”井の中の蛙”若き日の劣等感とその先にあった答え
「井の中の蛙 大海を知らず」
こんなことわざがある。
意味は——
“狭い世界しか知らないため、物事の本質や大局が見えなくなっている”ということ。
今日は、このことわざにまつわる、オレの若き日の話を一つ。
俺は昔から、ハマったら最後、とことんまでのめり込むタイプだった。
昼も夜も関係なく、熱中する。
そんな性格のせいか、学生時代に始めたアルバイトに、俺は見事にハマった。
アルバイトのくせに朝から晩まで働いてさ。
今の時代じゃ絶対NGな働き方だったけど……
とにかく楽しかった。
そのままそこに就職した。
大人になって、仕事も変わらず、業界も変わらず。
俺の社会人人生は、学生時代から今の仕事一本。
もちろん、そこに誇りはある。
ただその一方で、どこかに一抹の不安と、見えない劣等感があったのも事実だ。
立場が上がれば上がるほど、その劣等感は大きくなる。
社外の同年代や、もっと上の立場の連中はみんな、転職を重ねて経験値を積んでる。転職キャリアアップってやつ。
話題も広いし、引き出しも多い。
それに比べて、俺は一点集中。
掘ってきた分の深さはあるけど、どうしても“狭さ”を感じてた。
そんな折、会社で大きなプロジェクトが立ち上がった。
コンサルタントが外部から入ってくる一大プロジェクト。
俺はそのメンバーに選ばれた。
やってきたのは、初老の男性コンサル。
最初の数分話して、すぐにわかった。
「……頭、キレッキレやん……」って。
初顔合わせで、順番に自己紹介が回ってくる。
俺も名前や経歴をテンプレ通りに話して、最後にこう言った。
「俺はこの業界しか知らないんです。
外の世界のことを知らない。
正直、それがコンプレックスですし、
このメンバーに選ばれて不安しかない。
井の中の蛙ですよ、まさに」
するとそのコンサルが、穏やかに、こう返してきた。
「“井の中の蛙”の後ろに、下の句があるのをご存じですか?
井の中の蛙 大海を知らず——されど空の深さを知る。
つまり、外の世界を知らなくても、深く掘れば真理にたどり着ける。
そして、真理を知ることは、大海に出る一番の近道でもあるんです」
当時の俺には、正直ピンと来なかった。
でも、今ならわかる。
俺はこの井戸の中で、必死に努力して、がむしゃらにやってきた。
気づけば立場が上がり、自然と外の世界のすごいやつらと関わる機会も増えていった。
一つを極めることで、世界は自然と広がっていった。
井戸の底からでも、大海の一端には手が届く。
“深く掘る”ことは、実は“広げる”ための最短ルートかもしれない。
「一芸は万芸に通ず」っていう言葉があるけど、まさにそれだな。
キミもあれやこれやと焦るのもいい。
けど——
一つ、まずは極めてみて。
それが結果的に、一番遠くまで届く力になるかもしれないから。
