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『35歳にして初めての彼女と速攻結婚』/中年にもほどがある

もう十年近く前の話ですが、
婚活アプリというものがなかった時代に、出逢い系も婚活サイトにも登録せず、
運良く35歳で初めて彼女が出来たサブちゃん(仮)という後輩がいました。

ある日、仕事をしているとサブちゃんが僕のデスクまでやって来て、
「先輩、例の彼女と池袋で会うことになったんです。どうすればいいですか?」
と聞いてきました。

その彼女はサブちゃんの友人の知り合いで、「あけましておめでとう」と友人が一斉メールした中に知らないサブちゃんがいたので、いきなり「あなた誰ですか?」とメールをしてきたのでした。

そこからメールのやりとりが始まり、メールだけで付き合うことになりました。
彼女もカレシが欲しかったのでしょう。
同級生なので焦っていたはず。

その二人が今度初めて池袋で会うことになったのです。

そこでデートもしたことがないサブちゃんは、
「どうすればいいですか」と僕に聞いてきました。

「知らんがな」と言いたいところですが、35歳にして彼女がいなかったサブちゃんを多少不憫に思い、アドバイスしました。

「彼女は茨城から来るんでしょ?帰る電車は早いだろうから、それがなくなれば一泊するしかないよ」
「ど、どこに泊まるんですか?」
「サブちゃんと一緒にいるならカラオケボックスかラブホで朝まで過ごすんじゃないの?」
「ラ、ラ、ラ、ラブホですか?」

「LA・LA・LA LOVE SONG」みたいに言うなよ。
息が止まるくらいの甘い口づけをして来い。

そこでサブちゃんに「とりあえず池袋の西口に行けばラブホあるよ?」と言っておきました。

するとサブちゃんは、「池袋西口、池袋西口」と呪文のように唱えて自分の席に戻っていくのでした。

そして、月曜日。
サブちゃんがいちいち報告に来た。

「先輩、ラブホ行っちゃいました」
「甘栗剥いちゃいました」みたいに言うなよ。
初めてとは思えない行動力を発揮しているじゃないか。

サブちゃんはいちいちしたことを述べましたが、初めてなのにここでは書けないことをしとった。

そして、その日からサブちゃんは覚醒したのです。

彼女とは電車の中でガムを口移しで交換したり、
カラオケボックスでまさぐりあったり、
「別々の人生を歩むのは嫌!」ということで人生ゲームを一台の車で遊んだりと絶頂期を迎え、
二人は本当に結婚してもいいんじゃないかと思い始めました。

しかし、結婚を意識することは、理想的現実から現実的現実に目を向けること。

結婚の話を持ち出した途端、離婚したがっている彼女の母親がサブちゃん達と暮らすと言い出した。
さらに母方のお爺ちゃんとお婆さんももれなく付いてくる!
しかも彼女は結婚したら専業主婦になりたいらしい。

ついこの間までうぶな青年だったのに、いきなり扶養家族が4人!?
しかも婆ちゃんボケてるよ。

彼女が出来た頃は「夢のようです」と語っていたサブちゃんが夢の終わりに見た現実が、「扶養家族4人」。

サブちゃんは悩んだ。
結婚はしたい。
でもそんなに大勢の扶養家族はいらない。
俺の家は何かの施設かと。

サブちゃんは、祖父母や母親と住むとなると茨城に住んで茨城で働かなくてはいけないのかと考えました。

「先輩、彼女の家の周りには働くところは、工場しかないんですよね」と僕に話します。

彼女の家に行ったのか…。

「グーグルマップで見たんですけどね」

かなりの上から目線だな。

しかし考えていてもしょうがない。
その現実と向き合いに、サブちゃんは実際に茨城まで相手の家族と話し合いに行きました。

彼女の母親に挨拶し、本気で結婚したい意志を伝えようとしたところ、意外にも彼女のお母さんから出た言葉は、
「私達のことは気にしなくていいから」

これまでサブちゃんの肩に重くのしかかっていた現実は、その一言で消えたのでした。

そこからが早かった。
爺さん、婆さんが付いてこないと知った途端、サブちゃんは秒で婚約指輪を購入し、新居を探した。

そして、その翌年の初めて2人が会った日に二人は結婚したのでした。

▼次回のエッセイ  サメに闘う話

▼前回のエッセイ  元気なおじいちゃん催眠術師の話

*主に水曜、日曜に投稿中。
#創作大賞2025 #エッセイ部門
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