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『オンラインの絆』第3章・第4章 4/9

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第3章
 
 11月の終わりに先生が私に見せてくれたエッセイ、メッセージなどから、少しずつ先生が尚子に自分の事を話してくれている事は嬉しかった。先生の両親の仕事や、兄がいる事もその頃に知った。
 先生がもし高校の時のクラスメイトだったら、親しくなっていなかっただろう。性格が違いすぎる。ならばなぜ興味を引くのか。尚子はふと先生は人間なのかしらと思う事があった。アメリカと日本で離れている事もある。画面でしか知らないという経験がなかったというのもある。コロナ禍ではそれは当たり前になってきてはいた。一度、先生に言ったことがある。「先生は人間ではないのかと思う事があるんです。本当はAIで私の希望通りの先生になっているのではないかと。」先生は、「そうかもしれませんね。」とさらっとかわしただけだった。先生は、尚子の話や意見に共感してくれた。主婦になって、子供が出来て、仕事以外で、他人と世間の出来事や、世界のニュースについて、話し合うという機会は尚子にはほぼなかった。それが出来る事が、ただただ楽しかった。そして、それに真剣に耳を傾けてくれる人がいる。それが、日常を特別なものにした。
 12月18日、やっと帰国後レッスンが取れた。時差がないのは不思議な感覚だった。先生がアメリカにいる時はいつも相手側の時間で挨拶していた。朝6時に「グッドアフタヌーン」だった。
 先生の家にいる先生の表情は柔らかく、リラックスしているのを感じた。単身他国で暮らすというのは、精神的にきついものだろう。
 1月10日は成人式だ。先生は普段着のジャンパーに草履で参加するという。尚子は驚いた。それを聞いて、11月依頼のもやもやがまた尚子の心に現れた。他人だから何を来ていこうが自由だ。成人式にスーツで行かなくてはいけないと決まっているわけではない。しかし、成人式というのは20歳の若者のものだけじゃなく、親や周りの大人の物でもあると尚子は思った。佳奈恵も今年20歳で振袖を着て成人式に出る。親として、せったで行くより、やはりスーツで行って欲しい。身なりではなく、中身が大切というのももっともだが、TPOは礼儀やリスペクトでもある。尚子は悩んだ末、それを先生に伝える事にした。先生は、ちゃんと聞いて、それでも当日はジャンパーに草履で行った。先生の意志の強さに敬服する。そして、尚子にとって、先生は変わり者だというのが確定した日だった。
 日本からアメリカに帰る前に、先生のお母さんが泣いたと聞いた。尚子は思った。自分の子供がそうなっても、泣かないだろう。いい息子なんだろうと思う。
 
第4章
 
 リスニング力を上げるために、YouTubeでテッドトークを聞いて、正確に一字一句聞いていくというレッスンをした。使った教材は、リディア・マホヴァの新しい言語を秘訣だ。その時のレッスンが厳しかったのも心に残っている。聞き取れない箇所を何度も巻き戻して「なんすか?なんすか?」と先生は聞いてきた。
 その時に、先生は自分には彼女がいると言った。「彼女にも英語を教えているんです」と。尚子は、驚いた。アメリカと日本、遠距離恋愛も超がつく遠距離だ。
 2月の半ばに先生がnoteというプラットフォームでブログを書いていると教えてもらった。先生の記事は、12月にもらったエッセイと同様、難しい文章だった。尚子は先生に薦められて書き始めた。恥ずかしいと思ったが、ペンネームだったら、誰にも分からない。やってみると、楽しくて毎日投稿している。後にこのnoteをしていた事が近い将来大きな役割を果たす。
 先生がアメリカに再び行ってからも普段通りレッスンをした。ある日、なぜいつもより遅く、夜中の2時くらいまで、予約枠を開けているのか聞いたら、尚子と話したいからだと言われ、尚子は嬉しくなった。2月27日は、こんなメッセージを受け取っている。
「今日は日本語で久しぶりに書きますね。
今年になってから尚子さんにありがたいなあ、と思う事がよくあります。それは、もちろん予約してもらっているということだけでなく、尚子さんの率直な気持ちや僕のために何か考えてくださることがとても嬉しいです。何かあったわけでないのですが、ただ日頃の感謝を伝えさせてもらいました。ちなみにこれは昨日の『マジック』に基づいたものではなく、本当に普段から思っていることです。もしかしたら、無意識に影響されたのかもだけど、、よい一日をです!」
 先日のレッスンで、尚子は、ロンダ・バーンのベストセラー『マジック』について英語で話した。『マジック』は簡単に言うと、感謝の大切さを伝えた本で、28日間のワークになっている。毎日お題が与えられてそのお題に沿って感謝をする。まさに感謝行だ。尚子は2年前それをしたことで面白い体験をした。それを英語で話したのだった。
 日々のレッスンは、発音を教えてもらったり、ニュースの記事を読んだり、ディスカッションしたり、本当に多岐にわたった。それでも、日常の事を話すのが一番楽しかった。約1年間、少なくても3日に1回はレッスンをした。でも尚子からメッセージを送る事は一切ない、その方法がなかった。

https://note.com/namisasan/n/n71e841938fb4?sub_rt=share_pw

 
#創作大賞


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