっと広めていけたらと思っているところです
でも、ここまで書いて何なんですが
棒寒天をもっと使いましょう、という話ではないのです。
実は、家庭で寒天を作る時
棒寒天もいいのですが
粉寒天の方が使いやすかったりします。
だから、粉でも、棒でも、それはお好みで
寒天そのものと仲良くなることが大事だと思ています。
繰り返しになりますが
棒寒天の需要が急に高まっても
それは、いいことではないと思うからです。
その上で
甘み屋さんや、和菓子屋さんで
寒天を食べるのもいいかと思っています。
昔ながらの甘味屋さんの
蜜豆や、豆かんを食べれば
本物の棒寒天のおいしさを味わえます。
ホントです。
洋菓子好きの人も
たまには和菓子を食べてみてはいかがでしょう?
ああ美味しいなと思う人が一人でも増えたら
寒天の良さが、広がっていきます。
そういうことで、
棒寒天を作っている人たちを応援できます!!。
そういう方法も
いいんじゃないかと思っているのです
ブームに踊らされてしまうと
悪気はなくても
そんなつもりはなくても
大事なものを壊してしまう事があります。
まじめに生きている人が苦しい目に合う事がない様に
知らず知らずのうちに、
そういうことをしないように暮らしたいなと思っています。
(粉寒天は、また製造方法が違い、
そちらも取材したことがあるので
その話は、また別の機会に)
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■ 「銀二貫」(高田郁著)寒天問屋の寒天の話
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★キウイ寒天


