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貧乏、居間なし 第1話

【あらすじ】
過去に「劇団 貧乏、居間なし」の公演を観て感激した謙也は入団を申し込む。劇場から出禁になっ ていることを知ると、劇場探しを買って出る。野外公演から抜け出したい主宰のゴーン・翔真は、劇場を探せたら入団を許可すると約束する。実力を見るための演技テストで即興芝居をさせるが、謙也は 言葉が出てこない。とりあえず劇場探しをするために仮入団した謙也は200を超える劇場リストを渡され絶望していた。そんな時、翔真の部屋からの呻き声が聞こえる。 翔真は野外公演を見据えて台本を書き換えることに苦しんでいた。


「貧乏、居間なし」 第1話 

〇小劇場・裏口(夜)
   ハットを被った塀崇(28)とサングラスをした差押紗英(25)が
   人目を気にしながら出てくる。安心したのか、男は女の腰に手を回し
   歩き出す。
   そのカップルを遠くから一眼レフを覗くゴーン・翔真(28)。もう
   1人、カップルの背後を尾行する男の影。翔真がカップルに近づこう
   と勢いよく飛び出した瞬間、尾行男がカップルの前に、
尾行男「あの、」
   男が突然目の前に現れ驚く翔真。
翔真「うわーー!」
   尾行男、何が起きたか分からず驚く。シャッターの連写音。

○居間なしハウス・居間(夜)
   プロジェクターに映し出されているカップルの隠し撮り写真。
翔真「俺、カメラの腕上がってるよなぁ」
   プロジェクターを操作する翔真。
   紗英が翔真の隣に座る。
紗英「私のうっとりした表情、もっと大袈裟にしても良かったかな?」
   崇がハットをフックに掛け、座る。
崇「でも、やり過ぎも冷めるよな?」
翔真「親密さが写真で伝われば良いかな。ほら、表情は席によって見え方が 
 変わるし」
   次の写真に送ると、ひどく驚いた尾行男(21)の顔が映し出され
   る。翔真の前に正座している尾行男。横には野菜の入った段ボール
   箱。
翔真「(ため息)誰?」
尾行男「あ、はい、私は、、、(緊張)」
紗英「(翔真に)言い方。萎縮してるじゃない」
崇「うちの劇団に入りたいなんて、貴重な人材だぞ」
   自嘲気味に笑う紗英と崇。
尾行男「劇団 貧乏、居間なし。主宰のゴーン・翔真さんですよね?」
翔真「(悪い気はしない)いかにも」
   自分は?と言わんばかりに、顔を尾行男に近づける、紗英と崇。
尾行男「塀崇さんと差押紗英さん」
   崇と紗英、得意気にハイタッチ。
尾行男「『その絶望に羽はあるか』観ました!軽妙なセリフのやりとり。照
 明が変わると一瞬で違う時空に移り変わっちゃう爽快さ。そして何よりラ
 ストシーン」

○(回想)三年前 小劇場
   舞台に雨が降っている。翔真が舞台中央で熱を込めて叫ぶ。
翔真「もうダメだって時こそ希望を叫ぶんだ!その、言葉にした希望こそ
 が、何よりも先に未来に辿り着く」
   絶望感で倒れ込んでいた舞台上の役者たちが叫びながら立ち上がる。
   舞台は光に包まれていく。
              (回想終わり) 

○居間なしハウス・居間
   恍惚とした表情の尾行男。
崇「ずいぶん古いの観たね」
尾行男「演劇は配信でしか観ないんです。小劇場みたいな狭い空間は息が詰
 まると言いますか」
崇「(焦って)不意にディスるなよ。見過ごすとこだった」
紗英「ハッキリ言い過ぎて、逆に陰湿」
翔真「気にせず(尾行男に続きを促す)」
尾行男「まだ学生なので金銭的にも配信の方が良くて。でも最近は野外でば
 かり公演されてますよね?」
   顔を見合わす三人。
尾行男「でも新作を観たい!という気持ちはいつもあって。それで劇団員に
 なっちゃえば観られる!しかも間近で。と思って」
紗英「ケーキが好きだからケーキ屋さんになりたいみたいな感じ?」
崇「その頭悪い感じ、嫌だなぁ」
紗英「そう?素直で良いじゃない」
翔真「俺らは劇場で公演しないんじゃない。できないんだよ」
尾行男「どういうことですか?」
翔真「俺たち、東京中の小劇場から出禁くらってんだよ」
尾行男「全てですか?」
崇「やめときな、そんな劇団に入るの」
   理解が追いつかず頭を抱える尾行男。
   翔真、紗英、崇、話は終わり。と立ち上がる。
翔真「うちに入ったって誰も得しないんだよ。一応俺も劇団運営のこと考え
 てるし」
紗英「そうなの?」
翔真「そうだよ。お前ら食わせるためにって思ってるから」
崇「野外公演の劇団じゃ無理だろ」
紗英「いや、小劇場でも無理ゲー」
   三人、自嘲気味に笑うが、虚しくなり下を向く。
尾行男「あの、公演できる劇場を見つけられたら、貧乏、居間なしに入れてもらえますか?」
   驚いて尾行男を見る三人。
尾行男「見つかるか分からないですけど、やります。やってみたいです。やらせてください」
   翔真、紗英と崇の顔を見る。紗英と崇は首を横に振る。尾行男、段ボ
   ール箱から野菜を取り出し、見せる。
謙也「実家は八百屋です」
   紗英の表情が緩む。深く悩む翔真。
翔真「分かった。公演できる劇場を見つけられたら入団を許す」
紗英「野菜ゲット!」
崇「何でこんな、謎の三段活用使う奴を」
尾行男「ありがとうございます!」
翔真「団員ネームは、(思案し)五川井謙也」
   紗英と崇、顔を見合わせ驚いている。謙也、舞い上がっている様子。
崇「名前付ける必要ないだろ!」
翔真「でも俺らの劇団として交渉するんだし」
崇「そうだけど」
謙也「頑張ります!」
紗英「謙也は演技経験あるの?」
謙也「ないです。でも出来ると思います!」
崇「(自分に呟く)ちょくちょく癇に障るなぁ。
 (気持ちを抑え笑顔)元気があって宜しい!」
謙也「ありがとうございます!」
   崇、無理しているので顔が引き攣っている。
紗英「演技テストしようよ!」
翔真「いいね!」
   翔真は次回公演の設定が書かれたホワイトボードを持ってきて設定な
   どを書き加えている。
謙也「そういえば、さっきは何をしてたんですか?翔真さんがカメラ持って
 ましたけど」
崇「スキャンダルごっこだよ」
謙也「何かの稽古ですか?」
紗英「稽古。そうね!売れた時の稽古!」
翔真「痛い奴だと思われるからやめろ。次の公演でプロジェクターに投影す
 るための写真を撮ってたんだよ」
謙也「野外でですか?」
紗英「夜なら映るんじゃない?と思って」
謙也「映るんじゃない?ですか?」
翔真「謙也、エチュードって分かるか?」
   考えている謙也を翔真、紗英、崇が見る。緊張で顔が強張っていく。
謙也「商業施設の、、、」
翔真「辛いよ。無理してボケないで」
紗英「即興演技のことね」
崇「場所や設定を与えられて、セリフは役者のアドリブ」
紗英「エチュード大好き!」
翔真「俺らはエチュードでアイデアを広げて台本を作ることが多いんだ」
崇「謙也はまだ無理じゃないか?」
謙也「やります!やってみたいです!やらせてください!」
崇「やめろよ、その三段活用」
   ホワイトボードに書かれたタイトル
   『天国の犯罪』
   謙也がメモ帳とペンを取り出す。
翔真「舞台は、犯罪が横行する天国。死んだ人がまだ生きている人間を天国
 に連れて来る事件が多発している」
   謙也、一言一句漏らさまいと真剣。
翔真「で、天国の警察みたいな人がいて、謙也は警察所長の役やってみて」
謙也「僕が警察所長じゃ若くないですか?」
紗英「天国だと自分の好きな時の年齢でいられるとか」
翔真「いいね、それ! じゃあ、まずは手本として、紗英と崇で警察同士のや
 りとりやってみようか」
   紗英と崇、ホワイトボードを見て設定を頭に入れる。並んで立つ。
翔真「よーい、スタート」
紗英「天国憲法の抜け道を狙った犯罪ですからね」
   崇、紗英の肩に手を置き、先輩のように振る舞う。
崇「ま、どうやって取り締まればいいか考えてみて。研修の一環だと思って
 気を張らずにね」
   謙也、自然と二人の役割が決まったことに気づき、感嘆する。
紗英「最新のテクノロジーを使ってやってみますか?」
崇「テクノロジー?」
   紗英と崇のやりとりに、間ができる。
   謙也にも緊張感が走る。
紗英「(声や態度に貫禄を出して)そうか。君は警察になりたてだったわね」
崇「(紗英の意向を察して)まだまだ知らないことばかりで。天国にもテクノ
 ロジーがあるんですか?」
紗英「あるのよ、天国にもテクノロジー。天国ノロジーが」
   崇、続けようとするが吹き出す。
崇「何だよ、天国ノロジーって」
翔真「ギリ、上手くないな」
紗英「あれ?良いと思ったんだけどなぁ」
謙也「紗英さん、今思いついたんですか?」
紗英「エチュードだからね」
崇「そんな興奮することでもないだろ。天国ノロジーだぞ?」
謙也「崇さんも最初先輩っぽく話してたのに急に立場が変わって。すごいで
 す!」
崇「ま、エチュードだからな」
謙也「エチュードすげぇ!」
紗英「天国では自分の理想の姿でいられるから、若く見える方が実は年上っ
 ていうのも面白いよね」
翔真「確かに。じゃあ謙也もやってみるか?」
謙也「はい!」
翔真「相手の話を聞いて、ただ会話すればいいから、、、」
   興奮で翔真の言葉が届いていない謙也。
謙也「翔真さん、設定ください!」
翔真「じゃあ警察所長が犯罪者を諭すシーン」
謙也「はい!」
崇「俺、犯罪者役やるわ」
   向かいあって座る謙也と崇。
翔真「よーい、スタート」
崇「だって会いたいんだよ。俺たちはずっと一緒にいるって誓ったの」
謙也「(言葉が出てこない)」
   崇は呆れながらも続ける。
崇「あんただっているだろ、近くにいて欲しい人」
   とりあえず立ち上がってみる謙也。
謙也「あ、、、近くに、、、」
   見兼ねて紗英が入る。立ち尽くすしかない謙也。
紗英「崇のことは好き。大好き。ずっと一緒にいたかった。でも、それは死
 にたいってことじゃないの。私はまだやりたいことがたくさんあった」
崇「俺はどうなるんだよ」
紗英「知らないよ!私を置いて死んじゃったのは、崇じゃん」
   謙也、圧倒されている。
翔真「はいはいはい!いいね」
謙也「すみません。いきなり紗英さんが入ってきたから対応できなくて」
崇「最初から出来てねぇだろ。変な言い訳すんなよ」
紗英「崇!」
謙也「でも実際は台本があるんですもんね。だったら出来ると思います」
   翔真、謙也の目の前まで来て、
翔真「謙也、自分の出来ない所を認めないと、どこにも進めないぞ。変に格
 好つけてプライド守るより、自分の格好悪さを見つけていく方が、表現の
 世界では良いと思う」
謙也「はい」
翔真「ま、俺が出来てるかって言われたら自信ないけどな」
崇「俺もだ。落ちること言うなよ」
謙也「(紗英と崇に)すみませんでした」
紗英「かわいい!」

○同・二階廊下(夜)
   紗英に連れられ階段を上がる謙也。
紗英「(部屋を指さし)私はそこの部屋で隣が崇。そこが謙也の部屋ね。
 で、謙也の隣が翔真の部屋」
   崇が自分の部屋に行きがてら、
崇「耳栓買っといた方が良いぞ」
   と、部屋に入る。
謙也「え?」
紗英「適当にくつろいでね」
謙也「あの、紗英さんはお風呂どうされてるんですか?」
   崇が、部屋から出て来、買い物袋を持って通る。
紗英「何買ったの?」
   崇、買い物袋からピーラーを取り出す。
崇「じゃーん!」
紗英「好きだねぇ」
   崇、一階へ。紗英は自分の部屋に。
謙也「(崇に)手伝います!」

○同・キッチン(夜)
   謙也が包丁で大根の皮をむくのを、崇が感心しながら見ている。
謙也「大根の皮の近くって繊維質が多いから、厚めにむいた方が食感が良い
 んですよ」
崇「せっかくピーラー買ったのに」
謙也「あ、でも大根の皮とかサツマイモは厚めにむきますけど、そうじゃな
 い野菜も多いですし」
崇「良いよ、フォローしなくて」
謙也「包丁は危ないですしね」
崇「良いって」
   謙也、切った大根をフライパンに入れ、豚肉と炒める。
謙也「劇場出禁って何でなんですか?」
崇「謙也が観た『その絶望に羽はあるか』」
謙也「はい」
崇「ラストの翔真のセリフ」

○(回想)三年前 小劇場
   翔真が雨が降る中、叫んでいる。
崇の声「あの時、雨降ってただろ? あれ、劇場に内緒で降らせたんだよ」
              (回想終わり)

○居間なしハウス・キッチン(夜)
謙也「そんなことしていいんですか?」
崇「(ニッコリ)ダメだから出禁」
謙也「そっか」
崇「その劇場は潰れて、大炎上」
   呆然とする謙也。
崇「だから辞めても誰も文句言わないぞ」
謙也「(否定しようとする)」
崇「(フライパンを見て)あ、良い感じ。コチュジャン入れていい?」
謙也「あ、はい」

○同・食卓(夜)
   テーブルに台本を広げている翔真。紗英来て、台本を勝手にめくる。
   驚く翔真をよそに、
紗英「ここさぁ私もうちょっと出たいなぁ」
翔真「何で?」
紗英「何でとかじゃなくて出たいの」
翔真「我儘って知ってる?」
紗英「我儘なんて女優らしいじゃない」
翔真「イメージって大体間違えてるよな」
紗英「何それ」
翔真「何だろうね」
   料理を食卓へ運ぶ謙也。
紗英「豚バラ大根じゃん!」
翔真「謙也が作ったの?」
崇「(料理を運ぶ)謙也フィーチャリング崇で作りました」
   四人とも席に着く。
紗英「大根最高!便秘治るかな」
崇「ご飯食べるんだぞ」
紗英「食事と健康は切り離せないもん」
崇「健康の話にもTPOがあるんだよ」
翔真「そうなんだ」
崇「俺も今知ったよ」
謙也「エチュードすげぇ」
紗英「早く食べようよ」
四人「(手を合わせて)いただきます」
   紗英、真っ先に手を付ける。
紗英「あ、辛い!」
   謙也と崇を順番に見て、
紗英「崇!」
崇「辛い方が旨いじゃん」
紗英「私は苦手なの。知ってるでしょ」
   紗英、自分の分の豚バラ大根を小皿に取り、キッチンへ行き、洗う。
謙也「ちょっと!紗英さん?」
崇「酷すぎるだろ」
   翔真、気にせず食べている。
謙也「翔真さん、注意してください」
翔真「何で。俺、親でも何でもないから」
謙也「えーー」
   紗英、戻って豚バラ大根を食べる。
紗英「おいしいおいしい!水っぽいけど」
崇「味も食感も台無しだよ」
紗英「ギリ素材の旨みが残ってる」
   謙也、信じられない様子で呆然。

○同・謙也の部屋(翌朝)
   謙也が原幸太(50)と電話している。
原の声「住む場所決まったら連絡しろって言っただろ?」
謙也「まだ仮だから」
原の声「シェアハウスの人達は良い人なのか?変な犯罪流行ってるから気を付けろよ」
謙也「みんな野菜喜んでたよ」
原の声「今度送るから住所」
謙也「いいって。商店街も大変だろ?」
原の声「うちは大丈夫だよ。お得意さんもいるし」
   謙也、スマホを離し、
謙也「大丈夫な訳ないじゃん」

○カフェ
   紗英が二人掛けの席に座っている。
   館林陸(32)が歩きながら電話を切り、紗英の前に座る。
紗英「女の子じゃないでしょうね」
館林「妬いてるの?かわいいね」
紗英「もう!」
館林「そろそろ映画行こうか」
紗英「うん」
   紗英、館林の腕を掴む。館林に微笑むが、寂しげな表情を浮かべる。

○劇団 団の稽古場
   崇が御厨雄一(35)と対峙している。
御厨「塀さん、この場面では、塀さんは悔しいんだなって伝わらないと、こ
 の台本がり立たない。だから悔しそうな表情で、佇んでて欲しいんです。
 惨めな男なんです」
崇「ですよね。でも悔しさを表現するなら、」
御厨「演出家は私。『でも』は無し」
   御厨の後ろで他の演者達が座って見ている。
演者A「あの人、何で客演に選ばれたの?」
演者B「客呼べるんじゃね?」
演者A「(スマホを見せ)いやいやいやフォロワー百ちょいだぞ」
演者B「マジかよ」
   陰口を背にしながら座る崇。

○居間なしハウス・翔真の部屋
   翔真、パソコンに向かって台本を直している。書いては消し、書いて
   は消しを繰り返す。
   机の上には居間なしハウスで撮られた写真がある。そこには翔真、
   崇、紗英ともう一人、男性が写っている。

○居間なしハウス・居間(翌日)
   謙也、翔真、紗英、崇、発声練習を行なっている。上手く出来ない謙
   也に崇がニヤニヤ近づく。
崇「腹から声出してみ」
   謙也、試みるも要領を掴めない。笑っている翔真、紗英、崇。

×   ×   ×

   翔真が台本を持ち説明する。謙也と崇は紙で、紗英はタブレットで台
   本を読む。謙也、ペンを握りしめる。
翔真「天国の住人は、まだ生きてる人を天国に連れて来ちゃうんだけど、」
崇「誰々に呼ばれた。みたいなやつね」
謙也「なるほど(メモする)」
翔真「天国で犯罪を犯しちゃう訳だけど、よく天国来られたなと思われると
 気持ち離れちゃうじゃん?だから憎めない感じを出したいんだよ」
紗英「無邪気な感じでやってみる?」
翔真「その方向もアリ」
崇「序盤で掴みたいよな」
翔真「そう。天国で犯罪が起きてる所から物語を始めたいから、中盤までキ
 ャラクターで乗り切りたい」
崇「オッケー」
   謙也はメモするのに必死。
翔真「キャラクターの方向性を探ってみようか」
謙也「よっしゃー!」
翔真「謙也は劇場探しな」
謙也「いやー、今日は稽古させてください」
崇「まともに発声できなきゃ感情表現なんて無理だろ」
謙也「崇さんとそんなに違いありました?似たようなもんでしたよ」
翔真「似たようなもんは、違うってことだろ」
崇「似たようなもんでもないけどな」
紗英「似たようなもんが同じだったら、豚骨スープとポンコツスーツは同じ
 ってことになっちゃうじゃん」
   謙也に顔を寄せ、
紗英「ねぇ?」
謙也「はい?」
紗英「(次は翔真に)ねぇ?」
翔真「なっちゃわねぇよ」
崇「頼むから『似たようなもん』を否定してくれよ」
   翔真、謙也に七枚程ある劇場リストを渡す。
翔真「都内の劇場リストだ」
   謙也、受取りページをめくる。
謙也「こんなに」
翔真「二百以上はある」
謙也「そんなに?!」
翔真「頼む」
謙也「やってみますけど・・・」
翔真「(より真剣に)頼む」
謙也「(言葉の重みを感じ)はい」

○同・謙也の部屋
   リストの一番目の電話番号に掛けてみる謙也。
電話の声「はい、シアターミゼラブルです」
謙也「劇団 貧乏、居間ナシの五川井謙也と申しますけども、公演する劇場を
 探してまして」
電話の声「本気?貸す訳ないじゃん。無理無理。関東圏で貸してくれるとこないと思うよ。それじゃ」
   電話を切られる。
謙也「めちゃめちゃ嫌われてるな」
   途方に暮れて寝転がると、一階から稽古の声が薄く聞こえてくる。
   床に耳を当てる謙也。笑い声が聞こえる。そのままウトウトと寝てし
   まう。

×   ×   ×

   翔真がドアを開ける。
翔真「わっ!」
   慌てて起きる謙也。
翔真「寝てたのか」
謙也「少しだけ」
   急いで起き上がり劇場リストを探す。
翔真「演劇観に行くぞ」
謙也「演劇?はいっ」
             (第一話 終わり)



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